友達認定ぐらいはしてやるか
「えっと……つまり、どういう事です?」
「それは私の口から言うわけにはいかぬな。
まぁ、服従の腕輪の悪い効果はかき消されており、付けていても問題ないとしか言えぬのう」
「賢者さんへの紹介が遅れましたが、イリーテ様はこの島を見守る女神様なのでその言葉に間違いはありませんよ」
「いや、ちょっと色々と情報量多いんでまとめさせてもらっていいですかね?」
と言う事でこの教会に来てから驚きの連続であったので、一旦情報をまとめる時間を作らせてもらうことにする。
オリンさんは前世は僕たちと同じ学校に通っている生徒であったこと。
今世では貴族であったが追放されて出家し、この島にやってきた事。
雲母が付けられている服従の腕輪の効果は、想像以上に変質しているものの悪い効果はほぼ無くなっている事などをまとめていく。
これは自宅に戻ってから東雲さんに提供して共有しておく必要があるだろう。
「イリーテ様が神様というのは?」
「そのままの意味ですよ。
この島の守り神でしたが、私が島にやってきた頃にはその力のほとんどを失っておられました。
かつて島で起こった事件もそれが原因ですね」
「オリンのおかげで少しは力を取り戻すことが出来た訳じゃな。
まだまだ本調子ではないから、このような子供の姿でおる訳じゃがな」
「アンシアちゃんも苦労したんだねぇ」
「ん?アンシア……アンシア!?」
「ああ、イリーテ様は別名をアンシア様とも言うんですよねぇ」
「アンシアってオリンさんの宗教の名前じゃないですか!!」
「あら、知っていたんですね。
あまり口にしてはいないはずなのですが」
「ええ、少し気になって調べさせてもらったんですよ」
オリンさんは礼拝への勧誘は行うものの、自身が所属する宗教への勧誘はしない方だ。
何なら先ほどの話にあったように、自分が所属するアンシア教の名前すら出さないことが多い。
祈るという行為によって気持ちに折り合いをつけ、それでも心が辛い時には懺悔室で相談して欲しい……彼女が要求するのはそれだけなのも人気の秘密だというのは、街の住民から聞いた話である。
「まぁ、最初にこの島に来た時にはアンシア教のオリンと名乗っていましたからね。
イリーテ様と出会ってからは敢えて名乗ってはいませんが」
「何か理由があるんですか?」
「大した事じゃないですよ……それは……」
「院長、すいません。
懺悔室の方に来られた方が……」
「あらあら、話が長くなりすぎましたね。
本題は終わりましたし、今日はこの辺にしておきましょうか」
申し訳なさそうにやってきたリリカさんの呼びかけでオリンさんが立ち上がる。
「こちらこそ長居し過ぎてすみません。
また、機会があれば礼拝に来たいと思います」
「ええ、是非ともいらしてください。
雲母さんも宜しければ是非」
「うん、今日は話せて良かったよ。
またね、オリン」
本題である魔物の対策については聞き終えていたのだが、衝撃の事実についつい居座ってしまったことを反省しつつ、僕らは教会を立つことにしたのであった。
新年あけましておめでとうございます。
去年は長期連載を切る決意をした転機となる一年でした。
今年はその分を新しい小説作成に回して、ピンと来るものがあればまた長期で続けたいと思います。
お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、この連載はもうしばらくしたら閉じる予定です。
オリンさんの過去話の方そのうち書けたら良いかと思いますが、次回作はまた別の話を予定しているのでよろしくお願いします。