6年目
「リリア」
「ロアさまぁ〜何ですか〜?」
「いい加減離れてくれる?」
「いやです!」
「はぁ……」
私の弟子、リリアは最初に会った頃からだいぶ成長した。
私の身長は160cmくらいあるのだけど、リリアも今では同じくらいの身長になった。
魔法に関しても、ほとんど全部教えた。これ以上は自分で改良なり、研究なり、発明していくような段階。
リリアはもうその域まで達していた。
心配だった人との関わりも、私の常連さんとは仲良くやれてそうだった。
だが、1つ問題がある。3年前にリリアを危機から守ったとき、それからだったと思う。
私に依存するようになってしまった。
今は凄く強く抱きしめられている。
ちょっと痛い。
実力は申し分ないのに、そこだけが問題だ。
最近の研究の成果で、魔力の保有量が増えれば増えるほど、体の老化が遅くなることがわかった。今までは私だけの可能性が捨てきれなかったが、動物の魔力保有量を強制的に底上げさせた結果、老化が遅くなったのだ。私が200年以上生きていて、まだこの20代くらいの体なのはそのおかげだろう。
ただ、体の成長はするということがわかっている。私の髪の毛や爪が普通に伸びるから。それに、まだ仮説段階だが、一定の量魔力があると老けなくなる可能性があるかもしれない。
まだ、解明したいところがいくつかあるが、それを解明するには、魔力そのものを知らないといけない。
私は、魔力を知るために、ここ90年くらいを費やしてきた。
分かったことはいくつかあるが、それは外っ面だけで、根本が全く分からなかった。だが、それを知ることができる目処が立ったのだ。
魔法を使ったあとに出来る魔力の残滓。それが、集まる場所。
便宜上、特異点とでも言っておくが、それが見つかった。
それは計5つ、バラバラに位置していた。魔法の主属性が5つであることから、5つが最大の数だと考え、それらを調査しようとした。
だが、特異点は10年ごとに位置が変わっていることに気づいた。場所を全て見つける作業に約10年かかるので調査をする時間が無かった。
しかし、今回の10年はほとんど同じような場所に5つあり、2年ほどで全ての特異点が見つかった。
調査の絶好のチャンスだと思った。
だから…………
「リリア、私の長年の研究が最終段階まで迫っているんだ」
「え、そうなんですか!?」
「それで、その研究のために、短くて5年、長くて10年ここから出ることになる」
「そうなんですね、私も付いていきます!」
「駄目」
「え?」
リリアの顔がさっきまでの笑顔から一気に冷めた顔になる。
「リリアにはまだ危険すぎる」
特異点付近は、異常現象が多発する。リリアの魔法の練度、展開速度では到底対応できない。
「だったら私、危険じゃなくなるまで頑張って修行します!それから行けばいいですよね?」
「もう時間がないの」
「じゃあ、行かないでください。私一人じゃ……」
「生きていけるよ。だって私が教えられることはもうほとんど教えたから」
「嫌だっ!ロア様が居ないと私……」
「……」
リリアの首に1つのネックレスを掛ける。
紫色の宝石が使われている、私が魔法をかけたネックレス。
「これで私の魔力が感じられるでしょ?大丈夫、必ず帰ってくるし、寂しかったら、そのネックレスを私だと思って」
「ロア様……」
「リリア、あなたは私の愛弟子なんだから、一人でも生きていけるよ」
「待って!ロア様!」
「またね」
リリアの声を聞かずに、私はワープでその場から消え去った。魔力の残滓からワープ先を辿れないように、阻害もかけたし、残滓は相当細かく散り散りになるようにした。
「ロア様ああああああああああああ!!!!!」