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プロローグ

街の外れからさらに森の中に入った先にある小さな小屋。そこには一人の魔女が住んでいます。

魔女は、魔法を利用した何でも屋として街ではちょっと有名でした。


「私は何でも屋だけど『不老不死にしてくれ』だなんて言われてもね〜、できないことはできないよ」


最近では度を超えた依頼が増えてきて、困っているみたいです。

その中でも一番多いのは「不老不死にしてほしい」という依頼。

魔女が現れてから10年程、美貌を保っているからでしょうか。昔から姿が変わっていないとその街では噂になっています。

あの腰まで届くくらい長いふんわりした紫の髪の毛、綺麗な手、肌、脚。


不老不死だと思うのも無理ありませんし、不老不死になる方法があるのかもしれないと思ってしまうのでしょう。


――――


「はぁ…まともな依頼が来ないわ……」


最近はずっと「不老不死」の依頼ばっか。

私は別に自主的に不老になったわけじゃないし、知らない内になってたから方法なんてわからない。

というか不死ってなんですか?不死って。普通にナイフで心臓突けば私は死にます。誰だって死にます。不死なわけがないでしょう。


「……少し外の空気でも吸ってくるね」


誰に言ってんだろ、私。

かれこれ200年近く一人で暮らす生活をしてたから独り言が染み付いている。あまり寂しいとは思わないけど、逆に人がいたら邪魔なのだけど、少しくらいは人と会話をしたいとも思う。


つまらない考えを巡らせながら家のドアを開けると、外の景色が眼前に広がる。


雪……?あれ、前までどんぐり落ちてなかったっけ?そういえば依頼者の服装とか変わってたかも……。


そんな雪景色の中に一つ、小さな身体を見つけた。


「だ、大丈夫……?」


人間の子どもが倒れている。私がやったとか思われないよね……?…………人が倒れているっていうのにこんな保身的で自己中なことを考える私に少し反吐が出る。


そばに駆け寄ってみると、その子は酷く痩せているように見える。


「……息はある……こんなところで倒れてるってことは私に用があったのかな」


とりあえずうちのベッドで休ませよう。


その幼い身体を持ち上げ、家まで戻ることにした。


――――


「スープなら飲んでくれるかなぁ……」


拾った子どもをベッドに寝かせて布団をかぶせた。

あの痩せ具合だと絶対にお腹が減ってるだろうからスープを用意した。


正直、私にできるのはこれくらい。こういった類は魔法でどうにかできるタイプじゃない。


「……ん……?」


「……ここは……?いい匂い……」


声は、どちらかというと少女だった。

まだ子どもすぎてどっちでも可能性があるけどね。


「あぁ、起きた?」


「倒れている子どもを見て見ぬふりすることなんて出来なかったから……まぁ、ちょっとはゆっくりしてってよ」


そう言って私は用意したスープを持ってくる。


スープを飲ませると、凄い勢いで飲み干していった。


「……魔女様…?」


 口を拭いてから出てきた言葉はそれだった。


「『様』なんて付けなくていいわ、ただの魔女よ」


「あ、あの、魔女様……」


『様』は付けなくていいって言ったのに。私はそんな大それたものなんかじゃないから。

一瞬目を逸らしてからまた目を合わせる。


「なに?」


「助けてくれてありがとうございます」


律儀に頭を深く下げて感謝を述べている。もしかして、私に無礼が無いように礼儀正しくしている?


「……当たり前のことをしただけだし、お礼なんて……」


「それより、私の家の前で倒れてたってことは私に用があったんじゃないの?」


そう言うと、「あ、そうでした」なんて言って私に目を向けた。


「魔女様……私を弟子にしてください!!」


……!?


それは、なるほど、全く予想していなかった。


弟子……かぁ………………


思案に耽っていると、少女の表情に心配や不安といったものが出てきて、今にも泣きそうだ。


「……わかった、滅茶苦茶に痩せてる所を鑑みるに、何処か他に行く宛も無いんでしょ」


「仕方ないから、弟子に……してあげるよ」


可哀想だったから。

雑用を任せられるから。

可愛いかったから。


理由はどうであれ、私はこの子を弟子とすることにした。

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