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【完結】女伯爵のカレイな脱臭領地改革〜転生先で得たのは愛とスパダリ(嬢)!?  作者: 嵐華子@【傾国悪女】3/5発売予定


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13.マルクは本当に幸せ者

「つまり藁を、山の麓にあるダンのとこに持ってくのか?」


 今日もバン爺にお願いして、今度は小麦栽培の主戦力の村人達に集まって貰った。


 領内の拓けた野原で、脱臭領地改革の一つを説明。


 すると若者衆から小麦栽培で一目置かれている、厳つい顔と体格のゴリーが口を開く。


 ちなみに今日は、バルハマダム三人衆にウォッシュナッツを紹介してから二週間後の事だ。


 ウォッシュナッツを使ってくれたバルハマダム達からは、数日後に好意的な意見を貰った。


 洗髪にも使ってくれたらしく、まずは実が朽ちる前に拾っておこうという事になった。


 この二週間、領内に落ちていた実を根こそぎ拾うのに忙しかった。


 領民の中でも、主に女性と子供達が主力となって手伝ってくれた。

今は邸で保管してある。

 

「左様ですわ。

夏に小麦を収穫した後の藁ではなく、昨年の古い藁で構いません」

「まあ、それなら。

ちょうど先月、小麦の種を撒き終わってて時間はあるからな。

けど藁なんて持ってってどうすんだよ」


 新しい藁は、家畜の小屋に藁敷きしたり、畑の肥料に使う。


 けれど前年の藁が余っている時は、新旧を入れ替えて古い方を燃やす事も多い。


「ふふふ。

山の麓に茶畑を作りたいんですの。

これも脱臭領地改革ですわ!

そして今年の藁は、乾燥が終わったら領民が使う物以外で特産物を作れればと考えております。

まずは試作品を作ってみてからですけれど」

「しかし、それじゃあ小麦は……」

「バルハ領の小麦の収穫量は、年々減少していますわ。

けれどそれは畑を何十年と休まず使っている事も原因ですの」


 そう、前世の女伯爵知識から、この領地の問題点と改善点は目についた。


 恐らく同じように小麦栽培をしている他領の者なら、気づいている可能性は十分にある。


 けれど何事も競争社会。

他領を蹴落とすとまで考えずとも、豊作の秘訣をわざわざ教えに来ようとするはずがない。


 特にバルハ領は辺ぴなド田舎。

情報の流通など難しい。


「既に例年通り、種を撒き終わってしまっています。

ので、今年から来年にかけては通常通りいきましょう。

けれど来年からは、畑の半分を休ませ、土を肥やす事に専念して下さいまし」

「はあ!?

それじゃあ、飢えちまうだろうが!」


 ゴリーがカッとなる。

当然だ。


「わかっています。

その為に小麦以外の何かで、領収アップを目指す必要がありますわ」

「マルク!

領主だからって、勝手は……」

「まあ待つのじゃ」


 詰め寄ろうとするゴリーを、まとめ役であるバン爺ご制した。


「マルクが言う事は一理ある。

ゴリーの主張ももっともじゃ。

じゃが小麦以外にもバルハ領から特産物ができ、加えて領が発展する兆しが見えれば、国が減税してくれる。

その可能性が出てくるのじゃろう?」


 バン爺には以前、私がメルディ領主から得た情報を説明してある。


 この場のまとめ役として、わかりやすく噛み砕いて話して聞かせてくれた。


「バン爺の言う通りですわ。

このまま同じ税額で徴収され続けるなら、バルハ領はそう遠くない未来に破綻しますわ。

舵を切るなら、今しかありませんの。

国に減収を認めてもらいつつ、二年後に緑茶と小麦の収穫量を増やす事を目標に動いていけば、三年後には領収が落ち着くはず」

「はぁん。

んな上手くいくかよ?

ああ?」


 ゴリー、ガラ悪いですわ。

ゴリーのオラオラ、怖いですわ。


 マルクの体はオッサンでも、フローネの心はいたいけな淑女ですわよ。


 でも領民の皆様の生活がかかっていますものね。

ゴリーのガラが悪くなっても仕方ないですわ。


「はっきり断言はできませんわ」

「何だとぉ!?」


 領主らしく、キリッとした顔で真実を告げたものの、ガラ悪い大声に内心ではビクつく。


 それでも、ここで怯むわけにはいかない。


「嘘は吐きたくありませんわ。

でも死力を尽くしますわ。

ですから力を貸して下さいまし!」


 バッと頭を下げる。


「マルク坊。

本当に変わったのう。

それも良い方にじゃ」

「だけどバン爺……」

「黙らんか!

良いか、ちゃんと聞け!」


 ゴリーは感慨深げな声のバン爺に反論しようとした。


 けれどバン爺も大声を出す。


 私は内心、ビクビクして顔を上げられませんわ。


「このままいけば、どのみちバルハ領は解体。

それも良くて解体じゃ!

他の領地からしてみりゃ、こんな交通の便が悪い、肥えた土地でもない、税金だけはバカ高いだけのバカ広い領地なんぞうま味がないわい。

じゃが仮にマルク坊でなく、もっと利己的な領主が後を引き継ぐかもしれんと考えてみろ!

儂ら領民の都合なんぞ、一つも考えん貴族なんぞ五万とおるわい。

マルク坊も含めてバルハ領主はな、代々ずーっと無能じゃった」


 バン爺、しれっと毒を吐き捨てましたわ。

今は絶対、顔を上げませんわ。


「じゃが、代々ずーっと儂ら領民に寄り添って、お前ら世代が大人になるまで飢えもさせず、儂らがバルハ領に納める税金も年々下げて、国に納める税金は身銭を切っておったんじゃ。

そのせいで降爵しようと、使用人を雇えなくなろうと、ずーっと身銭を切り続けてくれておるんじゃ。

そんな領主、コニー家以外に聞いた事がないわい。

お前らも気づいとったじゃろうが。

マルク坊が気が弱いからと言うて、好き勝手ほざくでないわ!」

「それは……」

「じゃがの、マルク坊。

まず顔を上げてくれ。

儂らも生きていかんとならん。

じゃから三年じゃ。

三年だけ、儂ら領民はマルク坊の脱……とにかく、改革とやらに付き合う」


 顔を上げれば、バン爺の頬がほんのり赤いのが目につく。


 バン爺、脱臭改革でしてよ!

そんなに恥ずかしワードですの!?


「三年で結果を残してくれ。

頼むぞ、バルハ領主」


 今度はバン爺が頭を下げる。


 そんなバン爺を見て、集まっていた村人達が一人、また一人と頭を下げていく。


 最後に声の大きなゴリーも頭を下げた。


「「「「「「「頼みます、バルハ領主」」」」」」」


 集まった村人達が、一斉に声を発する。


 ああ……マルクは本当に幸せ者で……激臭を放っていたとしても、領主として領民に認められていましたのね。


「わかりましたわ!」


 ほんの少しだけマルクが羨ましいと感じながら、同時に胸の奥が温かく満たされる喜びを感じながら、大きく頷いた。

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