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ⅩⅢ〜thirteen〜 現代異能戦線の日常  作者: 神野あさぎ


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9/11

『A組・美形論争からの、再燃。』

 前回、A組では「誰が一番美形か」を巡って激論が交わされた。

 だが――学園の混沌はそれで終わらなかった。

 その数日後、放課後の男子だけの集まりで、再び論争の火種がくすぶり始めていた。


「ぶっちゃけどうなん、お前ら」


 風悪(ふうお)が机にもたれながら口を開いた。

 この一言が、全ての始まりだった。


「どうって……?」


 二階堂秋枷が首を傾げる。


「二階堂はさ、七乃と仲良いじゃん?」


 早速、話題が向けられる。


「な、七乃さんとはなんでもないよ!? いつもお世話にはなってるけど!」


 焦りながら手を振る二階堂。顔が少し赤い。


「そういう風悪君だって、黒八(くろや)さんと仲良いじゃん?」


 二階堂の反撃。


「仲良いだけでそんなんじゃない!」


 風悪も全力で否定した。


「それ言うなら、王位は妃と仲良いつーか」


 風悪の矛先は王位富に向かう。


「あれとは小学生の頃からの付き合いだからね。仲が良いというより、漫才コンビだよね。もはや」


 王位がさらりと返すと、全員が同時に思った。


(あ、うん、漫才コンビ)


 全員の心が一瞬で一致した。


「一番気になってるのは、夜騎士(よぎし)が誰をどう思ってるか……なんだけど」


 辻(せん)がぽつりと呟く。

 その瞬間、男子全員の視線が夜騎士凶に集中した。


「誰がどうとか思ってないけど……強いて言うなら四月(しづき)? 良いよなⅩⅢ(サーティーン)! オレもなりてぇ!」


 夜騎士は真顔で答える。

 純粋な憧れ。だが求められていた回答は、まったく別方向のものだった。


「凶、聞きたいのはそういうことじゃない。」

「やっぱ付き合ったら……あんなことやこんなことを!?」

「えっ……ちょ、おま……!」


 教室がカオスに包まれる。

 そこで、六澄(むすみ)わかしがぽつりと呟いた。


「身体の反応は正直でも、心がついていかない」


 意味深な一言。空気が変わる。

 全員の視線が、今度は六澄に集まった。


「どういうことだよ六澄!?」

「やったのか!? やったのか!?」

「相手は……五戸(いつと)!?」


 即座に飛び交う不穏な憶測。


「このしろじゃない。……てか、この話、聞いても面白くないぞ」


 六澄は無表情のままため息をついた。

 だが、全員の目は「聞きたい」で揃っていた。


 観念したように、六澄が語り出す。


「とある女──言葉を操り、人や物を思いのままに操る能力者が居た。そいつの言葉を防ぐ前に、能力で縛られた」


 男子たちの喉が鳴る。


「意識はある。だが身体は言うことを聞かない。その状態で……乗られた。それだけだ」


 六澄は淡々と語り終えた。


「待って、何それこわ」

「いつの話だよ」

「で、誰なんだよその女!」


 質問が殺到する中、六澄はぽつりと付け加えた。


「もっとも、奴の顔の好みは夜騎士凶だろうな」


「オレ!?」


 夜騎士が目を丸くする。

 その瞬間、男子全員が思った。


(結局、夜騎士凶かよ……)


 一方その頃別場所、女子側でも――同じような地獄が始まろうとしていた。


「七乃と三井野は分かりきってるからいいとして」


 五戸このしろが机を叩いて宣言する。

 その隣で三井野(さん)は顔を赤くしてうつむいた。


「ぶっちゃけどう思ってる!? 男子のこと、そして女子の誰が一番かを!」


 五戸が勢いよく指を差す。

 四月レンは「また始まった」とでも言いたげに、静かにため息をついた。


「ため息つくくらいなら言いなさいよ! 四月レン!」


 五戸の矛先が四月に向かう。


「興味ない」


 四月は即答した。

 本当に、興味がなかった。


「風悪君推しますよ」


 黒八空がにこやかに言えば、


「秋枷君です!」


 七乃朝夏が胸を張って主張する。


「そういう、このしろちゃんはどうなの? わかし君とよく居るじゃん」


 鳩絵かじかが純粋な疑問を投げかけた。


 一ノ瀬さわらは、静かに様子を見守っていた。


「えー、ないない。見た目は整ってる方だけど、中身が無理」


 五戸は容赦なく言い切る。


「女子はみんな、あたしの嫁。それでいいじゃん?」


 妃愛主が胸に手を当てて宣言した。


 女子一同、心の中で同じツッコミを入れる。

(嫁じゃない)


「妃は王位と夫婦漫才してな」

「なにをー!?」


 五戸と妃が取っ組み合いを始め、教室は再び大混乱。


 四月はため息をつき、

 黒八は笑いながら止めに入り、

 三井野は隅で小さく「平和だなぁ」と呟いた。


 こうして――

 A組の美形論争、第二ラウンドは、またもや収拾のつかないまま幕を下ろした。


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