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第七十二話 ドラゴン

 ロゼッタは、ワンの発言に一瞬驚いた。

 しかし、すぐに言葉の意味を察する。


 ワンが造られたのは、約500年前。

 それは、世界樹が作られたのと同じ時代だ。

 もしかしたら、ワンの主人も世界樹計画に携わっていたのかもしれない。


 ロゼッタは考えながら、ワンに向かって魔力の糸を伸ばした。

 ワンは意志の力で、闇の魔法に抵抗している様子だ。

 その為、彼は、すんなりとロゼッタの魔力の糸を受け入れた。

 すると!


「!?」


 突然、ロゼッタの魔力の糸に、闇の力が流れ込んでくる!

 彼女の糸が、禍々しい黒い色に染まり始めた!


 ロゼッタは、それを見て慌てる!

 そして咄嗟の判断で、逆に魔力を流し込んで闇の力を押し返した!


「うおおおおおおおおお!!」


 しかし、闇の力はしぶとい!

 ワンの体の手前で、ロゼッタの魔力を押し返す!

 二つの力は、遂に拮抗した!


 少しでも気を抜けば、体が闇に飲まれてしまう!

 ロゼッタは、全神経を糸に集中させた!


 その時!

 ワンが、叫んだ!


「ロゼッタ! ウケトレ!」


 次の瞬間!

 ワンの体から、ロゼッタの体へと情報が流れ込んでくる!

 ロゼッタは、それを瞬時に解析して、そのまま世界樹の天井へと送ってやった。

 すると!


 パーーーーン!


 突然、ワンと接続していた魔力の糸が弾けた!

 ワンは、衝撃で吹き飛ばされる!


 ロゼッタは、一瞬怯んだ。

 しかし、彼女はすぐさま、弾き飛ばされたワンに駆け寄って抱き上げた。

 そして、神殿の中央に目をやる。


 神殿の中央では、ファングが苦戦を強いられていた。

 ファングの周囲を、クリフが瞬間移動で動き回る!

 ファングは、それを目で追うのが精一杯で、体が付いていかなかった。


 そして彼は、一瞬クリフの姿を見失ってしまう!

 その瞬間!


「グハッ!」


 クリフが、ファングの真正面に現れ、強力なパンチを打ち込んだ!

 ファングは、それによって後方へと吹き飛ばされる!

 すると!


「キャッチです!」


 ファングの着地点に、カミーリャが高速移動して、投げ出された彼の体を受け止めた!

 ファングは、カミーリャに抱き抱えられる!


 そしてファングは、慌てて彼女の腕から飛び降りた。

 彼は、少し照れながらカミーリャに礼を述べる。


「お、おう……ありがとよ……」

「いいえ、どういたしまして!」


 カミーリャが答えると、彼女達の前にクリフとカトレアが立ちはだかった。

 彼らは拳を構えて、ファングとカミーリャを威嚇する。

 それに応えて、二人も身構えた。

 すると、突然……。


 クリフとカトレアが、肩を落とした。

 そして力なく項垂れて、そのままパタリと床に倒れる。


 ファングとカミーリャは、驚いた。

 しかし、二人はすぐに笑みを浮かべる。


 神殿の奥で、ロゼッタが手を振っているのが見えたのだ。

 彼女は、遂に世界樹の防衛装置の解除に成功したのだ!

 ファングとカミーリャは、喜んでロゼッタの元へと駆け寄った。


「ロゼッタさん! 無事ですか!」

「うむ、なんとかな。ワンのお陰だ……」


 ロゼッタは、抱き抱えたワンを見た。

 すると、ファングがロゼッタに告げる。


「おい。用が済んだら、とっととずらかるぞ!」


 ロゼッタとカミーリャは、それを聞いて頷いた。

 彼女達は、撤退の準備を始める。

 すると、その時!


 神殿の入り口から、声が聞こえた。


「おやおや! これは信じられない!」


 三人は驚いて、声のした方を見る。

 するとそこには、よろめきながら歩み寄ってくるハウンドの姿があった。


 なんという生命力だ。

 あれ程の攻撃を受けて、尚生きていられるなんて。


 三人は、ハウンドの姿を見て身構えた。

 そして、ロゼッタが問いかける。


「お前! いったい、どうやって!?」


 ハウンドは、その言葉を聞いてニヤリと笑った。


「私もパペッティアだからねぇ。ポータルを修理するくらい、お手の物さ!」


 彼が言うと、ファングが拳を握りしめて進み出た。


「てめぇは、もう虫の息だ! どうやら、殺されに来たようだな? あん?」

「フッ」


 ハウンドは、ファングの言葉を鼻で笑った。

 そして、唐突に質問した。


「なあ、世界樹が枯れたらどうなると思う?」

「あ?」


 ファングは、ハウンドの突然の質問に唖然とした。

 するとハウンドは、天を仰いで声を高らかに語り出す!


「この世界樹が枯れたら、また、資源の乏しい世界に逆戻りだ!!」

「クッ」

「そしたら、再び戦争だよ!」


 ファングは、分かっていたのだ。

 世界樹が、あらゆる資源の源である事くらい分かっていた。

 確かに、この世界樹を破壊すれば、500年前のような資源の無い世界に逆戻りするかも知れない。

 しかし、だからと言って、世界樹を中心とした犠牲を生み出す仕組みをいつまでも野放しにしておく訳にはいかないのだ。

 ファングは一瞬動揺したが、再び決意を固めてハウンドに声を掛けた。


「既に俺の仲間が、世界樹をぶっ飛ばす準備に入ったぜ! もう、今更止められねぇ!」


 そんなファングの言葉を、ハウンドはニヤニヤと笑いながら聞いていた。

 その直後、ハウンドは信じられない発言をした!


「どうでもいい!!」

「!?」


 その言葉を聞いていた三人は、言葉の意味が分からず困惑する。

 すると、ハウンドが続けた。


「私にとって、世の中がどうなろうと、どうでもいい!」

「なに!?」

「アハハハハハハハハハハハハハハッ」


 ハウンドは突然、狂ったように笑い出した。

 そして、言葉を続ける。


「こんなくだらない世の中なんて、どうなったって構わない! ただ、楽しければそれでいいのだ!」


 ロゼッタ達は、狂気に満ちたハウンドを不気味そうに眺めた。

 すると、ハウンドは急にロゼッタ達を睨みつける!

 そして、再びニヤリと笑みを浮かべた。


「いやー楽しいねぇ! 君達との戦いは、楽しいよ!」


 彼は言うと突然、体からパペッティアの糸を射出!

 そして、神殿の天井に接続した!

 それを見て、ロゼッタが叫ぶ!


「何をするつもりだ!!」


 その声と同時に、ファングが駆け出した!

 ファングは、高速でハウンド目掛けて突き進む!

 すると!


 ブシューーーーーー!


 突然、ファングの目の前の床から、黒い液体が勢いよく噴き出した!

 液体は、噴水のように噴き出している!

 ファングは、驚いて立ち止まった。


 すると、それに続いて神殿のあちらこちらから黒い液体が噴き出し始めた!

 ロゼッタは、得体の知れない液体の柱を見て動揺する。


「なんだこれは!?」


 やがて、神殿内にハウンドの声が響いた。


「ハーハッハッハッ! これは500年間ため続けた、生贄達の血だ!」

「なんだって!?」

 

 生贄の血……。

 確かに、この黒い液体からは憎悪のようなエネルギーを感じる。


 ロゼッタが驚いていると、神殿の床は段々と黒い液体で満たされ始めた。

 ファングは、膝丈まで溢れた液体に動揺しながら後退りをする。

 しかし、急に、更なる異変が起こった!


 神殿に満ちようとしていた液体が、今度は逆に引き始めたのだ。

 先ほどまで、部屋に溢れていた液体がみるみる内に消えていく。


 すると、次の瞬間!

 ロゼッタは、信じられない光景に目を疑った。


 ハウンドが右手の甲に刻まれた刻印で、黒い液体を吸い上げていたのだ!

 まさか、あれだけの量のエネルギーの塊を全て吸収したのか!

 これは、非常に危険な状況かも知れない。


 ハウンドは部屋中の液体を全て吸い尽くすと、ニヤリと笑ってロゼッタ達を見た。


「あぁ、最高の気分だ!!」


 ハウンドの体には、膨大な魔力が満ちていた。

 するとハウンドは、笑いながら続けた。


「さあ、存分に楽しもうじゃないか! お前達に、私の全力をぶつけてやるよ!」


 ハウンドは言うと、拳と拳を胸の前で合わせた!

 ロゼッタ達は、その姿を見て驚く。


 この形は、獣人族が変身を行うときの形だ!

 まさか、獣人化するつもりなのか!


 三人が動揺していると、突然!

 ハウンドの体から、衝撃波が発せられた!

 三人は咄嗟に、手で顔を覆う。


 すると、周囲にハウンドの笑い声が響いた。


「アハハハハハハハハハッ!」


 次の瞬間!

 ハウンドの腕が、巨大化した!

 そして、鋭い爪が生える!


 すると、それに続いて、彼の体のパーツは次々に変形していった。

 ハウンドは、どんどんと巨大化していく!

 そして彼は、巨大な恐ろしい化け物となった!


 ウオオオオオオオオオオオンッ!


 黒く、硬い鱗に包まれた体。巨大な翼膜。鋭い牙。口からは、炎が溢れている。

 これは、ドラゴンだ……。

 ドラゴンとなったハウンドは、口から炎を零しながら言い放った!


「私の炎で、世界の全てを焼き払ってくれるわ!!」


 直後!

 ハウンドは、胸部を大きく膨らませた!

 これは、火炎ブレスの予兆だ!


 ロゼッタは咄嗟に叫んだ!


「みんな! 逃げろ!!」


 次の瞬間!


 ゴオオオオオオオオオオオオオオオッ!!


 ハウンドが、強力な火炎ブレスを発射!

 ブレスは床を破壊しながら、神殿正面へと伸びる!

 そして、勢い余って天井をも貫いた!


 その火炎ブレスの衝撃で、神殿は崩壊を始める!

 なんと一撃のブレスで、神殿は破壊されてしまったのだ!

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