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腹黒なんかに負けられねーし(雲母視点)

ご主人が何か調べ物があるということで待機を命じられた訳だけど、ぶっちゃけやる事がない。


ご主人の奴隷だから普通に扱ってはもらえるけど、ウチみたいなのと進んで仲良くしようなんてヤツもいないしね。


仕方がないから、併設されている訓練場でも使わせてもらおうかと思った時だった。


「雲母さん、こんにちわ」


「その声は……腹黒!!」


「あらあら、覚えていくれて嬉しいですね」


聞き覚えのある声に振り向くと、そこにいたのは予想通り腹黒女だった。


ウチには分かる……この女は腹の中に真っ黒な物を抱えてるって事が。


なのにご主人含めて皆んながこいつにデレデレしてるのがマジムカつく。


ウチが警戒心をあらわにしているのに、全く気にかけずにニコニコしているところも含めてムカつく。


「私に構ってないで用件を済ませたら?」


「そうしたいところは山々なのですが、皆さん手が空いておられないようなので。

どなたか良い稽古相手がおられれば良いのですが……」


「そんなことウチには関係……稽古?」


「ええ、少し身体を動かしたくなりまして」

 

よく見ると腹黒は自分の身長と同じくらいの長さのきのぼうを背負っていた。


つまり、こいつは戦う相手を求めてるって事……なら、やる事は一つじゃん。


「それならウチが付き合ってやるよ」


「あらあら、お言葉に甘えちゃいますけど……良いんですか?」


「もちろん、大歓迎だし!」


という事で話はまとまり、ウチらは模擬戦が行える訓練場へと向かっていった。


この時、周りにいた人達が同情するような、憐れみの目で見ていたということを知ったのは後の話である。


「か……はぐぅあ」


結果から言うとウチの予想していた通りにはならず、真逆の事が起こっていた。


ウチがどんな手をくり出しても棒ひとつで全てを受け流され、少しでも隙を見せれば急所に的確に狙いすまされた根の一撃が突き刺さる。


今も鳩尾に入った攻撃に悶絶し、前のめりに膝をついてしまった。


「あらあら、もう終わりですか?

これでは準備運動にもならないのですが……」


「な……舐めるなし……」


何とか起き上がり、腰のポーチからご主人謹製のポーションを空けて口に含む。


みるみる内に傷が回復していき、オマケの効果で身体能力が上がる。


「ああ、そうでした。

出来るだけ楽しみたいので本気で来てもらって大丈夫ですよ。

訓練用のダガーではなく、その腰につけた物を使って……雲母さんは魔法も使えるのでしたよね?

では、そちらの方も解禁してどうぞ」


「とことん舐めやがって!」


ウチは腹黒に言われた通りに腰に佩いたダガーを抜き、魔法の詠唱をしながら突っ込んでいく。


途中、横目でご主人が止めようとしている姿が見えたのだが……ごめん!


ここまでコケにされたら止まれない。


本気の本気……ウチの全力でこの腹黒をギャフンと言わせてやる!!

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