キモすぎて近づきたくない
当たり部屋の鉱石は粗方取り終わる。
鉄や銅といったメジャーな鉱石の他にも、亜鉛や錫といった鉱石が見つかり、少量ながらも金や銀鉱石も見つかり、正にウハウハ状態といったところだろう。
僕が作ったツルハシを使う関係上、殆ど雲母に掘ってもらったのは申し訳ない所ではあるが。
戦闘系の役割のために腕力が高く、更にアイテムの増幅効果もツルハシに上乗せされているので、さながら削岩機のようなペースで掘り進めているのには驚いたものである。
「ご主人、もう少し見て回る?」
「いや、このくらいあれば十分だと思うよ。
一回で大量に市場に卸しても混乱を招くだけだからね」
現在は鉱石不足から価値が高まっているが、だからといって大量に卸して価格崩壊を招いて良いわけではない。
ここで稼いでいる冒険者も少なくはないので、彼らの稼ぎを奪うのは本意ではない。
マジックバックに鉱石を詰め込み、さて帰りますかと来た道を戻っていた時の事である。
「ご主人、あそこ……なんかいる」
「え……うわ、この世界ってあんなのいるんだ」
「キモいんだけど、あれ何?」
「多分、ローパーっていう魔物かな。
イソギンチャクのでっかいやつって感じなんだけど……多分、女の子を捕まえて襲ってくるタイプっぽい」
道の先にいたのは、細長いブヨブヨの身体に、ヌメヌメとした無数の触手を動かす生き物であった。
その触手の先からはヌルヌルとした液体が滴っているので、おそらくは間違いないだろう。
「え、ご主人ってそういうゲームやってた感じ?」
「やってないやってない!
知識として知ってるってだけ!!」
「ふーん、まぁ良いけど。
じゃあ、魔法でサクッとやった方がいいかな?」
「そうだね……炎はこの狭い通路では怖いから、氷系とかいいんじゃないかな?」
「オッケー、サクッとやっちゃうね」
腰に佩いた短剣を装備する雲母。
彼女が意識を集中させると、その短剣の柄に嵌め込まれた無色の宝石が青色へと変化する。
「いけ!」
雲母は掛け声と共に短剣を横に薙ぎ払う。
その軌跡から無数の氷の礫が現れ、まだこちらに気付いていないローパーへと向かっていき、その身体に突き刺さり、職種を切断していく。
氷の礫を受けたローパーは力無く倒れ、その触手の動きもピタリと止まった。
「ご主人、この武器は本当にいいよ」
「雲母に合ってるから本当に作った甲斐があったよ」




