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ⅩⅢ〜thirteen〜 現代異能戦線の日常  作者: 神野あさぎ


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5/11

『異能カンニング防止令』

 中間テストを控えた皐月のある日。

 切ノ札学園一年A組に、再び宮中潤の声が響いた。


「お前たち、テストで異能を使うのは禁止だ。

 ……そこで新たな取り組みを導入する。」


 教室の空気が一瞬で緊張に変わる。

 宮中(みやうち)は懐から、札のようなものを取り出した。


「これは“異能カンニング防止札”だ。

 異能を使ってカンニングをした者を自動で感知し、罰を与える」


 教師の真剣な声に、生徒たちはどよめいた。


「……罰って、どんな?」

 五戸(いつと)このしろが恐る恐る聞く。


「それは、実際にやってみれば分かる」


「いやいやいや! 試すなって!!」

 王位富が即座にツッコむが、

 宮中はすでに教室に札を配布し始めていた。


◆試験運用開始


 札は掌ほどの大きさで、中央に赤い文様が描かれている。

 受け取った生徒はそれぞれ机に貼りつけ、授業が始まった。


「よし、ではテスト本番を想定して授業を行う。

 札の効果は自動だ。私は見ているだけだ」


 宮中の言葉に、生徒たちは不安そうに視線を交わす。


「異能を使わなきゃ大丈夫……だよな?」

 風悪(ふうお)が呟く。


 だが、五戸が早速やらかした。


「黒板の文字、見えにくいな……ちょっと紐で──」


 パチン!


 札が青白く光り、煙を上げた。

 五戸の机が小さく爆発する。


「ぎゃあっ!? なにこれ!? 物理的!?」


「ほら見ろ、言わんこっちゃない」

 王位が冷静に突っ込むが、同時に別の方向でも異変が。


「ちょっと男子! 答え見せなさい!」

 妃愛主が男子に詰め寄る。

 札がピクリと反応し──


 バチィン!


 閃光。

 妃の髪が一瞬でボリュームアップした。

 まるで静電気の女王。


「な、なにこれ!? 女子にまで罰当てるとか不公平よ!!」


「いや、完全に自業自得だろ……」

 夜騎士(よぎし)凶が呆れる。


◆暴走開始


 突然、教室中の札が一斉に光り始めた。


「え、ちょ、待って、これ反応しすぎじゃ──」

 黒八(くろや)空の机の上で札が震え出す。


「わ、わたし何もしてないよ!?」

「もしかして、隣の風悪のせいじゃない?」

「いや、オレも何もして──!」


 ドゴォン!!


 教室の天井が吹き飛んだ。

 札が焼き切れ、煙が充満する。


「うわああああ!!」

「授業中に戦場作るなあ!!」

「先生止めてぇぇぇ!!」


 叫び声と爆音の中、宮中は冷静にメモを取っていた。


「なるほど……札は共鳴し合うと暴走するのか……ふむ」


「実験メモ取ってる場合じゃないでしょ!?!?」

 五戸が悲鳴を上げる。


◆授業終了後


 数分後、

 教室は黒煙と焦げた匂いに包まれていた。

 机は半分焦げ、札はすべて灰に変わっている。


「……異能カンニング防止札、改良が必要だな」

 宮中がメモを閉じる。


「先生、それ以前に……命の保証が必要です」

 王位が冷静に指摘する。


「これ、もう“罰”じゃなくて“攻撃”じゃね……?」

 風悪が煙の中でぼやいた。


 その隣で、

 四月(しづき)レンが焦げた札を指でつまみ、冷たく言った。


「テスト本番に使ったら、死人が出るな」


「……次は安全版を作る」

 宮中は真顔で頷いた。

 だが、生徒たちはもう誰も信じていなかった。


 こうして、「異能カンニング防止令」はわずか一日で廃止となった。

 学園の記録には、後日こう記されることになる。


 ――“異能より教師の方が危険”。


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