49.男の性〜ファビアside
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人によっては不快指数ありな、短めの話が次話も続くかと。
「言ったはずだよ。
邪魔するなって。
忘れた?」
ヘリオスの苛立ちを抱えたまま、話そうとしたのがいけなかったのかもしれない。
「……覚えている」
ヘリオスも、どこか苛立った様子が見て取れた。
「いつものように、私の周りからマルクを排除しようとでもした?」
「知って……」
ヘリオスが私の方を見て、絶句する。
「当然だよ。
私も都合が良かったから、あえてヘリオスの行動を止めなかったし、触れないようにしていた」
「都合が、いい……」
ショックを受けたようにうつむくヘリオスを、更に畳み掛ける。
「そう。
ああ、良いように使われていたなんて思わないでね。
私は止めなかっただけ。
私に群がる男を排除したのは、ヘリオスの意志だ。
そうやって、幼馴染を守る自分に酔っていた事に、気づかれていないと思わないで」
「……そう、だな……」
私はマルクを守ると決めている。
だから幼馴染でも、マルクを傷つけようとすれば容赦しない。
「でも今回は違ったでしょう?
どうして……」
「…………からだ」
「え?」
ヘリオスは感情を押し殺すように、低く呟く。
上手く聞き取れず、眉を顰めて聞き返した。
その時だ。
「お前に惚れてるからだろうが!」
感情を爆発させたように叫んだヘリオスは、私を押し倒して馬乗りになる。
私の両手を広げ、ヘリオス自身のそれぞれの手で、地面へ押さえつける。
「お前が突然、男みたいに振る舞うようになった!
それも小さい頃からな!
お前の両親はその内飽きると思って、たまに社交の場でも男の子だったかもって冗談を言ったりしてた!
けど、そういうのを正す前に、亡くなっちまった!
そのせいで周りは、お前が男だと信じてる奴も多い!
挙げ句、お前は令嬢達と性別がバレない程度の浮名を流し始めた!
令嬢姿のお前を見た事ある奴も、むしろ幼少期のお前は女装してたんだと認識を改めた奴も多い!
けど俺はずっと……ずっと、お前が女だって知ってる!
女なんだよ、お前は!
男の俺には力で勝てない、女なんだ!」
激情に駆られて吠えるヘリオスに、しかし私の心は冷えしていった。
「ヘリオス、退いて」
「ふざけんな!
ふざ、けんなよ……俺がどんな思いで女のお前を見守って……」
苦しそうに顔を歪めたヘリオスは、しかし次の瞬間、ギラついた男の性を噴出した。
「わからせてやる!」
「ヘリオス」
しかし私は冷静に、咎める声音でヘリオスの名を呼ぶ。
ヘリオスが僅かに怯むも、まだ治まらない性。
「お前が女だって、わからせて……」
「ヘリオス!
私はマルクが好きなんだ!」
一度だけ、大きな声で告げる。
ヘリオスが、グッと言葉に詰まるのを見逃さない。
「ヘリオス、私が君を一人の男として惚れる事は、絶対に一生ない」
「はっきり言うじゃねえか」
泣きそうな顔になったヘリオスに、チクリと胸が痛む。
それでも、この幼馴染を止めなければならない。
そう、ヘリオスに対して幼馴染としての情だけは、未だ健在だ。
だからこそ、暴挙に及ばせたくはなかった。
「そしてマルク以外に惚れる事もない。
相手が男でも、女でも、マルク以外に惚れられない。
確かに私は純粋な力で、男のヘリオスに勝つなんてできない。
特にヘリオスは騎士だ。
こうやって押さえつけられれば、無抵抗に抱かれるしかない。
けどね、ヘリオス」
「止めろ、聞きたくねえ!」
ヘリオスが私の両手の拘束を外したと思えば、バッと胸元を掴んで、勢い良く胸元の服をはだけさせる。
弾みでボタンが幾つか飛ぶ。
「ヘリオス、私は君に抱かれたとしても、変わらない。
君と一緒にはなれないし、君に女として惚れる事もない」
「言うな!」
険しい面持ちで咆哮を上げたヘリオスは、私の胸に巻いてあるサラシに手をかけた。




