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第七十五話 魔法弾

 クリフの登場により、カミーリャとファングは魔法弾の準備をする余裕ができた。

 カミーリャは早速、ファングに説明する。


「これからボクが、体内にある全魔力を集めて魔法弾を撃ちます!」

「おう、それで俺はどうすりゃいい?」


 カミーリャは、空を飛ぶハウンドを見つめた。

 そして、ファングに補足説明をする。


「ボクは魔力の凝縮に集中する為、動けなくなります。そこで、ファングさんが敵に狙いを定めてください!」

「あ?」


 ファングは、彼女が言っている意味が分からなかった。

 カミーリャが撃つ魔法を、どうやって他人が狙いを定めることが出来るのだろうか?

 ファングは、困惑した。


 しかし、彼はカミーリャが次に取った行動で全てを察してしまった。

 カミーリャは突然、直立不動で動かなくなったのだ。

 そして彼女は、顔を真上へ向けながら言った。


「ファングさん! お願いします!」

「……」


 ファングは、この一見馬鹿らしい攻撃方法に呆然とした。

 しかし、突然!

 彼は、口元に笑みを浮かべながら叫んだ!


「おもしれぇじゃねぇか!!」




 一方、ロゼッタとワンは、苦戦していた。

 彼女達は、世界樹の中枢に糸を接続しようとしていたのだが、世界樹の中枢は遠い。

 しかし、あともう少しなのだ。

 もう少しなのだが、彼女達だけでは魔力不足だった。


「ぐぬぬ……」


 ロゼッタは、神経をすり減らしながら苦しんでいた。

 その時!


 誰かが、彼女の背中に優しく触れた。

 ロゼッタは、驚いて振り向く。


 するとそこには、カトレアの姿があった。

 カトレアは微笑みながら、優しく告げる。


「ロゼッタちゃん。私の魔力も使ってちょうだい!」

「え!?」

「いくわよ!」


 カトレアは言うと、ロゼッタの背中へと魔力を流し込んだ!

 すると、ロゼッタの背中から腕にかけて、強力な魔力が駆け抜ける!

 ロゼッタは少し、くすぐったかったようで軽く震えた。


 やがて、カトレアが流し込んだ魔力はロゼッタの糸を通じて世界樹の中枢へと向かう!

 彼女の魔力は、ロゼッタの糸をぐんぐんと後押しした!

 そして!


「おお!!」


 突然、ロゼッタは喜びの声を上げた!

 遂に魔力の糸が、世界樹の中枢へと到達したのだ!

 これで、世界樹へ命令を送る回路が開通した。


 ロゼッタは笑顔で、カトレアに声を掛ける。


「ありがとう、姉さん! やっぱり、姉さんの魔法は便利だな!」

「どういたしまして!」


 これで、準備万端だ!

 あとはカミーリャ達が、ハウンドを撃ち落とせるかどうかにかかっている。




 ロゼッタ達の上空では、マックスが必死にハウンドから逃げ回っていた!

 マックスは、なんとかハウンドを振り払おうと努力するが、ハウンドは執拗に追いかけて来る。

 その様子は、まるで狩りでも楽しんでいるようだった。

 このままでは、マックスが撃墜されてしまう!


 遠くから筋肉質な日に焼けた男が、焦りながらその様子を見ていた。

 彼が、打開策を考えていると……。


 ピーーーーーーー!


 突然、地上から口笛が聞こえた。

 男は、音のした方向に視線を送る。

 すると、一人の女性がこちらに向かって手を振っていた。

 ブレイズだ。


 男はそれを見て、彼女の元まで箒で降下する。

 そして男は、ブレイズの前で停止すると、白い歯を輝かせながら尋ねた。


「お客さん、どちらまで?」


 すると、ブレイズは答える前に箒の後ろに跨った。

 そして、行き先を告げる。


「あのドラゴンの背中まで頼む」

「え!?」


 男は、一瞬驚いた。

 しかし、ブレイズは真面目な様子だ。


 男は一瞬迷ったが、ブレイズの真剣な瞳を見て注文を了承する。

 お客様の頼みならば、仕方がない。


 男は、そのまま上昇を始めた。

 すると、ブレイズが追加注文をする。


「最速で頼む」

「かしこまり!」


 男は爽やかに返答して、急上昇!

 そして男は叫ぶ!


「エターナル・エメラルド・タイフーン改!! お前の全力を見せてやれ!!」

「……」


 ブレイズは、無言でハウンドを見つめていた。

 すると突然、箒が急加速する!

 そして、あっという間にハウンドの背後に忍び寄った!


 ハウンドの前方では、マックスが必死に逃げ回っていた。

 マックスは旋回や上昇、下降を繰り返しながら、ハウンドを追い払おうとしている。

 しかし、ハウンドはしぶとい。

 マックスは嫌気が差して、後方のハウンドに叫びかけた!


「もう! しつこいよっ!」


 すると、ハウンドが口元に炎を溜める!

 それを見て、マックスは慌てた!


「うわああああああああ!!」


 ハウンドが、マックスに火炎ブレスを吹きかけようとした!

 その瞬間!


 ドサッ!


 ハウンドの首元に、衝撃が走った!

 彼は、驚いて急停止する!


 そして、首元の違和感に驚いた。

 この感覚……。

 首元に、何者かが乗っている!


 彼の首元に乗っていたのは、ブレイズだ。

 彼女は、箒からハウンドの背中へと飛び乗ったのだ!

 ハウンドは慌てて、その場で暴れた!


「何者だ!!」


 彼が、言った直後!

 ブレイズは、すかさずハウンドの首に魔剣を突き立てた!

 魔剣は、硬い鱗を破って突き刺さる!


 しかし、鱗が固すぎて奥まで刃が通らない様子だ!

 ハウンドは咄嗟に、ブレイズを振り落とそうとした!


 その時!

 ブレイズは、叫んだ!


「ファング!! 撃てっ!!」


 それを聞いて、遠く広場の方でファングがニヤリと笑った。

 すると彼は、大砲を構えた!


 大砲……?

 いや、あれは大砲ではない!

 カミーリャだ!


 ファングは、硬直したカミーリャを脇に抱えて立っている!

 なんと奇妙な光景だろう!


 直後、カミーリャは口を大きく開いた!

 そして、口元に膨大な魔力を集中させる!

 すると、ファングが叫んだ!


「ぶっ放せ!! カミーリャ砲!!」


 次の瞬間!


 ドンッ!!


 ファングの周辺に、衝撃波が走った!

 それと同時に、強力な反動でファングは後方へとよろめく!


 そして、前方には真っ直ぐと魔法弾が発射された!

 魔法弾は、空中に止まっているハウンドを目がけて突き進む!


 ブレイズは、それを確認してハウンドから飛び降りた。

 ハウンドは首元の違和感が消えたことで、やっと周囲に注意を配る。

 すると!

 知らぬ間に、強力な魔法攻撃が接近している事に気づいた!


「なに!?」


 だが、もう遅い!


 ドーーーーーーーーン!


 巨大なドラゴンの体は、一瞬にして爆炎に包まれた!

 そして爆発地点を中心に、衝撃波が走る!

 周囲には轟音が響き渡り、世界樹が揺れた!


 流石のハウンドも、これでは無傷ではいられないだろう!


 ファングは、攻撃の成功を見届けて笑みを浮かべた。

 彼の隣には、魔力を使い切って気を失ってしまったカミーリャが横たわっている。

 ファングは、ゆっくりと立ち上がって爆煙の方に目を凝らした。

 すると……。


 突然!

 爆煙の中から、突風が発生!

 その突風によって、爆煙は吹き飛ばされた!


 ファングは、その様子を見て驚いた!

 何と、ハウンドは無傷のまま浮遊していたのだ!


「アハハハハハハハハハッ!」


 突然、周囲にハウンドの不気味な笑い声が響いた。

 そして彼は、告げた。


「今の私は世界最強だ!! この程度の魔法で倒せると思ったか、馬鹿め!!」


 彼が言った、直後!


「おや?」


 ハウンドは、体に違和感を感じた。

 そして彼は、全身を確認してみる。


 するとなんと、全身にパペッティアの魔力の糸がびっしりと絡みついていた!

 糸は、広場の方向から伸びている様子だ。


 ハウンドは、突然の出来事に困惑した。

 すると、次の瞬間!


 ギュイイイイイイイイイイッ!


 魔力の糸が、ハウンドを地面へと一気に引っ張った!

 糸の力は、強力だ!

 ハウンドは、突然の出来事に対応できず、そのまま引き摺り下ろされる!

 彼は咄嗟に、叫んだ!


「うおおおおおおおおおお!」


 ドーーーン!


 ハウンドは地面に打ち付けられ、魔力の糸で拘束されてしまった!

 彼は脱出を試みて、のたうち回る!

 しかし、糸は尚もキツく、ハウンドを縛り上げた!

 ハウンドは、全く身動きができない!


 すると、そんな状態の彼の前に、ロゼッタが進み出た。

 彼女は笑みを浮かべながら、ハウンドに声を掛ける。


「勝負有りだな!」


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