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【完結】女伯爵のカレイな脱臭領地改革〜転生先で得たのは愛とスパダリ(嬢)!?  作者: 嵐華子@【稀代の悪女】複数重版&4巻販売中


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71.戦慄

「ぅ゙ぅ゙っ、グズッ、ずずっ」


 嗚咽が少しずつ落ち着き、ファビア様が背中を優しく撫でてくれている事にようやく気づいて、鼻をすする。


 ムムッ。

マルクになった日の、薄着だった時を彷彿とさせる鼻詰まり具合ですわ。


「あの、ファビア様。

後で必ずハンカチは新調して、お返ししますわ」

――ズビヴバァー!


 ファビア様のいない方向を向いて、顔を覆ったハンカチを両手で押さえて、鼻をかむ。


「うおっ、すげえ……」


 音に驚いたのか、ヘリオスがボソリと呟く。

けれど聞かなかった事にする。


「ふふ、ハンカチなんて気にしないで。

今返してくれれば、私が洗っておくよ」


 ファビア様?

洗ったハンカチをどうするつもりですの?

オッサンの臭え鼻水は、簡単には取れませんのよ?

しかもファビア様が直々に洗うと言いまして?


「私が自分で洗って使いますわ」

「残念。

それなら刺繍でもしておけば良かったね。

後で新しいハンカチに刺繍して、マルクに渡すよ」

「「刺繍……」」


 ヘリーと声が揃った。


 ファビア様?

どんな刺繍をするつもりでしたの?


 少なくとも前世の記憶では、エンヤ嬢の刺繍の腕前はやべえ感じでしたわよ?


 表面に目立つ玉止め、ほつれた糸。

色彩も……ある種のアバンギャルドにやべえ配色ではなかったかしら?


 エンヤ嬢の幼馴染から夫となり、今世でもファビア様の幼馴染を務めるヘリーをチラリと見る。


 視線を外されましたわ。

首を軽く振られましたわ。


 ……刺繍の腕前は、エンヤ嬢並みですのね?


「あっ」


 問答無用でさっとハンカチを丸めて、ズボンのポケットに素早く入れれば、ファビア様は残念そうに声を漏らす。


 まさかお断りしたのに、ハンカチ狙ってましたの!?

使用済みなんて、絶対に渡しませんわよ!


「ファビア様。

刺繍は自分でしますわ」

「そう?

でも私が刺繍したハンカチも、マルクに使って……」

「ファビア様。

私は誰かのハンカチをいただくよりも、私の刺繍したハンカチを、ファビア様に!

使っていただく方が嬉しいんですわ」


 ファビア様の目をしっかり見つめ、大事な部分は短めに、口調を強めて断言していく。


「そう?

でも……」

「それにいただいてばかりいるのも、気が引けますの。

ハンカチは、私から受け取るだけ留めて下さいまし」

「マルク?

何だか圧が……」

「オッサンの顔は、デカいからですわ。

さあさ、ハンカチの話はこれで終わりでしてよ」


 半ば無理矢理に話を終えて、ヘリーへと向き直る。


「ヘリー。

私は確かにアンカス伯爵でしたわ。

お父様から継いだアンカス家が復権したと聞いて、良かったとも思いましてよ。

けれど結局、アンカス家は私が子孫を残せなかった事で、お父様の直系は途絶えてしまってますの。

だからこだわりもない。

それより、さっきヘリーは身にしみてわかっていると言いまして?

どういう意味かしら?」

「それは……」


 ヘリーが言い淀み、ファビア様を見る。


「マルクは目敏いね。

ヘリー、私が話すよ。

でもマルク。

これから話す事は、マルクのせいで起きたんじゃない。

私がしたくてやった事だから、マルクが気に病んじゃ駄目だよ」


 苦笑したファビア様の前置き……怖いですわよ!?

したくてやった!?

何をやらかしましたの!?


「も、もちろんですわ。

でも……やっぱりヘリーの口から聞いた方が……」


 心臓に優しい気がしますのよ、と言おうとしたのに、ファビア様は爆弾発言してくれましたわ。


「ちょっとエストバン国、消しちゃったんだよね」


 !? !? !?


 何が「ちょっと」ですの!?

ああ、国を消したのが?

て、どこが「ちょっと」ですの!?


 思わずヘリーを見れば、今度こそ最初から視線を合わせようとしませんわ!


 本当ですのね!?

ファビア様、いえ、エンヤ嬢が、国一個丸々消しちゃったんてすのね!?


「ほら、エンヤ子爵家を消すのは簡単だとしても、王家を消すのは難しいでしょう?」

「家を、それも生家を潰すのも難しいのでは……」


 思わずつっこんでしまいましてよ。


 しかもファビア様?

どうして照れたお顔してますの?

情緒がおかしくなってまして?


「それでね、簡単な方法を思いついたんだ」

「つ、続けますのね、話。

簡単とか、やべえ結論しか出てきなそうで、怖いんですのよ……」

「いっそ国を消してしまえば、王家も存在しなくなるよねって」


 やべえ結論が出てきましたわ。


 ヘリーを見れば……。


「ヘリー、苦笑しているって、どういう事ですの。

ぶっ飛んだ話ですわよ。

ヘリーは前世でエストバン国の国王にまで、上り詰めましたのよね?

嘘と言って下さいまし?」

「本当だ」


 力強く頷きまして!?

一体、何を……。


「そうだよ、マルク。

本当なんだから、そんなに大きく口を開けて、ヘリオスを凝視しないで?

浮気かと思って、ヘリオスを消したくなってしまう」

「怖え……」


 気が合いますわね、ヘリー。

私もにこやかに微笑むファビア様に、戦慄しちまってますわ!

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