第七十話 助けに来たぞ!
世界が歪み、急上昇する感覚。
その直後、視界が開けた。
薄明るい開けた場所に、神殿が建っているのが見える。
遠くの空には、太陽が登り始めていた。
周囲は、随分と静かだ。
目の前には、ファングとブレイズ、そして負傷したヤマネコの魔術師たちが地面に座っている。
ロゼッタは、彼らの方を見た。
そして、共にポータルで移動してきた負傷者に手を貸しながら、彼らの元へと進む。
すると続いて、背後のポータルからカミーリャが現れた。
カミーリャも、負傷者に肩を貸しながら進み出る。
ファングは、腰に手を当てて神殿を眺めていた。
この中には、ロゼッタの仲間達がいるのだ。
今ならば、まだ助けられるかもしれない。
彼がそう思っていると、突然!
ブオンッ
突然、背後でポータルが消滅した!
それを見て一同、驚く。
まだ、トリッキーが来ていなかったのだ。
ロゼッタは、慌ててポータルがあった位置に駆け寄った。
「どういうことだ!?」
ロゼッタは、魔力の糸を出して周囲を確認する。
すると、地面に糸を繋ぐ接続部分を発見。
彼女は急いで、調査を開始した。
すると……。
「ウソだろ!」
「なんだ? どうしたんだ!」
ファングが、駆け寄って尋ねた。
すると、ロゼッタが答える。
「ポータルが、向こう側から破壊されている!」
「あ!?」
すると彼女達の元へ、ブレイズが歩み寄ってきた。
彼女は、悲しそうな表情を浮かべている。
彼女は咄嗟に、何かを直感したのだ。
トリッキーが頂上への通路を破壊したのだとすれば、下で何かあったに違いない。
ポータルを破壊したと言うことは、恐らく敵が侵入してきたと言うこと。
あの状況で、侵入してくる敵など考えられるのは一人しかいない。
彼女はそう思って、静かに呟いた。
「きっと、ハウンドだ」
「!?」
ロゼッタとファングは、驚く。
すると、ブレイズは続けた。
「あの子は私達のために、道を塞いだんだよ」
「トリッキー……馬鹿野郎……」
ファングは、歯を食いしばって悲しんだ。
そんな彼の肩に、ブレイズが手を掛ける。
そして、告げた。
「ハウンドは、油断ならない奴だ。早く、世界樹を爆破しよう」
「ああ……」
ファングは頷いた。
それを見て、負傷したヤマネコの魔術師達も立ち上がる。
ブレイズは、彼らに向かって声をかけた。
「まずは、我々の拠点へ行くぞ!」
「おう!」
「……」
ロゼッタは、移動を始めたヤマネコのメンバー達を静かに見つめていた。
そして彼女は、ブレイズ達を呼び止める。
「ブレイズ! ファング!」
二人は、ロゼッタの声に振り返った。
すると……。
「ここでお別れだ! わたしと、カミーリャは、神殿に向かうぞ!」
「……」
ブレイズは無言で頷き、再び歩みを進めた。
しかし、ファングは悩んでいた。
ロゼッタ達は、爆破までに仲間を救えるのだろうか?
状況的に、カミーリャが一人で三人の魔王の相手をして、ロゼッタが糸で防衛装置を解除する事になるだろう。
これでは、あまりに成功確率が低い。
彼が悩んでいると、背後からブレイズが声を掛けてきた。
「ファング! ぼやぼやするな!」
「クッ……」
ファングは、迷った。
そして迷った末に、叫んだ!
「ブレイズ、先に行ってろ! 俺は野暮用がある!」
ブレイズは、特に何も言わなかった。
彼女は無言で振り返り、そのまま世界樹の幹を下っていく。
ファングはそれを見送って、ロゼッタ達の方を向いた。
すると何やら、ロゼッタはニヤニヤと笑っている。
それを見て、ファングは不機嫌そうに尋ねた。
「何か、おかしいか?」
「いいや。お前、やっぱり良い奴だな!」
「うるせぇ」
ファングが言うと、ロゼッタが手を差し伸べてきた。
「ありがとな、ファング」
「……」
ファングは照れながら、ロゼッタの手を握る。
そして頭を掻きながら、返事をした。
「まぁ流石に、女子供を放っておく訳にはいかねぇからよ……」
「よろしく頼むぞ!」
そうして彼女達は、神殿の方へと向かった。
ファングが、神殿の大きな扉を押し開ける。
すると、何もない明るい空間に、三人の魔王がいた。
ロゼッタ達は、魔王の方へと歩み寄る。
すると魔王達も、彼女達の存在に気づいて歩み寄ってきた。
ロゼッタは、かつての仲間である三人の魔王と対峙する。
そして、語りかけた。
「クリフ、姉さん、ワン。助けに来たぞ!」
すると……。
「ロゼッタ……」
魔王達は、ロゼッタの名前を呼んだ。
そして急に、戦闘態勢を取る。
それを見て、カミーリャも姿勢を低くした。
すると突然、カミーリャが叫ぶ!
「煙幕、いきます!」
彼女が叫んだ、次の瞬間!
ボワッ!
ロゼッタ達の周囲に、煙幕が張られた!
魔王達は、困惑する。
すると……。
ボッ!
煙幕の上から、何者かが飛び出してきた!
魔王達は、そちらに視線を送る。
なんと煙から飛び出してきたのは、ロゼッタの魔具達だ!
テディ、レイニー、そしてサニーが魔王達を睨みつけている。
しかし、一体足りない。
ツイスターは、いったいどこに?
すると!
ボンッ! シュウウウウウウウウ!
煙幕の正面から、何者かが高速で飛び出してきた!
それは高速で、魔王達へと向かう!
ロゼッタと、ツイスターだ!
ツイスターがロゼッタの腕を掴んで、前方に高速移動していたのだ!
魔王達は、上空の魔具に気を取られていて油断していた!
呆気に取られている魔王達の横を、ロゼッタとツイスターは、間を縫うようにして通り抜けていく!
そして彼女は、奥の祭壇へと向かって行った。
その背後に、糸で引かれた三体の魔具達が続く!
クリフが、祭壇の方を振り返る。
そして、ロゼッタを追いかけようとした。
その時!
「よそ見してんじゃねぇぞ! おらぁ!」
ファングが、クリフに殴りかかった!
彼の攻撃は、ファングに向かって振り返ろうとしたクリフの頬に命中!
クリフは、吹き飛ばされた!
その様子を見て、カトレアが驚く。
そんな驚くカトレアの前に、カミーリャが立ちはだかった。
「カトレアさん! 抵抗はやめてください!」
カミーリャは、カトレアに右手のひらを向けながら説得する。
しかし、カトレアは聞く耳を持たない。
カトレアは、再び戦闘態勢を取った。
「やはり、ダメですか……」
カミーリャは呟きながら、同じく戦闘態勢を取る。
そして手刀を構えながら、カトレアに声をかけた。
「ごめんなさい。少し手荒になるかもしれません」
一方その頃、ロゼッタは祭壇の前に到着していた。
彼女は急いで、天井に魔力の糸を接続する。
そして早速、解析を行なった。
すると……。
「ロゼッタ……」
誰かが、彼女に声を掛ける。
彼女は、声のした方を振り返った。
すると背後に、ワンの姿があった。
ワンは、ふらふらとロゼッタの元に歩み寄って来る!
そして、次の瞬間!
ワンの速度が、加速した!
直後、ワンの姿が突然消える!
マズい! ワンの高速移動攻撃が来る!
ロゼッタは、咄嗟に四体の魔具を展開!
そして、シールドを張った!
すると!
ドドドドドドドドッ!
ワンが縦横無尽に飛び回り、攻撃を打ち込んでくる!
それを四体の魔具達が、防いだ!
しかし!
ワンは、さらに加速!
そして遂に、魔具達のシールドを突破した!
ワンの飛び蹴りが、ロゼッタに迫る!




