表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】女伯爵のカレイな脱臭領地改革〜転生先で得たのは愛とスパダリ(嬢)!?  作者: 嵐華子@【稀代の悪女】複数重版&4巻販売中


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/81

43.マルクの愛とやり直し

「私、領民を……マルク=コニーが愛する領民を、信じておりますの」


 ヘリーの目をしっかり見据えて、素直な気持ちを伝える。


 臭えオッサンの体に転生して、絶望感しかなかった。


 いや、今も、もっとマシな体は無かったのかと、神様に問い質したい気持ちは強いのだけれど……。


 それでもマルクとして生きよう、この体と付き合う勇気を持とうと思えた。

それはマルクの記憶に残る愛が、とても綺麗に見えて、私が欲しかった愛の形の一つだと、素直に共感できたから。


 私はマルクの愛を大事にしながら、マルク=コニーとして人生をやり直したいんですの。


「…………だからか。

アイツがアンタに惚れ……」

「え?

聞こえませんでしたわ。

加齢でそろそろ難聴がきたのかしら?

ごめんなさい、もう少し大きな声で話してくれまして?」


 ヘリーが何かを呟いたけれど、あまりに小さくて聞き取れませんでしたわ。


 すると慌て始めるヘリー。

 

「ハッ、いや、俺は、そんな事言うつもりなんか……ああ、クソ!

認めたくねえ!」


 ど、どうしましたの!?

まるで自己嫌悪に陥ったかのように、うつむいて、帽子の上から両手で頭を押さえて……ガリガリ搔いてますわ!?


「はあぁぁぁ……何でもない。

悪かったな、領民を疑わせるような事を言った」


 物っ凄く長いため息でしたわよ?

バツが悪そうですわ?

本当に何でもありませんの?


 けれど確かに、先程のヘリーの発言は、領民達と共に、これからバルハ領盛り上げようとしている私に、言うべきではありませんでしたわね。

領民と仲違いするような発言でしたもの。


 とは言え……。


「ふふふ、ヘリーは優しいんですのね」


 思わず笑みが溢れる。


 きっとヘリーは、メルディ領と取り引きを開始する他領の領主に、不安を感じていたのだろう。


 と同時に、メルディ領からバルハ領までの道すがらという、ほんの僅かな時間ながらも一緒に過ごした事で、臭くて頼りないオッサンを不憫に感じ、なおかつ心配もしてくれたに違いない。


「は?

何でそう取るんだよ?

毒気抜かれるような事を、オッサンが年甲斐もなく、照れもせずに言うな」


 どことなく悪口が混ざってませんこと?


 けれどプイッとそっぽを向いた、ヘリーの耳。

赤いですわよ。


 さては照れ反省してますのね。

何だか可愛いですわ。

ニヤニヤしてしまいますわ。


 可愛い年下の恋人と戯れる、愛の詩を思い出してしまいましたわ。


「だってほんの一時しか接しなかった私を、心配してくれたのでしょう?」


 なんて思いながら、とは言え殿方に可愛いは失礼かと、表情を律しながら伝える。


「いや、ちょっとは痛い目見て、アイツから愛想を尽かされ……」

「ごめんなさい、加齢な難聴が……」

「何でもない。

自己嫌悪に陥りそうだから、それ以上は何も言うな」


 ブスッとしながら、出していた緑茶をクイッと飲み干すヘリー。


 すると驚いた顔つきになる。


「……美味い……甘い……何でだ?」

「ふふふ、緑茶の淹れ方は何度も研究しましたのよ。

それにこれは一番茶。

苦味も抑えられて、緑茶本来の甘味を感じやすいんですのよ」

「へえ……これならスイーツなんかにも使える……いや、何でもねえ」


 また赤くなりましたわ。

殿方のヘリーがスイーツを好むと知られて、少し恥ずかしくなったのかしら?


 やっぱり可愛いですわ。

からかいたくなりますわ。


「まあまあ、照れ屋なのね」

「う、うるさい。

オッサンの慈しむような笑みは止めろ」


 クッ、ヘリーがドン引き顔ですわ!?

年下男子を虐める、酸いも甘いも噛み分ける貴婦人気分でしたのに!

オッサンでソレは引かれると、わかっていても……わかっていてもぉ……。


「け、けれどスイーツ……良い案ですわね!

また研究してみますわ!

そう言えば、今日はどうしてバルハ領に?

グロール伯爵のお使いかしら?」


 心では蛇蝎のごとく涙を流しながら、慌てて話題を方向転換する。


「あー、そういや、俺はアイツの使用人扱いだったな」

「え?」

「アンタがどんな奴か、見に来たんだよ。

本当にアイツ……旦那様のお眼鏡に適う人間かをな」

「そうでしたのね。

やっぱり主人を心配して……そうですわ!

差し上げたい物がありますわ!」


 そう言って、次に贈ろうと思っていた物を取ってくる。


 ファビア様用の物は、用意していた小箱に収めた。


「これ……靴下?

指が分かれてる?」

「五本指靴下ですわ!」

「こっちの二股も?」

「ええ!

足袋式靴下ですわ!

今、私も履いてますのよ!」


 そう言って少し前、三人の少女達にしたように、再び靴を脱いでヘリーに見せようとして……。


「いや、見せなくていい。

足に悶絶してたの、忘れたのか」


 ヘリーに止められる。

本気で嫌そうな顔を向けられる。


「そう、でしたわね……臭え足でしたわ」


 あの時の臭いを思い出して、シュンとする。


「あー、でも初めて会った時とは比べ物にならねえくらい、臭いは改善したんじゃねえか?

邸から漂う臭いは、もう感じないしな」


 私が落ち込んだのを感じ取ったのか、ヘリーがすかさずフォローしてくれる。

やっぱり優しいですわね。


「そ、そうですのよ!

その渋茶色の靴下と、ファビ、んんっ。

グロール伯爵用に作ったその箱!」


 なので全力で乗っかる事にした。


「靴下と、箱?」

「ええ!

靴下と箱に使用した塗料は、自然派防虫作用の他に、消臭作用もありますの!

木材や紙を強化する作用もあるので、邸内の家具を磨きがてら、塗って脱臭しましたわ!」


 エヘンと胸を張ると、ポヨ、と腹肉が揺れる。


 以前のポヨヨンとした腹肉揺れより、少し振り幅が小さくなった。


 なんてこっそり嬉しくなりながら、ヘリーと会ってから約一年の間に取り組んだ集大成的な話を、とくと聞かせ始めたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ