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ⅩⅢ〜thirteen〜 現代異能戦線の日常  作者: 神野あさぎ


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10/11

『A組男子、恋愛談義で炎上す』

 とある日の昼休み。

 切ノ札(きりのふだ)学園一年A組の教室には、いつも通りのざわめきが漂っていた。

 だが――その中心にいるのは、珍しく女子ではなく男子だった。


 風悪(ふうお)夜騎士(よぎし)、王位、二階堂、辻、そして六澄(むすみ)

 全員が妙に真剣な顔をして、机を囲んでいる。


「つまり、“好きって気持ち”の定義が問題なんだよ」


 風悪が腕を組んで語り出す。

 外の世界から来た人工妖精にとって、恋愛という概念は未知の領域。

 それを真面目に議論する彼の姿に、すでに嫌な予感しかしなかった。


「えーっと……ときめいたら好きなんじゃないの?」


 二階堂が素直に言う。


「いや違う。好きっていうのは――」

「“共に戦えるほど気合いが入る”ことだろ」


 夜騎士の妙に体育会系な意見が飛ぶ。

 顔は真剣そのものだった。


「凶、それ友情だろ」


 王位が即座に突っ込む。


 そんな中、六澄がぽつりと呟いた。


「感情の構造を考えるなら、好意と執着を切り離すべきだ」


「なんか、哲学講座始まったぞ……」


 辻が机に突っ伏しながら呟く。


「お前ら、何を真剣に話してる?」


 教室の後方から、黒いマスクの教師・宮中(みやうち)潤の声が響いた。

 全員がビクッと肩をすくめる。


「宮中先生、恋愛って謎ですよね」


 風悪が真面目な顔で切り出す。


「……真面目な顔は授業で見せろ」


 宮中は即答。だが、誰も引かない。


「先生は、結婚とかしてるんですか?」

「職務質問かお前は」


 夜騎士の不用意な一言に、宮中の眉がぴくりと動いた。


「ぶっちゃけ先生はどう思います? このクラスの……その……」


 二階堂が恐る恐る尋ねる。


「無粋だな」


 一同「終わった」と身構えた――が。


「師、一択!」


 宮中の声が教室に響いた。


「我々の頂点にして、我々を導く御方! あの方こそ……!」


 拳を握り、熱弁を振るう宮中。


「師って誰?」

四月(しづき)?」

「先生どうした?」


 一同、混乱の渦へ。


 その瞬間、教室のドアが開いた。

 入ってきたのは――四月レン。

 書類を手に、冷めた表情のまま立ち止まる。


「……何、お前ら」


「四月! お前はどう思う!?」


 風悪が勢いよく立ち上がる。


「“好き”って何だと思う?」


「……興味ない」


 四月は一言だけ放ち、机にプリントを置く。


「昼休み中にまとめて提出しとけ。あと、宮中」


「ん?」


「学校では、呼ぶなと言っただろうが」


 静かにそう言い残して、四月は出ていった。

 宮中は頭をかきながら、わずかに笑った。


「もう、いっそアンケート取るか?」


 二階堂が思いつきで言う。


「テーマ:“誰に告白されたら断れないか”!」

「やめとけ、火種だ」


 王位が即警告するも、時すでに遅し。

 紙が配られ、鉛筆が走る。


「書いたぞ!」

「オレも!」


 ……数分後。


「で、結果発表~~~!」


 夜騎士が紙束を掲げた瞬間、教室のドアがバンッと開いた。


「お前らぁぁぁぁぁ!!!」


 雷鳴が轟く。

 四月レン再登場。

 手には燃えかけのアンケート用紙。


「くだらないこと、やってんじゃない!」


「違うんだ四月! これは純粋な研究で――」

「黙れ風悪!」


 ドゴォォンッ!!!


 閃光が走り、男子全員の髪が一瞬で爆発した。

 教室は焦げた匂いで満たされる。


「宮中、事後処理」


 四月が淡々と書類を渡し、去っていく。


「……はぁ。まぁ、青春ってのは、いいもんだな」


 宮中は灰色の煙の中で、遠い目をした。


 その日の放課後。

 A組男子全員、反省文を提出。

 タイトルは統一されていた。


 ――『恋とは、命がけ』


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