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ご主人ならいつでもウェルカム

「雲母!」


「く……はぁ……」


慌てて駆け寄ると、気絶しながらも薬の反動でビクビクと痙攣を起こしながら苦しんでいた。


「ふぅ……いい運動でした。

賢者さん、少し失礼しますね」


いい運動だったと言いながら汗ひとつかいていないオリンさん。


彼女も雲母の元にやってくると、屈んで額に手をかざした。


その手から柔らかな光が溢れ出し、荒い息をついていた雲母の呼吸がだんだんと穏やかになり、安らかな寝息へと変わっていく。


「薬の反動は消して体力も回復させたので時期に目覚めるでしょう。

魔力は空になっていると思いますが……そこはお任せして大丈夫ですよね?」


「え、あ、はい。

薬のストックは十分に用意していますので」


「結構です。

それでは私はこれで失礼させていただきますね」


そう言って去っていく後ろ姿を眺める。


先ほど聞いた過去に島を救ったという伝説は、紛れもなく事実だという事を証明されて気分であった。


気を取り直して雲母の方を見ると、先程までは無かったはずの紙が豊満な胸の間に挟まっているのを見つける。


手を伸ばして紙を取ろうとして……


「ご主人、こんなところで大胆だよ」


目を覚ました雲母の声にハッとする。


慌てて周りを見ると、先程まで模擬戦を見学していた冒険者達が、気を効かして明後日の方向を向いていた。


「でも……ご主人がしたいならウチは……」


「わあああ!ちがう、ちがう!!

その、胸の部分に何か挟まってたから取ろうとしただけだって」


「え、ああ、これ……」


雲母が胸の間から髪を取ろうとしたのだが、とりあえずは彼女を救護室に運ぶために抱える。


「ご、ご主人!

1人で歩けるからだいじょう……」


「こう見えても、こっちに来てからそれなりにレベルアップしてるからね。

雲母ぐらい簡単に運べるよ。

今は大人しくしててね」


「う、うう、わかった……」


雲母を抱えて救護室まで運ぶ。


診断してもらった結果、オリンさんが言っていたように、魔力は空になっているものの体力は元通りになっているので、薬で魔力を補充して一晩寝れば大丈夫だと言う結論が出た。


「すいません、ご主人様。

勝手な真似をしてしまって……」


ここでようやく正常な判断が出来るようになったのか、雲母の口調が街中用に戻っていた。


「うん、あの薬は危険だから使う時はもっと慎重にね。

まぁ、オリンさんの実力を知ることが出来たから結果オーライかな」


「今度は一矢報いて……いや、必ず勝ってみせます!!」


「いや、敵じゃないんだから戦わなくていいからね。

そういえば胸に挟まってた紙は?」


「これですよね。

ご主人様と見た方がいいかと思ってまだ見ていません」


「それじゃ一緒に確認してみようか」


雲母が胸の間から四つ折りにされた紙を取り出す。


その中を確認して僕たちは驚愕することになった。


『いつでも良いので教会に礼拝に来てくださいね。

雲母さんは嫌かもしれませんが、今回の事で貸してますので返しに来ると思ってください。

それでは、いつでもお待ちしております』


それはオリンさんからの手紙であった。


だが、驚いたのはそこではない。


その文字は僕たちがよく知る言語……日本語で書かれていたのであった。

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