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ⅩⅢ〜thirteen〜 現代異能戦線の日常  作者: 神野あさぎ


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11/11

『教室でスイカ割り(季節関係ない)』

「突然だけどスイカ割りしよ!」


 昼休みの教室に、妃愛主の声が響き渡った。

 両手には大きなスイカ。

 その登場だけで、A組は一瞬でざわつく。


「なんでスイカ?」


 五戸(いつと)このしろが気だるげに問いかける。

 手にはスマホ。目は一ミリもスイカを見ていない。


「季節関係なく! やりたい時にやるんじゃーッ!」


 妃の声が教室中に轟いた。

 彼女のテンションは、もはや季節どころか理性も越えていた。


「異能でスイカ割り、楽しそう!」


 鳩絵かじかが、満面の笑みでスケッチブックを掲げる。

 すでに“スイカ割りの構図”を描き始めていた。


「でしょ、でしょ!」


 妃がにっこり笑う。

 こうして――季節も時期も無視した、異能スイカ割り大会が開催された。


 トップバッター、風悪(ふうお)

 手をかざした瞬間、強風が巻き起こる。


「風圧、行きます!」


 ドンッ!!


 スイカが、粉砕された。


「うわ! 飛び散った!」


「……オレも」


 続く辻颭も鎌鼬の爪で一閃。

 結果は同じ。風悪と並んで、床を掃除する羽目になった。


 次は夜騎士(よぎし)凶。

 影を伸ばし、黒い刃がスイカを正確に切り裂く。


「影斬・スイカ二つ割り」


 見事な切れ味。


 その隣で王位富も、淡々と光の剣を振るう。


「……形だけなら芸術だな」


 ぱっくり真っ二つ。

 二人とも余裕の表情。


「余裕じゃね?」

「流石にね」


 クールに決める二人を見て、妃は面白くなさそうに眉を寄せた。

 唇をわずかに歪め、笑みを消す。


「……おもしろくない」


 嫌な予感しかしなかった。


 一ノ瀬さわらの番。

 彼女は静かにスイカに手をかざす。

 菌糸が伸び、スイカをやさしく包み込んだ。


 ――数秒後。


 スイカの表面から白い胞子が吹き出し、うっすらキノコが生えていた。


「さわらちゃん!? もうそれ、キノコ栽培セットなのよ!!」


 五戸が突っ込み、教室中が笑いに包まれる。

 一ノ瀬は無言でスマホを掲げ、画面を見せた。


『自然は大事』


「いや、大事だけどね!?」


 再び五戸の突っ込みが響く。

 このテンポだけは異能級だった。


 その後もスイカ割りは続いた。

 黒八空は普通にでスイカを割ろうとして外し、

 三井野燦は歌でスイカを共鳴させ爆散させた。


 ……そして、事件は起こる。


「お前ら、何してる?」


 教室のドアが音を立てて開き、黒いマスクの教師・宮中(みやうち)潤が立っていた。

 床にはスイカの破片、壁には汁飛び、空気には胞子。

 完全に事件現場である。


「え、先生、これはその……理科の実験で!」


 妃が必死に言い訳をする。


「どこがだ」


 宮中の低い声が教室を凍らせた。


 こうして一年A組のスイカ割り大会は、

 “異能実験暴走事件”として正式に記録された。


 放課後、全員に与えられた罰は――教室掃除。


 飛び散ったスイカの跡を拭きながら、風悪が呟いた。


「……楽しかったけど、もうやめよう」


「えー、またやろうよ!」


 妃の明るい声が響く。


 季節外れのスイカの香りが、いつまでも教室に残っていた。


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