ご主人は相変わらず優しい
翌日、僕たちは冒険者ギルドへ向かう事にする。
家を出る前に東雲さんにが左腕を差し出してきたので、僕は銀の腕輪を嵌めた。
「ご主人〜今日も会えて嬉しいよ!」
その瞬間に眩しいほどの笑顔で僕を抱きしめてくる東雲さん。
「わ、わ、わ、ストップ!ストップ!!
過度なスキンシップはダメだって」
「ご主人は相変わらず奥ゆかしいですねぇ。
私はいつでもウェルカムなのに」
「東雲さんはそんな気が無いんだから。
腕輪を付けてる間も嫌がることはしたく無いんだよ」
「……まーた、東雲さんって。
私のことは雲母って呼び捨てにしないと示しがつかないですよ」
「ご、ごめん……まだ慣れなくてさ」
「いい加減慣れてください。
……何ならずっと腕輪を付けててもいいんですからね」
「そ、それはダメだよ!
僕は東雲さんには自由に生きてほしいんだから」
「……もう、そういうのずるいですって」
「え、なんか言った?」
「いーえ、相変わらずお人よしなご主人様だって思っただけですよ!」
東雲さん……ではなく、雲母はまるで別人のような態度で僕と接するのだが、これには理由があった。
彼女に付けている腕輪……これは装着者の主人に対する反抗心を奪いとる力があるのだ。
万が一にも主人に反抗して面倒を起こされては困るので、奴隷はこの腕輪の着用を義務付けられている。
僕としては東雲さんをこんな物で縛り付けたくは無いのだが、これを守らないと奴隷は捕まって罰を受け、主人も奴隷の権利を取り上げられ、以降は奴隷の購入ができなくなるという思いペナルティがある為に付けさせざるを得ないのだ。
せめて家の中だけでも自由をということで、家の中では腕輪を外しているのだが、どうやら雲母的にはそれが気に入らず、本人は先ほどのように一日中腕輪を付けることを希望している。
恐らくは腕輪の従属させる効果によって言わされていて自分の意思では無いのだろう。
彼女の言うことは何でも聞いてあげたいところだが、この願いだけは聞くわけにはいかない。
ようやく納得してくれた雲母と一緒にギルドへと向かう準備を始める。
僕はファンタジー世界における見るからに錬金術師と分かるゆったりとしたローブとマントに、先端に赤い宝石が入った杖を装備する。
一方の雲母はと言うと、胸元が大きく空いた半袖の白いシャツに膝の上まで生足を晒したミニスカートと、腰にはブレザーを巻いている。
ルーズなソックスにローファーを履いたその姿は間違いなく現代のギャル女子高生であった。




