月曜日代休の誘惑
某県の男子バレーボール部には絶対王者が居る。県大会は彼らを除く準優勝を決める大会であり、誰も彼等を止めるなんて考えていなかった。…あの伝説のチームが現れるまでは。
…などといった熱い話とは無縁の高校も星の数程…いや、某県の男子バレーボール人口は露骨に少ないので両手で数える程度には存在する。というかそういった熱い情熱を捧げる部員なんて滅多に存在しないのではないか?漫画や小説じゃあるまいし。
此処、自称進学校の『東高校』も例に漏れず全国出場を掲げる訳でもなく身体を少し動かしたい位の気持ちのメンバーが揃うチーム、サボるとか露骨な怠惰な選手がいる訳では無いが、朝から晩までバレーボールを考えているかといったらそんな事はない。中学からの経験者は俺一人で経験者って理由で主将を務めているが、後輩のデカい奴にレギュラーを取られて現在はベンチを人知れず温める日々。エースには佐藤、野球部出身、高校バレーは経験者と野球部が基本的に偉い。地肩の強い野球部で身長があれば基本的にエースだ。…なんでお前はベンチかって?身長が低くて異様にレシーブが下手だからだよ言わせんな。
そんな東高校バレーボール部だが、いよいよ県総体の時期である。地区大会は総当たりで一回勝てば県大会と緩いもので一勝二敗で悠々出場を決めた。(相手は一年しかいないなんなら助っ人入れてたチームなのはここだけの秘密だ。)今年はチーム数が何チームか増えたらしくトーナメントにシードの山がひとつあり、そこに東高校の名前があった。「お、ラッキーシードじゃん、土曜試合ねえー!」お調子者の鈴木が何も考えていない能天気な笑い方で喜んでいる。「これ一勝したら月曜日休みになるなあ」俺が軽い気持ちでそんな事を呟くと一瞬の静寂。「…マジ?」「ああ、そうらしい、熱いな…」チームメイトが騒めく。「対戦校は!?」「工業でも王者でもない、そりゃあいつらシードで端っこだからな」「月曜の数英現代文避けれるのマジ熱いよな!!」チームメイトの皮算用を苦々しく笑いながらも俺としても魅力的な話であった。「…それじゃあ、目指しますか、初戦突破!」「「「オウッ!!」」」…そんな感じで世界で一番欲望に忠実な目標が決まったのだった。