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63.国法と私怨〜ファビアside

※※前書き※※

最後二つの段落に、残虐表現あります。

ご注意下さいm(_ _)m

「………………あの婚約者……エンヤ嬢に懸想してやがりましたこと!?」


 たっぷりと魔を置いて、コニーが明らかに愕然とした。


 うん、フローネは気づいていなかったのか。

鈍感なフローネも、フローネの頃から感情が昂ると乱れる言葉遣いのマルクも、やっぱり可愛い。


 フローネが婚約者に対して、盲目的な恋を捧げていたのかな?

それはそれで妬けてしまうけれど、まさかとは思うけれど、今のマルクは、もちろん、そんな気持ち、ないよね?


「ファ、ファビア様……暗黒の微笑紳士に!?」

「へえ?

マルクはそういう紳士が好きなのかな?」

「い、いえ、暗黒の微笑紳士は……え?」


 仄暗い気持ちが更に増す。

他の男に目移りするなら、マルクをこのまま邸に閉じこめた方が……。


「ファビア様。

ガルムはこれまでと違い、誰かに嫉妬する側面をファビア様に見いだせ、嬉しく思います」


 マルクの監禁プランを本気で練り始めた時、ガルムが後ろからほのぼのとした口調で横槍を入れた。

 

「し、嫉妬?」

「ふふふ、コニー様。

ファビア様は浅慮な勘違いで嫉妬する程……おっと、ここからは後ほど、ファビア様の口から伝える方が良いでしょう」

「え、えっと……ひとまずファビア様が何にお怒りなのか、教えて下さるのかしら?」


 マルクの言葉に、ハッとする。

まさかマルクは、私がマルクに腹を立てていると勘違いした?


「ええ、必要とあらば、ファビア様はマルク様を優先させるでしょうから。

ファビア様。

微笑みが周りを凍てつかせる芸は、コニー様の前では慎まれた方がよろしいかと」

「……わかっているよ」


 私がファビアとして生まれた時から、私の面倒を見てきたからこそ、微笑ましげな眼差しを向けるガルム。


 そんなガルムの忠告に、気恥ずかしさを覚えて、少し憮然としながら答えてしまう。

まるで年若い青少年のような反応だ。


「温かいお茶をご用意してまいりましょう」


 ガルムは言外に、つまらない嫉妬する暇があったら、さっさとマルクに想いを伝えろと告げてから、出て行った。


「マルク。

私は怒っているわけじゃなく……ガルムの言う通りだね。

嫉妬してしまっていた」

「だ、誰にですの?」


 きょとんとするマルクを見て、私の想いはきちんと伝えなければ、今のマルクに少しも伝わらないと確信する。


「そうだね……一途なフローネは、社交の場で自分の婚約者が側から離れても、他の男のダンスの誘いすら断っていたでしょう」

「……今となっては、騙されているとも知らずに……恥ずかしいですわ」


 側を離れた自分の婚約者が、常にシャルルの周りを付き纏っていた事など、知る由もなかっただろう。


 もちろんフローネの婚約者が、隙あらばシャルルに纏わりつこうとしても、時に騎士家系の勘で、時に王太子すら使って躱していた。


 わざとフローネの側に行った事もある。

婚約者の側にいれば、あの男も寄り付かないかもしれないと考えたからだ。


 けれど、そんな時だけフローネの婚約者顔をして、フローネへ親しげに寄っていく男を見て、一度で止めた。


 婚約者の態度が上辺だけの演技だと気づかずに、嬉しそうに微笑むフローネは、シャルルの目には眩しく映った。


 思えばこの時、シャルルは同性にも拘らず、フローネに恋をしたのかもしれない。


 婚約者とフローネの関係に気づいた人間は、フローネと婚約者が社交の場へと赴く度、増えていった。


 フローネが社交界で上手く馴染めずにいた大きな理由は、フローネの婚約者が、そんな事態を度々引き起こしていたからだ。


 フローネの婚約者が、他ならぬ婚約者のフローネを貶め、嘲笑う。

すると周りの人間達もまた、フローネを軽んじるようになっていった。


「そんな悲しそうな顔をされると、やっぱり……」


 殺して正解だったな、と胸の中で呟く。


「やっぱり?」

「……やっぱり、フローネの婚約者に嫉妬するなって」

「は、え、しっ、えっ、えっ」


 心とは裏腹な言葉を伝えれば、マルクは口をぱくぱくして、赤くなった。


 マルクの初心な反応に気を良くしながらも、真実はは告げずにいようと心に誓う。


 シャルルが後に、そんなフローネの婚約者をリドア諸共、処断している事。

更にフローネが地下牢にいた期間分だけ拷問し、最後は罪人として両手を切り落とさせた事。


 少なくとも、このタイミングでこの二つの真実を告げる気にはなれない。


 とは言えフローネが処刑されたのが、王太子の()()()な殺害未遂なら、フローネの冤罪を仕組んだ犯人達は、()()()な殺害未遂。


 それも一介の令嬢と令息が、正式に爵位継承した伯爵であるフローネに自分達の罪を被せ、処刑させたのだ。

国法に則った処断ではある。


 ただし王太子妃となったシャルルが、直接この二人の手を斧で切断し、泣いて赦しを乞う二人の罪人達を、私自ら砂漠へ連れて行き、身一つで置き去りにしたのは、完全な私怨からだ。


 蠍や砂漠狼と呼ばれる危険な生き物がいると聞いていたけれど、置き去りにした後にどうなったかまでは知らない。

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