第七十三話 大乱戦
「アハハハハハハハハハッ」
周囲に、ハウンドの不気味な笑い声が響き渡る!
突然、巨大な黒いドラゴンは、翼を広げた!
すると、周囲に突風が発生!
ロゼッタは、瓦礫の中でうずくまって様子を伺っていた。
彼女は魔具達のシールドで、落ちてきた瓦礫を防いでいたのだ。
彼女が顔を上げると、瓦礫の隙間からドラゴンが空中へと飛び立っていくのが見えた。
それを見てロゼッタは、瓦礫を魔具達で吹き飛ばす!
そして彼女は、周囲を見渡した。
どうやら、全員瓦礫に飲み込まれてしまったようで、誰もいない。
ロゼッタは、叫んだ!
「みんな!」
すると……。
「舐めんなよ!!」
少し離れた場所から、声がした。
そして、瓦礫の山が動き出す!
すると、その瓦礫の下からファングが姿を現した!
彼は、巨大な石の塊を持ち上げて払い除けている。
ロゼッタは、彼の無事を確認して安心した。
すると今度は、別の瓦礫の後ろから一人の女性が現れる。
カミーリャだ。
なんと彼女は、クリフとカトレアを肩に担いでいた。
いつの間に、救出したのだろう!
ドラゴンが火炎ブレスを発射した瞬間に、駆けつけたのだろうか?
何という神業だ。
カミーリャは、二人を安全な場所に下ろした。
そして、ドレスに付いた埃を払う。
そんな彼女達の様子を、ハウンドは空から眺めていた。
そして彼は、とても嬉しそうな声を上げる!
「素晴らしい! すぐに死んでもらっては、つまらないからねぇ!」
ハウンドは巨大な翼を動かし、空中に浮遊しながら笑い声を響かせた!
「ハーハッハッハッハッハッ!」
すると、彼の周囲に邪悪な気配が漂い始める!
ハウンドは、魔物を召喚するつもりだ!
やがて彼の周囲に、小型のドラゴンが次々と現れ始めた!
ドラゴン達は、まるで黒雲のように空を覆っていく!
地上の三人は、身構えた。
すると一体の小型のドラゴンが、口から炎の球を発射!
炎の球は、ロゼッタを目掛けて真っ直ぐと突き進む!
ロゼッタは、テディのシールドを展開してそれを受け止めた!
ドーーーーン!
直後、ロゼッタは、サニーで火の玉を発射して反撃する!
しかし、ドラゴンは速い!
彼女の攻撃は、当たらない!
ロゼッタの後方では、カミーリャも遠距離攻撃魔法で応戦していた!
しかし、やはり空を高速移動するドラゴンには、攻撃が当たらない!
三人は、動揺した。
すると突然!
彼らの隙を狙って、一体の小型ドラゴンが急降下してきた!
それに続いて、次々とドラゴンが降下してくる!
ロゼッタと、カミーリャは魔法で弾幕を張って応戦した!
しかし、ドラゴン達はそれらを縫うようにして回避!
そしてドラゴンは、三人のすぐ目の前まで迫った!
マズい! 逃げ場がない!
彼女達が思った、次の瞬間!
スパッ! ボトッ。
「え?」
ロゼッタは、驚いた。
突然、ドラゴンが真っ二つに裂けて地面に落下したのだ!
空から襲いかかってきたドラゴン達は、次々と二つに裂けて地面へと落ちていく!
そして、どこからともなく魔法による大量の弾幕が放たれ始めた!
ロゼッタ達は、背後を振り返る。
するとそこには、ブレイズの姿があった。
ブレイズが、ヤマネコの魔術師達を率いて駆けつけたのだ!
ファングが驚いて、声を上げた!
「ブレイズ! どうしてここに!」
すると、ブレイズが返答する。
「爆破は、失敗した!」
「な!?」
「しかし……」
ブレイズは周囲に広がる、瓦礫の山を見渡した。
そして呟く。
「もう、爆破の必要は無さそうだな……」
彼女は呟きながら、上空を飛ぶ巨大なドラゴンを見つめた。
世界樹の機能は停止した様子だが、今度はあのドラゴンが厄介だ。
もし、あれが地上へ降り立ったら大変な事になるだろう。
ここで、食い止めなければならない。
しかし、ドラゴンは素早い上に、こちらの攻撃が届かない距離から攻撃してくる。
どうにかして接近することが出来たら、戦うことができるのだが。
どうしたものか……。
ブレイズが考えていると突然、遠くの方から声が聞こえた。
「やったあああああ!! 遂に、やったぞおおおおおおお!!」
「!?」
ロゼッタ達は、声のした方向に目をやる。
すると遠くの空に、複数の飛行物体が見えた!
なにやら飛行物体は、垂直に上昇している!
あれは、空飛ぶ箒だ!
ロゼッタは、目を凝らして箒の集団を見つめた。
すると、丸々と太った風船のような男の姿が目に付いた!
マックスだ!
なんと彼は、遂に空飛ぶ箒を完成させたのだ!
しかも彼は、海や森で出会った見覚えのある人々を率いている!
ロゼッタは、その信じられない光景に目を丸くした。
そして叫んだ!
「マックス!!」
彼女が叫ぶと、マックスもこちらに気付いた!
「あっ! ロゼッタ!! ……って、ええ!?」
マックスは突然、世界樹の頂上の惨状を見て驚きの表情を浮かべる。
「え!? 何これ、どうなってんの!? ドラゴン!?」
「かっけえええ!!」
マックスの隣で、筋肉質な日に焼けた男が叫んだ!
そして男は、魔法の杖を抜きながら言った!
「何だか知らないが、友達が困ってるみたいだぜ!」
「う、うん……」
マックスは予想もしなかった状況に困惑しながらも、冷静に杖を抜いた。
そして背後を飛ぶ、仲間達に告げる。
「友達を助けよう!!」
「ウィウィ!!」
「ウキー!!」
彼らは掛け声と共に、一斉にドラゴンの方へと前進した!
マックスと男は、魔法の杖で小型のドラゴンを撃ち落とす!
彼らの後ろには、青いサル達が操縦する箒が続いた!
サルの背後には、コロリン族が搭乗し、風魔法を放ってドラゴン達を攻撃する!
地上からは、ヤマネコの魔術師達が彼らを援護した。
それによって空中は、大乱戦となる。
ハウンドは、突然の出来事に困惑ながら飛び回っていた。
するとハウンドの背後に、マックスが高速で忍び寄る!
そしてマックスは、ハウンドを追尾しながら杖を構えた!
次の瞬間!
「喰らえ! オイラの特製魔法! エアロボム!!」
彼は叫ぶと同時に、ハウンドに向けて魔法を発射!
魔法はハウンドの背中に一直線に進み、弾けた!
ボンッ!
強力な風魔法がヒット!
しかし……。
全然ダメージが入った様子がない!
マックスはそれを見て、恐れ慄いた。
「えぇ……固すぎるよぉ……」
地上では、ロゼッタ達がその様子を伺っていた。
残念ながら、彼女達に攻撃する術はない。
彼女達が歯痒い思いをしていると突然、カミーリャが報告した。
「ハウンドは、強力な魔法障壁を身に纏っています! あれを破壊するのは、かなり大変そうですよ!」
「クッ……」
ロゼッタは、周囲を見渡した。
何か、良い方法は無いだろうか?
彼女が考えていると、突然誰かが声を掛けてきた。
「俺様に、良いアイデアがあるぜ!!」
「!?」
ロゼッタ達は、声のした方を振り向く。
すると、そこにはワンの姿があった。
ロゼッタとカミーリャは、驚きと喜びの入り混じった声を上げる!
「ワン!!」
するとカミーリャは、ワンに駆け寄り、抱きしめた!
「無事でよかった……」
「グギュ、死ぬ……」
ワンは、苦しそうだ。
ロゼッタは、再び気を失いそうになっているワンに対して質問をした。
「ワン! 良いアイデアとは何だ?」
するとワンが、カミーリャの腕から飛び降りる。
そして、不敵な笑みで言い放った!
「奴を、世界樹の力で焼き尽くすのさ!」




