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【完結】女伯爵のカレイな脱臭領地改革〜転生先で得たのは愛とスパダリ(嬢)!?  作者: 嵐華子@【稀代の悪女】複数重版&4巻販売中


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72.魔性と滅亡への序章

「つまり……既にエストバン国は滅んでいるという事ですのね?」


 涙と鼻水が落ち着いてから、ファビア様の不穏な言葉から察した答えをはっきりと切り出す。


「そうだよ。

エストバン国の王族――つまりフローネを見殺しにした当時の国王と王妃、それから国王の兄妹も含めて、私とヘリオスの代で追放したんだ。

もちろんエンヤ子爵家もね」

「ど、どんな理由で……」


 ゴクリと生唾を飲み込めば、モワリと口臭が鼻からぬける。


 けれど今は臭いにかまっていられない。


「フローネを陥れたリドア公爵令嬢を調べている時、リドア公爵家がやらかしていた悪事に、高位貴族だけじゃなく、王族の中にも共謀していた証拠を見つけてね。

王家なんて元々、何かしらの後ろ暗い事は過去に幾らでもあって、別件だけどそういう後ろ暗い悪事の証拠も出てきた」


 ファビア様は一度言葉を切ると、私の手に自分の手を重ねる。


 少し躊躇ってから、言葉を続けた。


「それにエストバン国は財政難に陥る直前でもあったんだ。

フローネ=アンカスの処刑後、王家主導で即刻、財産没収していたんだけど、そういった背景からだったんだろうね」

「そうでしたのね」


 きっとファビア様は、私が傷つくのを恐れて手を握ったのだろう。


 しかし新興貴族だった私は、国の財政難については薄々気付いていた。

これでも伯爵だったのだから、肌感覚でわかる事もあった。


「大丈夫ですから、続けて下さいまし」

「うん。

私は王家や高位貴族達の大半を国外追放して、今度は彼らの財産を回収したんだ。

更に罰を受けた王侯貴族に追従していた貴族達には、罰金刑を科した。

思っていた通り、金銭で支払えない者は、保有していた鉱山や宝石を差し出してきた。

差し出しても無くなるわけじゃないからね。

後で何かしらの方法で取り返せると思っていたんだろう。

過去、王家がそうした形だけの罰を与え、後に多額の金銭と引き換えに王家が権利を戻す方法を取っていた事があったから」

「知ってますわ」


 鉱山は管理するだけでも、金が掛かる事もある。


 何より、王家は商売で金を得るのが不得手。

金を受け取り、さっさと権利を元の持ち主に返して、次は税を納めさせる方が楽だし、そういう役割分担でエストバン国は成り立っていた。


「だから私は、鉱山ごと他国に売り払い、国土を減らした」

「んん!?」


 清々しい顔で、何を言いやがりましたの!?

エストバン国は元々、ギリギリ国土が中程度。

これで最低二つくらい鉱山を手放したら、立派な小国になってしまう。


 目を白黒させるって、今の私ではなくて!?


「貴族の数も半減させた上に、鉱山という領地を手放した貴族は、名ばかりの貴族。

そういう連中が大半だったから、国王と王妃である私達を止められる人間はいなかったんだよ」

「正確には、シャルルの独壇場だっただけで、俺はそれとなく止めた」


 前世ではファビア様の夫だった、ヘリーが口を挟む。


「どうしてそれとなく、ですのよ……」


 思わずひくつく顔で、ヘリーにつっこんでしまう。

国王なのだから、政治の影響力は王妃より強いはず。

なのに控えめにしか止めてない?

何故?


「シャルルが俺と結婚する条件は、フローネ=アンカスを奪った人間達への復讐に協力する事だった。

俺の出した条件は、何も知らない国民の中でも、特に貧しい平民達をこれ以上、苦境に立たせない事だった。

あと一つあるが……」

「それは私が後で話す」


 ヘリーの言葉をファビア様が遮って、私の顔を見つめる。


「先に、エストバン国がどうなったのかを聞いて、それからにしても……いい?」

「かっわっ……」


 コテリと首を傾げてお願いするファビア様。

なんて、なんて可愛らしいんですの!?

可愛らしいが過ぎて絶句するとか、本当になりますのね!?


 語彙力消滅ですわ!

可愛いしかでてきませんのよ!


「魔性のシャル……」

「え?」

「いや、何でもない、頼む、何も反応しないでくれ、マルク。

ファビア、続けてくれ」


 何かを言いかけたヘリーに反応すれば、ヘリーは一瞬、ファビア様を見て、すかさず言い放つ。


 何が起きたのかとファビア様の顔を見るも、ファビア様は話し始めてしまった。


「フローネだったマルクなら、知っていると思うけれど、エストバン国は鉱物資源はあっても、土地は痩せていて自国で食物の生産はまかないきれていなかたたでしょう?」

「ええ。

それで輸入に頼ってましたわ」

「だから一番のタダ飯食らいの貴族を追い出し始めた時、同時進行で改良できそうな土地を探して、ある人物を派遣していた」

「ある人物?」

「うん。

フローネがよく知っている、庭師のジョー」

「……え、ジョーって……あの、ジョー?

年季の入った……うちの庭師で……バカ婚約者が勝手に解雇した……ジョー?」


 予想外の言葉に、再び涙したのは言うまでもない。


 それなりに高齢だった。

露頭に迷って死んだかもしれないと、いつも頭のどこかで考えていたジョーが、生きてましたのね!

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