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薄暗い鉄格子の中。
どう見ても人が生活するには不衛生な、犯罪者の牢屋みたいな場所の片隅。
多分だけど奴隷だろうなと思われる年端もいかない子供達が数人。
肩を寄せ合う者、涙を流す者、希望の見えない目をする者、息も絶え絶えに横になる者。
私が目を覚ましたのは、世界中の不幸が集まっているかの様なまさに地獄そのもの、そんな場所だった。
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自身が死んでからどれくらいの時が経っているのかはわからないが、私は昔『英雄』と呼ばれる人間だった。
世界に突然ダンジョンと呼ばれる建物が出現し、そこから未知の生物が次から次に湧き出て人を襲い始めた。
世界は混乱に陥り、人々は絶望した。
世界の崩壊が始まろうとした当にその時、人間の中に特殊な力を使う者達が現れた。
人々は未知の生物を『魔物』と呼び、魔物に対抗しうる特殊な力を使う者達を『魔術師』と呼んだ。
魔物と魔術師の第1次世界大戦勃発である。
私は当時、最強にして無敵の魔術師だった。
自己評価が高いのではなく、事実私は1度も負けた事はないのである。
ドラゴンなる魔物の単独討伐も果たし
数万に及ぶ魔物の軍勢も1人で殲滅し
ダンジョンなる建物をいくつも単独踏破し
そうして来る日も来る日も魔物を倒した私を人々は畏怖と尊敬と感謝の念を込めて『英雄』と呼んだ。
しかし人間は歳を取るもので。
齢50を過ぎた頃、世界は少しずつ平和を取り戻し始めた。
私は戦線離脱し弟子を取り後進の育成に力を注いだ。
結果そこそこ強い弟子達を育てる事ができ、その弟子達に世界に残ったダンジョンを各々任せた。
そうして人々に愛され惜しまれながら英雄こと私『アルフェード』は生涯を終えたのである。
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しかし何故だか成仏できず彷徨っていた魂は何の因果か、前世と同じ髪色を持つ今にも死にそうなこの幼女の中へと吸い込まれたのである。
いつかの物語で見た転生と言う名の憑依である。




