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【完結】女伯爵のカレイな脱臭領地改革〜転生先で得たのは愛とスパダリ(嬢)!?  作者: 嵐華子@【稀代の悪女】複数重版&4巻販売中


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77.二年と少しして

「聞きまして?

メルディ領主が、ご結婚されたお話」

「ええ!?

結婚の話、本当でしたの!?」

「ショックでしたわ!

私達のグロール伯爵様が!

それもお仕事が忙しくて、ひとまず入籍だけを急がれたとか」

「ねえ、貴女達はグロール伯爵の隣を射止めた()()()を、見まして!?

噂が一人歩きしているだけで結局、噂だった、なんて事ではなくって!?

どなたか、そうと仰って〜!」


 私がファビア様に結婚宣言をした日から、二年と少し経過した。


 王家主催の夜会に参加したものの、マルクとしては初めてだ。

それにフローネだった頃に浴びた冷たい視線を思い出して、緊張している。


 壁の花どころか、壁そのものになったかのように気配を消していれば、令嬢達の集団がファビア様の結婚について話し始めた。


 ドキドキしながら、つい耳を傾けていれば、集団から()()()という言葉が飛び出して、更に心臓が跳ねる。


 もちろん令嬢達は一斉に首を振る。


「もし噂通りなら、きっと奥様となられた夫人を、グロール伯爵が隠してらっしゃるのよ」

「「そんな!?」」

「私は噂でしかない方にかけますわ!

グロール伯爵は見目麗しいだけでなく、手掛ける事業は成功ばかりのやり手ですのよ!

グロール伯爵のハートを射止められる令嬢なんて、存在するはずありませんもの!」

「「「そうですわ!

グロール伯爵は未婚令嬢の希望よ!」」」


 令嬢達が凄い勘違いですわ。

むしろそんな令嬢がいたら、貴女方が潰しにかかりそうな勢いで怖いですわよ。


「そうそう、グロール伯爵と言えば、バルハ領の領主と懇意にして差し上げていると……」

「ああ、私も聞いた事があります。

貧乏領主で、国への納税も国王陛下の計らいで免税を受けていたらしいですわ。

バルハ領主……お名前は何て言ったかしら?

まあ、バルハ領主でよろしいわね。

ここ数年で、やっとバルハ領は盛り返してきたらしいですけれど、グロール伯爵がかなり援助したとか」


 ふぐっ。

本当のお話ながら、耳が痛いですわ。

でもファビア様に援助いただいたのは、特産品の取り引きに関わる事と、マナー講師の紹介ですのよ。


 今はマナー講師も教え子の紹介や、口コミを聞きつけての申し込み制になってますわ。


 特産品も、初めに手掛けていた品に関しては、どちらかと言えば原材料を卸す方へシフトして、その分、新たな特産品の生産に着手していますのよ。

もちろんファビア様が贔屓するような援助は受けてませんわ。


「まあ!

グロール伯爵は本当に、お優しいのね」

「バルハ領主はハゲ、んんっ。

薄毛でお腹が飛び出た、加齢臭が酷い中年男性らしいです。

きっとお優しいグロール伯爵が、気の毒に思われたのね」


 今、ハゲって言いましたわね。

グサッと言葉が突き刺さりましてよ。


 けれど彼女達は、話題に登るオッサンがすぐ近くにいるとは、思ってもいないらしい。


 私の擬態能力が、上がっているのかしら?

いえ、そもそもオッサンに興味がないから、視界にすら入っていないんでしょうね。


「あら、バルハ領主……コニー男爵のお話?」


 そこへやってきたのはスラリとした妙齢の女性。

後ろに数名の令嬢達を連れている。

令嬢達は皆、見覚えがありますわ。


「「「「ガルーダ侯爵夫人!」」」」


 すると噂話に花を咲かせていた令嬢達が、色めき立つ。


 それはそうだろう。

ガルーダ侯爵夫人とは、ヘリオス(ヘリー)の母君だ。


 ガルーダ侯爵は、今でこそあまり表に出なくなっているものの、社交界ではまだまだ名前を知らない者がいないくらい、トップに君臨している。


 その上、ファビア様が幼い頃から懇意にしている仲なのは、周知の事実。


「お久しぶりです!

ガルーダ夫人が後援されている歌劇、素敵でしたわ!」

「私も観てます!

最近は男装令嬢ものにときめきましたの!」

「数年前から定期公演されている、美丈夫と中年男の薔薇の福音シリーズは、笑いと涙なくして語れません!」


 ふ、福音……最後に喋った令嬢は、興奮しすぎてません?

性癖全開ですわよ?


「ふふふ、私はあくまで後援しているだけなのよ」


 そんな令嬢達に、ガルーダ夫人は妖艶に微笑む。


 すると()に向かって微笑みましたわ?

気の所為?


「それで、コニー男爵のお話だったかしら?」

「いえ、グロール伯爵のお話の延長で……」

「そうなの?

残念ね?

コニー男爵は今、ファッション発祥の根源よ?

それに……」


 あらら?

やっぱり気の所為じゃありませんわ?

私を完全にロックオンしましたわ。


「見た目も、臭いも、振る舞いも、グロール伯爵の隣に立つのに相応しい紳士よ?

ね、マルク?」

「「「「え?」」」」


 これには噂話令嬢達もぽかんとした顔で、気の抜けた声を漏らしましたわ。


 対してガルーダ夫人の後ろにいた令嬢達……マナー講師として教えた教え子達が、私に向かって小さく頷いた。


「今日はバルハ領主として、陛下からお言葉を賜るのよね。

婚姻の祝辞も頂けるわ。

私もマルクを後見する身として、グロール伯爵の成長を見守る母親代わりとして、鼻が高いわ。

そろそろ陛下が入場されるから、お互いの伴侶のいる場までエスコートしてくれる?」

「……もちろん」


 突然の身バレに戸惑うものの、すぐに表情を取り繕ってガルーダ夫人の差し出す手の甲を恭しく取る。


「ご機嫌よう」

「「「はい、夫人。

コニー先生も、ご機嫌よう」」」

「ええ」


 ガルーダ夫人に挨拶を返した教え子に、軽く頷いてからその場を離れる。


「嘘……コニー男爵……噂と違って……」

「臭いなんて……むしろ爽やかな香りが……」

「確かに頭は薄いけれど、清潔感と潔さ感……」


 最後の令嬢の言葉は聞かなかった事にした。

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