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【完結】女伯爵のカレイな脱臭領地改革〜転生先で得たのは愛とスパダリ(嬢)!?  作者: 嵐華子@【稀代の悪女】複数重版&4巻販売中


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70.ヘリーの前世

「全く……相変わらず、つれないな。

ファビア。

お前はどこまで思い出した?」


 ファビア様の仄暗い微笑みに、独り言ちたヘリーが、静かに尋ねた。


 色々と急展開な状況に戸惑いつつも、ヘリーの言葉に僅かな違和感を覚えてしまう。


 まるでヘリーも私達と同じく、前世を知っているかのような……。


 思わず膝に置いた両手に力が入って、握り拳を作る。


 はっ、まさか……まさかヘリーの前世が私の、フローネの婚約者だなんて言いませんわよね!?

もし婚約者だったら、首根っこ掴まえてガクンガクンさせた後、その頬っ面をはたいてやりましてよ!


「マルク?

突然、闘志に燃えてない?」

「あ、あら、うふふふ。

あり得ない可能性に、ちょっとばかりヒートアップしてましたわ」

「落ち着いて?

ヒッヒッフーだよ」

「「それは違うやつ(違いますわ)」」


 ファビア様のアドバイスに、私とヘリーが異を唱えたところで、ファビア様が硬く握った私の片方の手に、華奢な手を添えてくれた。


「ヘリオス。

私は多分、全て思い出したよ。

ヘリオス……君は誰?」


 ファビア様がヘリーに尋ね返す。


 驚く程、ファビア様の声音は穏やかた。

もしかすると緊張する私の為に、わざとそんな声を出しているのかもしれない。


「俺も思い出した。

と言うより、最初から覚えていたと言うべきかもしれない」

「最初から?」

「ああ。

ファビア。

以前、俺に運命を信じるかって聞いた事を覚えているか?」

「うん。

私が初めてヘリオスにシャルルだった時の事を話した時だね。

ああ、マルク。

私はその時、ヘリオスにマルクと出会ったのが運命だとも話してあるんだよ」

「そ、そうですのね」


 ファビア様がまた色気を私に振りまきますわ。

顔が熱くなると、頭から臭え脂が出そうだから、止めて下さいまし。


「俺はファビアと、いや、俺達三人がこうして出会ったのは、運命だと思っている」

「ふうん……ヘリオスもマルクに運命を?」

「あー、一々つっかかるなって。

ファビアにも感じている。

何故なら俺が物心ついた時には、既に自分がエストバン国の王太子として、国王として生きた記憶があったんだ。

いつからとかじゃなく、最初から覚えていた」

「え、ええ!?

王太子殿下ですの!?」


 予想外の転生者に、声が大きくなってしまった。


 ファビア様は、どこかで気づいていたのか、何のリアクションもなく、むしろ私を見つめ続けている。


「ああ。

だからシャルル=エンヤを妃にし、フローネ=アンカスに冤罪をかけた連中に、法に則り裁きを下してフローネ=アンカスの地位を復権させた事も覚えている」


 そうか、ヘリーは王太子でしたのね。

元婚約者ではなく……気心知れたヘリーは……王太子……。


 あらら?

どうしてかしら?

気が抜けてきましたわ?


 あらら?

どうしてかしら?

目頭が熱くなってきましたわ?


 私の手に自分の手を添えるファビア様が、反対の手で胸ポケットからハンカチを取り出す。

するとそっと私の涙を拭ってくれる。


「マルク。

いや、今はアンカス伯爵と呼ばせてくれ。

アンカス伯爵。

生きている間に、冤罪だった事を晴らしてやれなくてすまなかった。

王家の都合で、いきすぎた処刑をしたと……」

「う、う……うわぁぁぁん!」


 感情も昂り始めると、ヘリーの話を遮るように、うっかり野太い泣き声を声を上げてしまう。


 ファビア様が添えた手を、なるべく優しく退けて、頬に添えられたハンカチをバッと奪って広げる。


「うっ、うっ、よ、よがっだぁぁぁ……うえぇぇぇん!」


 言いながら、ハンカチを顔全体に当てて、感情を吐き出す。


 こんな時ですけれど、臭え息が口から漏れるのは、乙女な心が許しませんわ!


「あー、っと……今のマルクは淑女だ、今のマルクはフローネ=アンカス、今はオッサンじゃねえ……女、女……」

「ヘリオス。

私の可愛いマルクは、女でも男でも泣き声は可愛いよ」


 どんなやり取りですの?

いえ、オッサンの、本気と書いてマジ泣きは見苦しいですわ。


「ゔぉ゙ぉ゙ぉ゙ぃ゙、ゔぉ゙ぉ゙ぉ゙ぃ゙」


 けれど止められませんわ!

だって……だってぇぇぇ!


「亡くなった後に地位を回復したとしても、許されるとは思っていない。

だが良かったと思って貰えたなら……」

「何を言っているの、ヘリオス。

フローネに冤罪をかけた人間達は、殺しても殺したりない。

けれど私はあの日、冤罪だとわかっていてフローネを殺した王家も、フローネを見殺しにする事に追従した私の生家も、決して許していないよ」


 殺気立ったファビア様が、ヘリーに言い放つ。


「わかっている。

身にしみて……わかっている」


 するとヘリーは、自嘲したような、苦しげな声を出した。


 身にしみて?

どういう意味かしら?

ヘリーの言葉に、また違和感を感じてしまいますわね?


 けれど、二人して勘違いしてますわ。

だって、だって私が泣いてしまったのは……。


「ヘリーが、あのボンクラカス婚約者で、なくっ、うっうっ、なぐでよがっだでずわ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙!」


 まずは誤解を解こうとしたものの、最後はオッサンの、物凄く見苦しい嗚咽まみれの声となってしまう。


「「そっちか……」」


 するとファビア様とヘリーの幼馴染コンビが、声を揃えてそう呟いた。

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