あーしとご主人の日常
「よっしゃ、腕が鳴るな!」
「あら、今は東雲さんの方が出てきてるんですね?」
「オリンさん達なら問題ないし、流石にここまでは並の人達じゃ来れないからね」
とある日、僕と東雲さんに、オリンさんとアルネを加えた四人で北の山にやってきていた。
錬金術の素材集めだったのだが、何故こうなったのかというといつものように礼拝に行ったことがきっかけであった。
アルネに誘われて錬金術の話を聞いていたのだが、僕との議論の中で新たな方法が浮かび上がってきた。
その実験のためには高位の素材が必要だったのだが、残念ながら僕にもアルネにもそのストックが無かった。
そこで北の山に採取に行こうと言うアルネが頼ったのがオリンさんだった。
僕達の実力的にまだ無理だと言う話をしたのだが、オリンさんがいれば大丈夫との一点張り。
肝心のオリンさんも僕達とお出かけが嬉しいのか快諾したので今に至るというわけである。
オリンさん達ならば問題ないだろうと言うことで、雲母から腕輪を外し、現在は東雲さんの人格が表に出てきている。
ヤバそうなら直ぐに撤退をと考えていたのだが……結果的には何の問題も無かった。
オリンさん自身は北の山に住む魔物達を、森の魔物を相手にするかのように軽くいなして片付けていく。
一方、本来は実力不足の筈の東雲さんだが、オリンさんからアンシアの奇跡という、アンシア教の秘技のようなバフをかけてもらった結果、全ての能力が底上げされてここの魔物と互角以上の戦いぶりを見せている。
護衛は二人に任せれば問題ないという事で、僕達は採取しながら会話を楽しんでいた。
「オリンさん、驚くほどに強いですよね」
アルネは錬金術の先輩であり師のような存在になっていたため、いつの間にか敬語で話すのが自然となってしまった。
「あれはイリーテの巫女になっているだけでなく、ワシが研究していた神の力も吸収しておるからのう。
殆ど神側のデミゴッドみたいなもんじゃよ」
「え?それはどういう事です?」
「おや、そう言えばまだ言ってなかったのう。
ワシはお主が住んでおる屋敷に前に住んでおった先代の錬金術師じゃよ。
因みにオリンが解決した異変は全部ワシが原因じゃな」
「え、えええええええええ!?」
アルネの唐突なカミングアウトに驚きの声をあげてしまった。
「この島には元々女神アンシア、そのもう一つの側面である邪神イリーテが復活のために力を蓄えておった。
その力をどうにか奪えやしないかと画策したのじゃが……まさか、あんな小娘に全て潰された上に持って行かれてしまうとはのう」
「いや、あまりに驚きの話が多すぎてついていけないんですが」
「ま、ジジイの野心は潰されて女神は復活。
そのジジイは戦いの結果、こんな魔物娘に生まれ変わってしもうたという事じゃよ」
「魔物娘?」
「おや、気付いていなかったんじゃな。
ほれ、この通りじゃよ」
アルネはそう言って普段から被っていた大きな麦わら帽子を外した。
その頭には大きな華が咲いていたのである。
「見ての通りに現在のワシはアルラウネじゃよ。
因みに教会にいるもので純粋な人間はオリンだけ……いや、あやつもデミゴッドじゃから人間はおらぬのう」
「ご主人、守備はどうだ……って、籠に全然集まってねぇじゃねぇか」
驚きすぎて言葉を無くしていたところで、東雲さんがこちらへとやってきた。
「あれ、魔物は大丈夫なの?」
「ああ、オリンのやつが一人でいいって言うからよ。
仕方ないから手伝ってやるよ。
その代わり、帰ったらマッサージしろよ」
「あ、ああ、了解だよ」
「やれやれ、年寄りは野暮な話はせずに退散するとするかね」
こうしてアルネは離れた場所で一人で採取を始めた。
採取が終わった後は、家に帰ってから約束通りに東雲さんのマッサージを行う。
驚きの事実はあったが、外では僕が上で、家に帰れば東雲さんの方が上というある意味でバランスが取れた生活。
この生活はこれからも変わらずに続いていく事であろう。
これが僕と彼女の主従生活なのだから。
この話はこれにて終わりとなります。
書いていて思ったのですが、オリンさんの過去話の方が絶対に面白くなりそうと感じてしまっていたので、次回の種まきという方向にシフトチェンジさせてもらいました。
オリンさんの過去話も連載する予定なのでよろしくお願いします。
現在、同時に新連載の1話目もあげているので、よろしくお願いします。




