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【完結】女伯爵のカレイな脱臭領地改革〜転生先で得たのは愛とスパダリ(嬢)!?  作者: 嵐華子@【稀代の悪女】複数重版&4巻販売中


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15.照れる時の癖〜ファビアside

「気づいたら、うちの邸の下女達もウォッシュナッツを使ってたんだ。

バルハ領内で採れる木の実らしいね。

外国産のウォッシュナッツは聞いた事があったんだけど、あまり流行ってなかったみたい。

国内産は今のところ、バルハ領から流通した分だけしかないんだけど、国内外産問わず、流通量に限りがあるのが原状だ。

だけどこれ、初めは売買取り引きをしてないかったんだよ」

「へ?

まさかとは思うが、広告目的の為に無償提供したんじゃないよな?」


 ヘリオスは言葉とは裏腹に、無償提供したと確信しているのが見て取れた。


「当たりだ。

だとして、どこに提供してたと思う?」

「うーん……洗濯用だから……貴族の邸……あ、宿屋か?」


 ヘリオスが答えを外した事に、気を良くする。

簡単に当てられたら、面白くない。


「外れ。

飲み屋。

それも王都の。

上手くやったと思うよ」

「洗濯用なのに……飲み屋?」


 そんな私の答えに、ヘリオスは訝しむ。


 この辺はヘリオスが手にしている報告書には、詳しく書かれていない。


 私は王都の流行を知る為、情報屋を利用している。

これは情報屋から聞いた噂話。


 もちろん私は、この噂話は本当だろうと信じている。


「実はウォッシュナッツって、洗濯以外にも使えるらしい。

王都の飲み屋って、油汚れも毎日かなり出るだろう?

そういう飲み屋は、毎日の皿洗いで手荒れに悩む人間が多い。

皿洗い担当は、一番の下っ端の仕事だ。

手荒れが原因で辞めてく人間も、実はかなりの数いる」

「邸の下女と同じなんだな。

でもウォッシュナッツは、数に限りがあるんだろう?

それに一々、泡立てる手間があるんだよな?」

「それがバルハ領からお婆……いや、バルハマダム三人衆と名乗る人物達が、無料お試し期間の間だけ王都に滞在して、煮詰めたウォッシュナッツ液を卸してたんだって。

卸した店は、【知り合い】の飲み屋に限定。

初めの一ヶ月はお試し価格。

次の二ヶ月は紹介制を主軸に売ってる」

「ああ、そういう意味での【知り合い】ね」

「そう。

紹介した方も、された方もお試し価格を一ヶ月間だけ継続。

新規はお試し価格の二倍額。

これが正規料金らしいけど、使ってみた上で誰かに紹介した場合は……」

「お試し価格になるって事か。

でも王都でやったんだろ?

下手すると元締めとか、みかじめ料とかを主張する、たちの悪い奴らに狙われたんじゃないのか?」


 ヘリオスは騎士になるまで、更に騎士となってから暫くは王都に住んでいた。


 治安を取り締まる騎士として働いていたから、裏路地で蠢く人間の恐ろしさは私より、ヘリオスの方が知っている。


 ヘリオスが危惧した通り、王都には破落戸の集団組織が複数存在する。


 王都で何かしらの商いを行おうとする新顔の半分以上が、ヘリオスの言ったような被害に合うと言われている。


「そこは上手くやったみたい。

初めの知り合いというのが、王都の中でも騎士が頻繁に出入りする飲み屋【ラーク】だったんだ」

「ラークか。

あそこの飲み屋は料理の提供も早くて、美味いんだよな。

王都じゃ知らない奴の方が少ないくらい有名なんだ」

「私も王都に行った時、何度か利用した事あるよ。

美味しいよね」

「そうなんだよ。

知ってるなら話は早い。

ファビア。

今度、機会を見つけて二人でラークへ飲みに行こう」

「良いね。

コニー男爵も誘ってみようか」


 そう提案した途端、ヘリオスが渋い顔になった。


「えー、何でだよ!

飯食べながら、あの臭いは嗅ぎたくない!」

「ラークの店主が、バルハ領出身だからだよ」

「え、そうだったのか!?」

「コニー男爵だけじゃなく、ラークの店主も喜びそうだ。

それに報告書を読む限り、自分への臭い対策に奮闘しているみたいだ。

臭わなくなっているかもしれないよ」

「それは無さそうだけど……ふーん、なるほどね。

王都で有名な店に、伝手を作っておくのか」

「そういう事」


 なんて言いつつも、本心は少し違う。


 コニー男爵の屈託ない笑顔を、何故だか見てみたいと思っているからだ。


 ヘリオスは昔から、幼馴染の私に近づく者を敬遠する。

黙っておく方が無難だ。


「どうやらラークから騎士寮の専属料理人へ、ウォッシュナッツの手荒れ激減効果の話がいったらしい。

それと騎士寮に住んでる騎士達は、ウォッシュナッツで洗った寝具に使うシーツの質感が良いって喜んでたみたい。

そこでも下女の手荒れが減って、ウォッシュナッツの販路が増えた」

「なるほどな。

伝手を賢く使ってるってわけか。

でもバルハマダム三人衆ってのが、ずっと王都に滞在するのは難しいんじゃないのか?」


 報告書では、バルハマダム達の年齢が書かれてある。

長期滞在には向かない。

そう判断するヘリオスの言葉は、私も正しいと感じる。


「それがね、どうやら今回はウォッシュナッツを効率良く使う方法を普及する事が目的だったみたいだ。

ここで輸入したウォッシュナッツの流通が、上手くいかなかった原因がわかったかな」


 ヘリオスにいたずらっぽく笑いかければ……どうして頬を薄っすら赤くする?

あ、口元を隠した。


 ヘリオスが照れる時の癖だ。

時々、ふとした時に癖を見せるけど、タイミングがわからないな。

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