泣き疲れ
「ま、またっ!?」
次の転移先はダンジョンの廊下のような所で、運良くモンスターは見当たらなかった。
「よ、よかったぁ...」
ここまで私はこの短時間で3回もトラップにかかってしまったが、2回は逆に命を助けられる形になった。本当によかった。
「ホシに早く会いたいよ...」
いつもは無意識で戦っているから気づかなかったが、私はホシがいないと何も出来ないんだなと実感した。
私が詠唱をしている間にホシが敵と戦って弱らせつつ注意を引き、私の魔法でトドメを刺すという戦術は、ホシがなくてはならないものだった。
私と違ってホシは自分だけで戦う力があるので大丈夫だと信じたい。
私はさっきのゴーレムから逃げるために全ての魔力を使い切ってしまった。
なので私は魔力の自然回復を待たないと、魔法すら使えないのだ。
だけど悪いことばかりではない。魔法陣のトラップに引っ掛からなくなったのだ。
それは何故かと言うと、魔法陣のような詠唱で無いものでの魔法の発動には魔力がいる。
ではその魔力がどこから来ているかと言うと、トラップにかかる人その人自身の魔力を使って発動しているらしい。
なので魔法使い以外の人はトラップにかからないんだけど、今私は魔力が無いので、私もトラップに引っかからないというわけなのだ。
トラップに2回助けられた私としては、勿体ないような事の気もするけど...
気にせず出口を探して進む。
ホシも私の近くに転移していて、会えたりしない
かな。また一緒に楽しく暮らしたいよ...
そんな淡い期待を抱きながら、長い迷路のようになっている廊下を歩き続ける。
30分かそこら歩いたところで、私は疲れきって座り込んでいた。
「帰りたいよぉっ、ホシっ、たすけてよぉ...」
今までの疲れと痛みに耐えきれず、泣き出してしまう。
魔獣に追われた時の涙と鼻水なんかで、もう顔がぐちゃぐちゃだけど、そんなことを気にする暇もないくらい疲れ果てていた。
泣き疲れ涙も枯れた頃
「...そろそろ行かないと」
と顔を上げる。
目の前にオークがいた。