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【完結】女伯爵のカレイな脱臭領地改革〜転生先で得たのは愛とスパダリ(嬢)!?  作者: 嵐華子@【稀代の悪女】複数重版&4巻販売中


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81.【最終話】カレイなる脱臭伯爵

「愛しの妻と寝室に籠もる生活も素敵ですわ」

「愛しの?

本当かな?」


 言い直す私に、ファビア様が僅かに苦笑する。

けれど……ファビア様の本心だろう。


 ファビア様には、未だにエンヤ嬢として、フローネだった私の死に対する負い目がある。

だからこそ心のどこかで、私が心からファビア様を愛する気持ちを疑っているのだ。


「ええ、愛しいですわ。

もしもファビア様が私を寝室に閉じ込めるなら、きっとファビア様の浮気を疑って、嫉妬に狂いそうなくらい。

だから寝室に籠もるのは御免でしてよ。

何より私、ファビア様といると、夫として頼られたくなりますのよ」

「夫として?」

「ええ。

きっとこれは、殿方であるマルク=コニーとして生まれ変わったからこそ、出てきた気持ちですわ」


 フローネだった私が、再び女性として生まれ変わっていたら、きっと守られたい気持ちの方が強かったかもしれない。


 もしくはファビア様と出会っていなければ、中身は女性のまま、誰も妻に迎えず生涯を終えた可能性すらある。


 そんな風に思いつつも、曲は終わりを迎えた。


 ファーストダンスを終えれば、違うパートナーと踊ってかまわない。


 今か今かと、ファビア様と私が離れるのを待つ殿方の姿を視界の端に捉えた。


 一部の淑女や貴婦人も、それとなくにじり寄ってきている。

さすが元男装の麗人。


 もちろん今日は、私の妻を誰かに渡すつもりはない。

ファビア様からも、私と同じ気持ちを感じるけれど、妻に誘わせるような不粋な夫になる気はない。


 軽く体を離し、そのまま細い両手を握って、膝立ちする。


「マルク?」

「私は何度でも、殿方としてファビア様にプロポーズしますわ。

マルク=コニーである私は、ファビア=グロールだからこそ、生涯を共に歩みたいんですの。

一緒に幸せになりましょう。

ファビア様に私への後ろめたい気持ちがあるなら、その分、私を幸せにして下さいまし。

私も、いつかファビア様が私への後ろめたさを手放せるよう、生涯かけて愛し抜きますわ。

もちろん私は妻であるファビア様を、誰にも渡したくありませんの。

私にも独占欲くらいありますのよ」


 最後は、他の殿方への牽制だ。


 周りがしんと静まり返り、私は少しずつ気恥ずかしさが増す。


 そんな中、ファビア様は無言で私の手を引いて、立ち上がらせた。


 と思ったら、飛びついてきましたわ!

もちろん受け止めましてよ!


「マルク、抱っこ!」

「へ?

え、えと、もちろんですわ!」


 鍛えた体は、ファビア様の体を軽々と抱き上げられますわ。


 言われた通りに、女性としては長身な方ながら、華奢でスレンダーなファビア様を横抱きにする。


 けれど戸惑ってしまう。

良いのだろうか?

一応、国王主催のパーティーで、隣国の特使も……。


「あら、残念。

次はマルクと踊りたかったのよ?」


 その時、王太子にエスコートされたスメルグ大公妃が、私の後ろから声をかけてきた。


「申し訳……」

「申し訳ありません、大公妃。

慣れない靴を履いたさいか、足を痛めてしまって。

婚姻後、初めて夫とダンスできた事が嬉しく、余韻に浸りながら夫に介抱されたいと望む、新妻の気持ち。

同じく夫を持つ大公妃ならば、新妻の夫に対する小さな我儘など、寛大な気持ちで受け止めて下さると信じております」


 私の謝罪を遮ったファビア様が、大公妃に答えてしまう。


 絶妙なお断り文句ですわ。

無礼と言えば、無礼。

けれどこう言われてしまえば、許すしかありませんもの。


「そうね。

公の場で新婚夫婦に水を差す方が、無粋ね。

コニー子爵。

息苦しくなったら、いつでもお相手するわ」


 息苦しく?

どういう意味かしらと、思わず首を捻る。


「あー、コニー子爵。

深く考えない方が良いだろう。

足を痛めた妻を気遣うのは、夫として当然の事。

まずは妻を介抱せよ」

「? ? ?

はい、ありがとうございます」


 王太子の発言の意図を全く掴めないながらも、指示された事をこれ幸いとして、ファビア様を抱えたまま、ドアに向かって歩く。


『はあ……包容力のある年上男性……』

『当然のように妻を気遣う夫……』

『『『萌えるわ……』』』


 年若そうな令嬢達の、微かな声が耳に届く。


 またヘリーかガルーダ侯爵夫人が、ヤベェ歌劇の台本でも書いたのだろう。

貴族社会の婚姻は、年上男性と年下女性の組み合わせが多いから。


「大公妃と言い、令嬢達と言い……マルクは無自覚な人誑しで困っちゃうね」

「え?」


 いつの間にか賑やかさが戻ってきたせいか、ファビア様の囁きが聞き取れなかった。


 聞き返しつつ会場を出て、案内役に声をかけてから、すぐ近くの控え室に向かう。


「何でもない。

ほら、早く控え室に入って」


 案内役がいなくなった途端、急かすファビア様が何だか幼く感じて、微笑ましくなる。


「ふふふ、うちの妻はせっかちです……」


 抱き抱えたまま、中に入った。


「んんっ!?」


 途端、ファビア様に口づけられる。


「ちょっ、んんっ、あ、ぶなっ、んっ」


 更に二度、三度と唇を重ねて、よろけてしまう。


 背中をドアにトンと突き、落としてしまう前にファビア様の体を立たせる。


「マルク、他の女に目を付けられちゃって」


 ファビア様は言うが早いか、私の胸元を掴んで引き寄せ、また唇を重ねてくる。


「んんっ、な、んっのこ、と、ふぅんっ」


 私はと言うと、頭は真っ白。

柔らかな感触に、腰が抜けてしまう。


 ファビア様と一緒に、ずるずると床に座り込んだ。

まだまだ、こういう攻めに慣れなくて、息が上がる。


 臭え息になってない事を祈るばかりだ。


 ファビア様は頬を上気させてはいるが、息は上がっていない。

手慣れている。


「ふふ、マルクは可愛いね。

生涯かけて、幸せにするよ。

だからマルクも、私を幸せにしてね」

「……はひぃ……はひぃ……も、もちろん……ですわ……」

「離さないし、離れないでね」

「は、はい、です……んん〜☆☆☆」


 息も絶え絶えな所で、更に口を塞がれ、目の前を星が散った後、気がついたら王都の別荘に戻っていた。

……解せない。


 王都から戻り、基本的には女神、時に鬼神が降臨する妻と暮らす内に、息子二人と娘一人が家族に加わった。


 家族が増え、バルハ領も豊かにしていく私。

お陰で十年後、再び昇爵した。


 もちろん生涯かけて、愛する妻に愛を証明していく日々。

とてもとても、幸せで充実した日々。


 そんな私は、いつしか人々から【カレイなる脱臭伯爵】と呼ばれるようになる。


 人々が何を掛けてカレイと称しているのかは、生涯、あえて聞かなかった。



――完結――

完結です!

当初はほぼギャグに走り、臭えオッサンが終始一貫して臭えと叫ぶだけの、恋愛詐欺作品モードをぶちかましていた本作。

予定より長くなりましたが、ここまで読んでいただき、本当に感謝しかありません!

ありがとうございました!

もしまだの方でよろしければ、ポイントを入れていただけますと、今後の励みになります!

よろしくお願いしますm(_ _)m

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