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【完結】女伯爵のカレイな脱臭領地改革〜転生先で得たのは愛とスパダリ(嬢)!?  作者: 嵐華子@【稀代の悪女】複数重版&4巻販売中


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16.女性が好む装い〜ファビアside

今回は少し短めです。

「ゴホン、ゴホン。

国外産が輸入された時は、使い方が洗濯一択しか知られてなかった。

そのせいで使う人間も、ごく限られた下女に絞られてた。

つまり機会損失をしていたって事か?」


 わざとらしく咳払いしたヘリオスが、考察を口にする。


 ヘリオスは騎士。

商売に携わる事のない職業なのに、なかなか的を得ている。


「それだけじゃない。

貴族の邸分だけならともかく、下女の給金では個人的に仕入れるには高かったんだ。

まあ数に限りもあったし、商人なら売れるようになれば値を釣り上げる。

だから我が国ではそこまで普及せず、次第に使われる機会も減っていた。

コニー男爵は、その機会損失が起こらないよう、真っ先に改善してきてるんだよ」

「それをあの男爵がね?

実はやり手の顧問とか付けたか……あ!

ファビアが助言したとか!」


 ヘリオスの言葉に思わずキョトンとして、次いで、ふふ、と笑う。


「私は何もしていないよ。

全てコニー男爵の手腕。

それにウォッシュナッツ単体で売るより、洗浄液を売る方が販売する側としては効率的だ。

ちなみにウォッシュナッツは麻袋に入れて、洗濯物と一緒に揉み洗いするだけで泡が出て、洗浄力もあるらしい。

何度か使う事は可能だ」

「そうか、まだウォッシュナッツの数も揃わないから……」

「そう。

バルハマダム達は宣伝だけでなく、数の少ない実を効率良く使う方法を普及させた。

希少価値を保ちつつ、客には手に取りやすい価格だと思わせる事に成功した。

それにウォッシュナッツは洗髪にも使えるんだって」

「何だそれ。

万能な実だけど、その話だけは怪し……」

「でも実の乾燥が進むと、臭いが乾物特有の臭いになるらしいよ」


 ヘリオスの言葉をわざと遮る。


「ぶふっ……ここで臭いかよ。

バルハ領主らしいっちゃ、らしいな」


 ヘリオスは思った通り少し吹き出してから、笑いを堪えて神妙に頷いた。


 コニー男爵をバルハ領へ送り届けたヘリオスも、まだあの激臭を覚えているんだろう。


「洗い上がりは石鹸とは比べ物にならない、柔らかな仕上がりになるんだって」

「けど臭いが乾物だろ……ぶふっ……嫌だろ」

「ま、洗髪用としてはまだ売れないだろうね。

でも……私が減税について教えてから、僅か数ヶ月で動き、半年で国から減税の許可を下ろした」


 何がコニー男爵を変えたのかと、少し思案する。


「偶然じゃないか?

とてもじゃないが、切れ者には見えなかったぞ」

「偶然が重なった可能性は否定できないね。

けれどバルハ領主の経営手腕が優れている可能性も、捨てきれない。

私としては、後者だと嬉しいよ」

「はあ?

何でだよ。

第一、ウォッシュナッツは木の実だろう?

植樹でもして収穫量を一気に増やせれば、領収も激増するかもしれない。

でも木だからな。

そんなすぐに実をつけるとは思えない増えない」

「そうだね。

大抵の木は、実が取れるようになるまで育つのに数年はかかる。

長い品種だと五年以上、実をつけない。

とはいえ領地経営は、長期視点でも見なければならない。

バルハ領主として、コニー男爵が今後どうなっていくのか楽しみだ」


 そう言った途端、ヘリオスが顔を顰めた。


「随分と肩入れしてないか?

そう言えば最近、遊んでた女達と手を切ってるみたいだよな。

ちょうどバルハ領主を勘違いからとはいえ、助けた半年前からだ。

何か関係してんのか?」

「偶然だよ」


 ヘリオスの言う通りだと思いつつ、口では違うと言っておく。

ヘリオスは昔から私に対して過保護だ。


 それはそれで仕方ない。

私はある日を境に、女性に好まれるような言葉使いや装いをするようになった。


 誘われれば手を繋いで、口づけるくらいはする。

もちろん身持ちは硬い。

私の体には、ある秘密がある。

信用できない人間と、それ以上の関係へ進んだ事は1度もない。


 両親は早くに亡くなっているし、私を咎めるのはヘリオスくらいだ。


 こんな私になってしまったのも、夢で赤髪の女性を見るようになってから。

あの緑の瞳に見つめられる度、何とも形容し難い複雑が感情が胸を締めつける。


 恋情、慕情、敬愛。


 そして暴れだしそうになる喪失感と後悔。


 けれど真冬の冷たい川から引き上げたコニー男爵が、『エンヤ嬢』と呟くのを聞いた日。

あの日から、夢の女性を現実に探してしまうような衝動が収まった。


 気づいたのは、暫くしてからだったけれど。

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