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【完結】女伯爵のカレイな脱臭領地改革〜転生先で得たのは愛とスパダリ(嬢)!?  作者: 嵐華子@【稀代の悪女】複数重版&4巻販売中


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29.野宿とテント生活

「はひぃ〜、はひぃ〜……すう〜、はひぃ〜……く、苦しいですわ……」

「ブフン、ブフン」

 愛馬、いえ、愛ロバのロッティーに愚痴を言えば、情けない奴だと言わんばかりに、ロッティーが鼻を鳴らす。


「くっ……このなじるようなつぶらな瞳……はひぃ〜、すう〜、これはこれで可愛らしいですけれども……はひぃ〜」

「ブフゥ〜ン」


 訳:そうでしょう、ウッフン(ウィンク)。


 的な流し目をロッティーがしてますわ。

ロッティーなりに、私を励ましてくれてますのね。


「ええ、可愛らしいですわ、はひぃ〜」

「ブフン」

「くっ、愛嬌を振り撒いてからの、蔑み鳴き、すう〜」


 ロバに舐められてますわ。

でもこれはこれで可愛らしいかもしれませんわ。

何より、()()のお供にロバは手放せませんもの。


「すうぅぅぅ〜、ふうぅぅぅ〜」


 呼吸を整える為、一度、大きく深呼吸する。

鼻から抜ける臭え空気に、ある意味疲れが吹っ飛んでスンとなる。


「長時間に渡る口呼吸後の、深呼吸……臭えのがダイレクトですわね」

「ブフヒン、ブフヒン」

「ロッティー、珍しく素速いパカパカ後退を、このタイミングで見せるなんて。

酷いですわよ」

「ブフヒン、ブフヒン」

「わかってますわ。

批難鳴きしなくても、臭えのはわかってますのよ」


 その時、清々しい山の風が、ザッと吹く。

臭え臭いが、一瞬で霧散する。


「ブフヒィン」

「ロッティー……助かった、みたいな鳴き声を出さないで欲しいですわ」


 ダンの茶の木に生えた三番茶を摘み終わった翌々日。


 私はダンの住む場所から、更に上へと登った山の形状を詳しく聞いて、登山を始めた。


「形状を聞く限り、アレが堆積していても、不思議ではありませんのよね」


 ダンの話では山頂に近づくほど、寒くなる。

更にそこまで大きくない水辺も、幾つか点在しているらしい。


「ふふふ、もしかするとバルハ領で更なる名産を作れるかもしれませんわ」


 大きめのリュックから、用意していたおしぼりを取り出して、首筋と顔、ついでに薄めの頭皮も拭き上げる。


 おしぼりには、取れたばかりの三番茶で淹れた緑茶を含ませてある。


「ナーシャにお願いして、かなり急いで作ってもらったけれど、三番茶はやはり飲むより、こうして使う方が需要もありそうですわね」


 三番茶は一番茶や二番茶より、人が好んで飲みたくなるような、爽やかでフルーティーな甘味と風味は少なかった。


 どちらかと言うと苦みが表立って感じられた。

もちろんそれはそれで、一つの味わいとしてアリだとは思うけれど。


「既に小麦は収穫し終わってますし、茶葉の収穫も終わりましたわ。

小麦の方の土壌改良は、既に進めてましたけれど、茶畑の方は盲点でしたわね」


 淑女時代に邸で雇っていた庭師のジョー。

彼は紫陽花の色がどうして変化するのか、植物が好む土壌は個々に違うといった事も教えてくれた。


 といっても当時の私には全く不要なお話。

話半分にしか聞いていなかった事が悔やまれる。


「色々な事に耳を傾ける癖をつけておけば……良かったですわね」


 思わず苦笑する。


 関係ないと思っても、聞くだけならと耳を傾けるようにしていれば良かった。

そうすればもっと広い視野を持てて、人を見る目も養えたかもしれない。


 淑女時代の婚約者は、信用すべきでない人だったと今なら断言できる。

そんな人を信用したせいで、ジョーはある日突然、解雇されたのだ。


 なのに主のはずの私は、ジョーの解雇を知らずに暫く過ごしていた。

知ってからは解雇した婚約者が悪いのだと、心のどこかで責任逃れをする気持ちがあった。


「ブルル」

「まあ、ロッティー。

慰めてくれますの?」


 不意に、私から距離を取っていたロッティーが、私の体に頭を擦りつける。


「大丈夫ですわ。

マルク=コニーとして転生して、突然臭えオッサンとなり、伯爵より格下の男爵となったからこそ、気づけた事がありますのよ」


 ロッティーはツンデレですわね。

可愛らしいですわ。


 ロッティーの体を、優しくポンポンする。


 女とはいえ、フローネ=アンカスは伯爵だったのだから、本来なら誰のせいにもしてはいけなかった。


 そもそも人は、こんな臭えオッサンにすら優しくしてくれるような生き物。

根っからの悪人もいるかもしれないけれど、環境が悪人を作り出す事もあるのかもしれない。


 もしも私に女伯爵としての覚悟が備わっていれば、婚約者に運営を任せきりにはしなかった。


 婚約者だって最初から私を、嵌めようとはしていなかったのかもしれない。


「失った人生は取り戻せませんわ。

けれど今度の人生こそ色々と視野を広げて、せめて領民くらいは守れる領主になりますのよ!」


 決意も新たに、おしぼりをリュックに仕舞う。


「さあさあ、ロッティー!

目指すは湿原地!

ここからは山道を進みながら、草木が茂って湿っぽい場所を、重点的に調査しますわよ!

既にメルディー領主にも、ヘリーにも、新たに作り上げた帽子とサンダルの第二弾は贈りましたし、時間もできましたわ!

この辺りを調査したら、次のスポットへとレッツゴーですわ!

暫くは野宿に付き合ってくださいましね、ロッティー!」

「ブフン!」


 ロッティーも付き合ってくれる気満々ですわね!

淑女時代にはできなかった野宿!

テント生活!

楽しみですわ!

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