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北国の氷雪の魔女  作者: ヒーズ
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第1章:凍結花 第6話:カルム君と採取(おでかけ)、急な旧友の登場

これは、とある行商人から聞いた話である。

北方にある国、アルテントの最北の町カルナート、その町から更に北に行った森にある村の更に奥

そこに彼女は暮らしているらしい。

氷雪の魔女、不老長寿の美しい魔女。

白銀の雪の如き透き通った美しい肌、全てを凍りつかせ時を止めてしまいそうな程蒼く美しい髪。

高位の魔女のみが纏うことを許される青みがかった白銀の衣に

深淵の如き黒の尖り帽子を被っている。

氷雪の魔女は、助けを求める者に救いを与え・・・共に苦を背負ってくれる。

不治の病をも直す万能の薬を作り、自らの下に救いを求める者を必ず救う。

白銀世界に住まう女神・・・白銀の女神である。

「魔女さ・・・ラートン先生、僕も連れてってください」


突然、カルム君がそんなことを言ってきたのです。

どう言うことかよく分からないのですが・・・。

とりあえず、カルム君本人に色々と事情を聞いてみましょうか。

カルム君曰く、先生と呼ぶのは、賢い人をそう呼ぶとレベロさんに教えた貰ったから。

僕も連れて行って下さいと言ったのは、カルム君も何度かお母様と共に森へ採取に行ったことがあるから

だそうです。

事情は分かりましたが、どうしたものでしょうか。

カルム君を連れて行って大丈夫でしょうか。

もしものことがあったら、お母様に申し訳が立ちません。

ですが、お母様のいつも使っている採取ルートが分かれば、素早く凍結花を見つけることが出来る。

凍結草の群生地を一つ一つ見て回るよりも、圧倒的なまでに効率がいい。

私は悩んだ結果、カルム君を連れて行くことにしました。


「分かりました、一緒に来てください」


カルム君は私の一言に力強く頷きました。

カルム君もカルム君なりに覚悟を決めていたことが分かりました。

ですが、私はカルム君に幾つかの条件付きで、ついて来る許可を出しました。

最初に、何があっても私の言うことを聞くこと。

次に、絶対に私の傍から離れないこと。

無闇矢鱈に植物を触らないこと等、他にも幾つかの条件を守るように言ってから、私たちは

凍結花採取へ向かいました。


「先生、魔法についてもっと詳しく教えてください」


凍結花のありそうな場所へ向かっている最中、突然カルム君がそう言いだしました。

カルム君は年齢的にも、魔法に興味を持ってもおかしくない頃ですし、もしかしたら魔法の適性があるかも

しれません。

私は更に詳しく、魔法について教えてみることにしました。


世の中には二種の魔法形態が存在しています。

魔法と魔術です。

魔法は、女性であれば万象を司る女神様へ、男性ならば万象を操る魔神様へ祈り、魔法と言う力をお借りする。

故に、詠唱という形の御祈りをしてから魔法が発動するのです。

それに対して魔術は、学術的な魔法のことをいいます。

まあ、神の存在を信じず、他の力に頼った魔法の行使を行う、と言った感じでしょうか。

実際、それで魔術と言う魔法を行使出来ている為、何とも言えないのですが。

そのせいか、魔女・魔法士と魔術師との仲は良好ではありません。

他にも、多くの魔法について話していると・・・凍結花を発見しました。


「先生、これが」


美しい、その一言に尽きました。

まさか、私が生きている内に凍結花を見つけることが出来るなんて。

カルム君と私は、無意識の内に凍結花に見とれていました。

これが魔性と言うモノなのでしょうか。

きっと、凍結花に対する知識のなかったお母様は、この美しい花に触れてしまったのでしょう。

しかし、今は時間がありません。


「カルム君、下がっていてください」


私がそう言うと、カルム君は素直に少し下がってくれました。

私は深呼吸をすると、採取用の道具を取り出して作業を開始します。

私が付けている手袋は、毒や冷気、熱などの状態異常系に強力耐性を保有している、剛毛大赤熊の皮で作った物です。

基本的には毒を持った生物の採取を行う時に使うのですが、熱を帯びている生物や冷気を帯びている生物の

採取を行う時にも使えます。

無論、生物を植物に置き換えても問題ありません。

なので問題は採取にあります。

正確な情報データを得るには、出来るだけ傷つけないように、そして長持ちする様にしなければなりません。

ですので、凍結花の根から傷つけないように採取して、特殊な魔道具の鉢に移します。

これがまた大変な作業で、とても神経を使うのです。

少しずつ、少しずつ、絶対に失敗ミスをしない様に、丁寧に、時間を掛けて、凍結花の根を掘り出して

行きます。

一体どのくらい作業していたか分かりません。

凍結花を無事に魔道具の鉢に移し終わった頃には、日が傾きかけていました。

私はそこではっと、カルム君の存在を思い出しました。

私はこの地域に住んでから相当な年月が経っていまし、外での長時間の作業も慣れていますが、カルム君は

違います。

まだまだ幼い体で、何時間もの間外にいるのは不味い。


「カルム君、大丈夫です・・・か」


私が後ろを振り向きながらそう言おうとすると、訳の分からない光景が目に映りました。

見覚えのある顔が、カルム君と共に焚火で温まっているではありませんか。

私が驚いているのを他所に、私に気が付いた旧友は、声を掛けて来ました。


「おう、久しぶりだなラティ」


私のことをラティと呼ぶ彼女は、私と同じ第8代目火炎の魔女シリエスタ・シエル・カティファネーラです。

手紙を出したのが昨日、速くても手紙が届くのは今朝です。

それも人間ではなく、私達魔女の従魔の速さでですので、人間ならば速くても数週間は掛かるのに。


「はぁ、どうせ暇だったから手紙を受け取って直ぐに飛んで来たんでしょう」


シリーちゃん(シリエスタの略)はムッとした顔をしながらも、反論はしてきません。

こういう時は大抵図星です。

それよりも、私は先にカルム君の様子を確認することにしました。

ですが、心配無用の様でした。

カルム君が心配そうな顔をしている私に気が付くと、上温薬が入っていたであろう空の瓶を私に見せてきました。

どうやら、レベロさんがカルム君に持たせてくれていた様です。

それよりも、ヘックチと私の隣でクシャミをしている火炎の魔女様を温かい場所に連れて行った方が

よさそうですね。

筋肉ば・・・シリ―ちゃんにカルム君を任せて、私達は飛行魔法を使って一旦ネース村へ帰りました。

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