ご主人様の凄さはやっぱり分かるもんだよな
「賢者様、お待ちしていました!!」
ギルドの扉を潜ると、先にある受付にいた女性……カチアナさんが笑顔で出迎えてくれた。
「ああ、お待たせしてしまいすいません」
「あ、いえ、そういう意味では言ったわけではなくてですね……」
そう言ってカチアナさんはモジモジとし始める。
赤い髪を背中までストレートに伸ばした、眼鏡美人な彼女のこのような姿は萌えを感じてしまう。
「ご主人、サッサと用事を済ませましょうよ」
「あ、そ、そうだったね。
これが今回の納品分ですね」
錬金術によって見た目以上に中が拡張している鞄の中から、青色の液体が入った瓶を並べていった。
「これはまた……いつもながら素晴らしい出来ですね。
数も大量に用意していただき、本当に助かります」
そう言って一瓶ずつチェックしていくカチアナさん。
ここ、ミモザの町には錬金術師は僕しかいない。
それは冒険に必要な薬を作れるのが僕しかいないと言う意味である。
そこで定期的に薬や、注文があった探索アイテムを作っては卸していたのであった。
それを繰り返していった結果、この町での僕の名声は高まり、財産の蓄えも出来たのである。
その縁から奴隷を持つことを勧められ、そこで雲母と再会できたのは本当に運が良かったと言えるだろう。
「ありがとうございます。
後の報告は雲母が行いますので」
「ご主人様に代わって報告させていただきます」
ポーションの代金を受け取って後ろに下がるのと交代で雲母が前に出る。
雲母には魔物討伐による素材の提供をお願いしていた。
こうして分担する事によって、アイテム納品は僕の功績だが、魔物素材の納品は雲母の功績として認識される事だろう。
「これは素晴らしい。
ジャイアントスパイダーの糸やフォレストクロウラーの繭は服飾ギルドに人気がありますからね。
魔狼の皮や牙、爪なども本当にありがたいです。
流石は賢者様ですね」
「なっ、ち、ちが……」
カチアナさんの言葉に思わず蹌踉めく。
何とか否定しようとしたのだが……
「そうです!
ご主人様はすごいのですよ」
なんと、功績を積ませるべき雲母までもがその言葉に賛同して僕を褒め始めたのであった。
居た堪れなくなった僕はギルド内を見渡し、依頼書の書いてある掲示板の前へとやってきた。
「はぁ、こんな筈じゃなかったのにな」
「あら、そんな溜息をついてどうされましたか?」
声をかけられた先へと振り向くと、そこには修道服を纏った、美しいブロンドヘアーの女性が立っていた。