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何も知らない頃の話

「懐かしい匂い…」

私はアカデミアの廊下を歩きながらそう呟いた。

景色が変われどもこの匂いは変わらない。

私がまだ何も知らない普通の学生だった時のことを思い出す。

今思えば、あの時代が一番平和だったのかもしれない。

あの時代を越えてから、私とスレイナはいろんなことを知り過ぎてしまった。



このアカデミアには主に三つの学部に分かれている。

一つ目は、戦術や戦闘を軸とした『戦闘部門』。戦場で戦う魔導師や魔法騎士、軍師などを育成する部門。

二つ目は、魔法や魔術の開発を軸とした『魔術部門』。新たな魔法を研究する魔法使いや、既存の魔法の新たな効果や機能を追求している。

三つめは、魔法道具などの開発や研究を軸とした『開発部門』。多種多様な魔法道具の研究、新たな魔法道具の発明、家具など生活品への魔法の応用を行う部門だ。

このアカデミアの受験者は、入学試験の結果によって自分に合った部門を勧められる。

一応、勧められた部門以外にも入ろうと思えば入れるらしいが、基本的にはこの三つの学部のどれかを選ぶこととなっており、全ての生徒がいずれかに振り分けられるようになっている。


ただ、私とスレイナだけは違った。

私たちはアカデミアの入学試験で満点を叩き出し、それどころか模範解答の上を行く解答を複数挙げてしまったため、この三つの学部のどれにも当てはめることができなくなってしまったのだ。

後々伝えられたことだが、実はこの入学試験はベテランの魔術師でも難しいとされるほどの難易度であり、当時数百十年もあったアカデミアの歴史の中でも満点を取った生徒は一人としていなかったらしい。

そんな快挙を同時に二人の学生がなしてしまったのだから、その時のアカデミアの教師陣は阿鼻叫喚の嵐だっただろう。


私たちは『戦闘部門』『魔術部門』『開発部門』のどれでもない、『特別部門』に分けられた。

表向きは特待生みたいな扱いをされ、学費や生活費はタダだった。しかし実際は厄介の塊である私たちの受け入れを各部門の教授たちが断ったため、臨時で建てられた学部なのが現実だ。

『厄介事を起こしかねない嵐の種』、そう形容せざるを得ない二人を、各部門の教授は奇異の眼で見た。


ただ、3人の教授だけは違った。

当時の学園長であり、後に私の師匠となった「アルフレッド・ヘース」。

新任の教授で、スレイナが密かに思いを寄せていた「デアル・フォン・グラドリック」。

そして現在の学園長であり、『特別部門』の担当教授を務めた「ケイガス・アルガーテ」。

この3人だけは、問題児の私たちを一人の学生として対等に扱ってくれた。


特に私たちの担任であるケイガス先生は少し変わった人物だった。

ケイガス先生は初回の授業でいきなり、私とスレイナに魔法の実技バトルをさせたのだ。

その後、教室を訪れるたびに何らかの魔法関連のバトルをさせられた。

決闘、魔法の精密性や威力比べ、新しく魔法作らせその魔法の出来の評価、魔法薬や魔法道具の作る速度など、入学してから2~2.5年はずっとその繰り返しだった。


まぁ、そんな感じの授業を行っていたのはある理由があった。

まず当時の私たちは、魔法、魔方陣の仕組み、魔方陣の組み立て方、魔術の何たるかなどを自力で学んでおり、同世代では右に出る者はいるわけがなかった。

入学試験で満点以上を叩き出していることが何よりの証拠だ。


そのため、普通の講義をしても2人には何の足しにも勉強にもならないと考えたケイガス先生は、私とスレイナに競わせ、実践的な魔法力を向上させるという方法を取ったのだ。

そのやり方であれば、私たちの魔法や魔術に関しての実力を分かり易く推し量れる他、負けた方は「次は負けない」と意気込み努力に励み研鑽し、勝った方はその地位を維持しようと努力をすることだろう。

とても理にかなっている方法だ。

それに実力が拮抗していた私たち2人だったからこそ出来た授業でもある。


その授業のおかげで、スレイナは『紅蓮の力』を持っていること、私は『メビウスの眼』を持っていることが判明した。

ケイガス先生がいたからこそ、私たちはただの『天才』から『世界の抑止力』『魔ノ十二傑』と呼ばれるにまで成りあがったのだった。



そして今、ケイガス先生は学園長へと出世し、スレイナは紅蓮の魔女としてこの学園の教授を務め、私はスレイナの授業の准教授を務めることとなっている。

実に不思議な運命だね。


「スレイナのためにも舐められないようにしないと…」

私はそんなことを考えながら、少し速足で教室へと向かう。



(そういえば、ネレスはどうしてるのかな…)

移動中、ふとネレスのことを思い出した。

『ドラゴンをアカデミアに入れることは難しい。段階を追って、学園長に説明をしないといけない』

そんな理由で一時別行動をとることとなったネレスだが、今頃どこで何をしているのだろうか。

簡単に死んだりするような生物じゃないし、あいつの性格からして自分から事件に突っ込んでいくような奴じゃないことは分かっているが、少し心配である。


(飢え死にしてなけりゃあいいんだけど)

少し苦笑しながらも、私は考え事に耽る。


会ってまだ2日も経ってないあのドラゴン。

そのドラゴンは、命の恩人である私を信じ、私はそのドラゴンに自分と同じ何かを感じて、『ネレス』という名を与えた。

しかし、数少ない『同じ存在』である彼の詳細を、私は全く知らない。

『ネレスは転生してドラゴンになった』、それぐらいしか彼の素性を知らないのだ。

それにあの時、ネレスを瀕死に追いやっていた黒い騎士の正体すら未だ分かっていない。


「この学園で何らかの情報がつかめればいいのだけど…」

そう呟きながら、私は廊下を歩いた。



しばらく歩いていると魔力が反応し始めた。

妹によると『マッピング』という新しい魔力の使い方らしい。

『スレイナ先生の教室なら「紅の教室」ってところで行われてますよ。詳しい場所はマッピングしてあげますので、それを見てください』と言っていた。

多分その時に私に『マッピング』をしたのだろう。

ホントに出来た妹だ。



魔力が指し示す方向には、紅い扉が待ち構えていた。

如何にもスレイナの教室っぽい見た目だ。


「ここがスレイナの縄張りってことね…」

人生で初めてなんじゃないかと思うレベルで緊張している。

魔王と対面した時と同じぐらいかそれ以上の緊張具合だ。

「ふぅ…」

呼吸を落ち着かせ、静かにドアノブを握る。

何らかの金属でできたそのドアノブは氷点下の如く冷たく感じ、自分の数倍もある岩を押しているかの如く重く感じた。

ギィイイ…

鈍い音を出しながら扉を開け、いつも通りの眼で中へと入る。


そして、私が教室に入った瞬間、一人の青年と眼が合った。

約2か月半、投稿していなくて、本当に、すみませんでした!!!!!!!!

この『後書き』という場をお借りして謝罪いたします。


さて、今回の話の内容ですが真ん中らへんで出た『世界の抑止力』や『魔ノ十二傑』という呼び名について補足をば。

一つ目の『世界の抑止力』というのは、その名の通り現実世界でいう『核』に近いニュアンスです。現実世界の『核』が、この話の世界線でいうグレイアやスレイナたち『魔ノ十二傑』と言ったところです。

そして本題の『魔ノ十二傑』ですが、それぞれ「色」に関した異名を持つ魔女・魔法使いのことを指します。スレイナで言えば『紅蓮』=赤、グレイアは『白隠(白銀)』=白、という感じです。

現時点異名が明かされているのがグレイアとスレイナだけですが、今後はそれぞれ色に関した異名を持つ人物たちも出していく予定なので、首を長くして暖かい眼で見守ってくれると助かります。

まぁ実際は、僕の趣味と性癖全開のキャラが10人は出て来るよ、っていう宣言みたいなものなんですけど…。

以上、もう最後の挨拶を書くことすら面倒になってきた作者「sky_a」の一言コメントでした~。

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