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北国の氷雪の魔女  作者: ヒーズ
8/8

第1章:凍結花 第8話:大好(だいきらい)きな人の悪夢(おもいで)

無期限で休載します。申し訳ありません。

苦しい、苦しい。

何か、何かがゆっくりと私を蝕んでい。

苦しい。

真っ暗な空間で、私は長い時間苦しんでいました。

そんな時・・・



「ラティ、何時まで寝てるつもりなの、早く起きて来なさい」


懐かしい声にふと目が覚める様な気がしました。

私はこれが一瞬で夢なのだと理解しました。

何故ならこの部屋は 私が子供の頃に使っていた部屋 だからです。

懐かしい声、その声の正体は恐らく・・・。

私はベッドから起き上がって、声の主がいる食卓に向かいます。

やっぱり、そこにいたのは私の母でした。


「ラティ、朝ご飯を食べ終えたらすぐに魔法の練習ですからね」


優しい声の母。

私が一番好きで、一番嫌いな人です。

優しいのに厳しい、尊敬できる魔法の師匠であり、世界で一番私を愛してくれる人。

怒りや悲しみ、不安や焦り、母を見た瞬間、全ての感情が混ざった、何とも言えな気持ちで

胸が一杯になりました。

夢、ただ夢なのに・・・どうして・・・。


「お母さん」


朝食の準備をしていた母が、私の怒鳴り声を聞き、ピタリと動きを止めるのが目に入ってきました。

自らが感情的に動いてしまったことにも驚きましたが、私の怒鳴り声を聞いた母が、驚くでもなく、

怒るでもなく、私にゆっくりと近づいてきて、私を抱きしめてきたことに、驚きを隠せませんでした。

ポンポン、と優しく頭を撫でられ、胸の奥に押さえつけていた感情が、決壊したダムの水の様に溢れ出て、私は声を出しながら泣いてしまいます。

やはり私は母が嫌いです。

優しくて、厳しくて、尊敬できる魔法の師匠なのに、何よりも私を優先して愛してくれる。

母の前では、氷雪の魔女ではなくなってしまって・・・ラティという少女になってしまう。

世界で一番嫌いで、世界で一番大好きな人。

私は、本物ではないものの、確かに温かい母の抱擁の中で、ゆっくりと、今度は穏やかな眠りに就く

ことができました。



次に目を覚ました時、最初に目に入って来たのは、

「ああ、私は夢から覚めたんだな」

と実感させるには十二分に見慣れた天井でした。

私の隣には、椅子に座ったまま静かに眠っている筋肉馬鹿シリエスタ

やっぱり、このは静かな時だけは美人なのよね。

私がシリエスタの頭をゆっくりと撫でると

「えへへ、お姉ちゃん、やめてよ」

と気持ち悪い寝言を言い始めました・・・ので、撫でるのをやめます。

暫くボーっとしていると、筋肉馬鹿シリエスタも続けて起きてきました。

目を擦りながら、うぅーと背伸びをした筋肉馬鹿シリエスタは、私が起きていることに気が付いた様で、一瞬ピタっと動きを止めたかと思うと

「ラティ姉ちゃぁぁぁん」

と叫びながら私に抱き着いてきました。

この筋肉馬鹿シリエスタは手加減が出来ない、と言うのが私達三大魔女の中で常識化しているので

私はすかさず魔法を唱えて、筋肉馬鹿シリエスタのことを吹き飛ばしました。


「あああああぁぁぁぁ」


と女性らしくない叫び声を上げながら、筋肉馬鹿シリエスタは見事に吹っ飛んでいきました。

すると、ドン、と筋肉馬鹿シリエスタが壁と思いっきり衝突する音を聞いたシーシエとカリエナがゆっくりとこっちに向かって歩いて来るのが分かりました。

まったく動じていないことから、二人は恐らく何が起こったのか理解しているのでしょう。

足音が部屋の前で止まると、続けてノックが聞こえてきました。

その次の瞬間

「入るわよ」

と言う声と共に、二人が部屋の中に入ってきました。

無論、床に倒れている筋肉馬鹿シリエスタのことは誰も気にしていません。

二人は部屋の中に入ってくると、急に早足になりながら私に近づいてきます。

ムッと顔をしかめながら近づいてくる二人のことを、若干怖いな、と思いながら、何をされてもいいように、身構えておきます。

しかし二人は珍しく、かなり心配そうな声で


「大丈夫」


と私に聞いてきました。

何時もではあり得ない心配様に、なんだか逆に不安になってきました。

二人曰く、私は高熱を出してうなされていたらしいのですが・・・急に呼吸が静かになったので

皆が焦った、とのことです。

色々と状況が複雑になって行っているのだけは、理解できました。

不思議な夢を見たお陰か、何だか気持ちが落ち着いて、スッキリした様な気分ですし・・・はぁ、まさか既にこの世にいない人に助けられるとは、あの人の愛情はある意味異常ですね。

でも、夢の中なのに、あの人に抱擁された時、本当に心地よい温かさを感じました。

あの人・・・私の母は、歴代の氷雪の魔女の中でも飛びぬけた魔女の才能を持っていました。

私なんかが一生を掛けて努力しても追いつけない程の・・・・。

そんな私の母が凍結花を研究した、ならば何処かにかならず大きな手掛かりが残されているはずです。

だって、私の母は、私が唯一尊敬している 偉大な魔女 なのだから。

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