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第六十五話 忠実な犬

 ヤマネコのアジトに、無数の魔物が襲いかかった!

 アジトの中に、次々と魔物が侵入して来る!


 広場までの通路では、幾度もトラップ魔法が炸裂するが、魔物の侵入を食い止められない!

 いくら魔物を吹き飛ばしても、次から次へと魔物が湧いて来るのだ。

 これでは、アジトが崩壊するのも時間の問題だ。

 魔物による無限の波状攻撃によって、アジトの防衛網は容易く突破されてしまった。


 絶壁の上からは、ヤマネコの迎撃部隊が応戦していた。

 しかし、敵は空からも飛来する。

 迎撃部隊は、上空の魔物へ向かって魔法の弾幕を張った!


 ドンッ! ドンッ! ドンッ!


 すると、いくつかの攻撃が魔物に命中!

 そして、魔法に焼かれた魔物がボトボトと落下してきた。

 しかし!


 空中に漂う爆煙の中から、トリ型の魔物が飛び出してくる!

 魔物はヤマネコの迎撃部隊に、高速で突っ込んだ!


「うわああああああああ!」


 一人の男が、魔物の鋭い爪に掴まれて空へと連れ去られる!

 そして男は、広場へと投げ落とされた!


「アアアアアアアアアッ!」


 男はパニックになりながら、地面へと落ちていく!

 地面が目前に迫る中、男は死を覚悟した。

 その時!


 何者かが、落下する男の真下に駆けつけた!

 闇の中に、銀色の髪が揺れている。

 ファングだ!

 ファングは、その屈強な腕と、軽やかな身のこなしで落下する男をキャッチした!


「おい! 大丈夫か!」

「ファングさん!」


 ファングは、そっと男を地面へと下ろす。

 すると、それを狙って正面から複数のオオカミが襲いかかってきた!

 ファングは男を逃し、襲い来るオオカミを迎え撃つ!


 一匹のオオカミが、ファングに飛びかかった!

 しかし、ファングは鋭い蹴りでオオカミを蹴り飛ばす!


 キャン!


 オオカミは悲鳴を上げて、地面へと倒れた。

 するとファングは、辺りを見渡した。

 複数のオオカミが、彼の周りを取り囲んだのだ!

 そしてオオカミは、一斉にファングに向かって襲い掛かる!


 その瞬間!

 ファングが、胸の前で拳を合わせた!


「ウオオオオオオオオン!!」


 鋭い鳴き声と同時に、周囲に衝撃波が走った!

 ファングが、獣人化したのだ!

 鳴き声は空気を震わせ、ファングを取り囲んでいたオオカミ達は怯む。

 次の瞬間!


 銀色の嵐が、オオカミ達を次々と薙ぎ倒した!

 ファングが、舞うように大暴れしたのだ!

 オオカミ達は、吹き飛ばされて絶壁に衝突!


 キャン!


 全てのオオカミが、一瞬にして倒された。

 しかし……。


 ピイイイイイイイイイイッ!


 突如、トリ型の魔物が飛来する!

 トリは既に、ファングのすぐ背後まで迫っていた!

 咄嗟に、ファングが振り返る。

 すると!


 ドーーーーン!


 突然トリが爆発して、吹き飛ばされた!

 ファングは、周囲を確認する。

 すると絶壁の穴の中から、ロゼッタとカミーリャが接近して来るのが見えた。

 今の爆発は、ロゼッタの魔法らしい。

 彼女は手に、サニーを握っていた。


「ファング! 危なかったな!」

「ハッ! てめぇに獲物を取られちまったぜ!」


 ファングは、笑みを受けべて答えた。

 しかし、すぐに真剣な表情になる。


 再び周囲を、魔物が取り囲んだのだ。

 三人は、戦闘態勢を取った。


 広場には次から次へと、魔物が押し寄せてくる。

 ヤマネコの迎撃部隊が迎え撃っているが、多勢に無勢だ。

 ロゼッタは考えた。

 この魔物を召喚している人物を叩かなくては、いくら戦ってもキリが無い。


 彼女は、この状況を打破する方法を考えた。

 すると、突然!


「ハーハッハッハッハッハッ!」


 周囲に、笑い声が響き渡った。

 同時に、広場の魔物が大人しくなる。

 ロゼッタ達は、驚いて周りを確認した。

 すると……。


 広場への入口の方から、赤い衣を着た魔術師の大集団が入って来た。

 その先頭には、ヤギの頭蓋骨を被った男の姿がある。

 ハウンドが、やって来たのだ。

 彼は、追い詰められたロゼッタ達を見てニヤリと笑った。


「やあ、君たち! 会いにきたよ!」


 ロゼッタ達は警戒する。

 するとハウンドが、ファングに向けて声を掛けた。


「君達、上に物騒な物を送っているみたいじゃ無いか!」

「あ?」


 ファングは、少し驚いた。

 ヤマネコは世界樹の頂上へ密かに火炎石を送っていたが、今までバレていないと思っていたのだ。

 しかし、ハウンドはその存在に気づいているらしい。


 ロゼッタは、ハウンドにテディを奪われた時の事を思い出していた。

 恐らくハウンドは、テディの記憶を盗み見て、全ての事情を把握したのだろう。

 だがそうだとしたら、このアジトの位置がバレたのは何故なのだろうか?


 ロゼッタが考えていると、ハウンドが続けた。


「王都で君達の友達に遭遇してね、彼らの頭の中を覗かせてもらったよ!」

「なに!?」

 

 ファングは、それを聞いて驚いた。

 するとハウンドは、ロゼッタの顔を見て微笑み掛けた。


「私もパペッティアだからね! 糸を使って相手の記憶を読むなんて、容易いことだっ!」

「……」

「だがこれは本来、魔具やドールに対して使う魔法。人間に使ったら……」


 突然ハウンドは、不気味にニヤリと笑った。

 そして言い放った!


「死んでしまった! 悪いね!」

「てめぇえええええええええ!!」


 ファングは、激怒した。

 その様子を見て、ハウンドは喜んでいる。


「だが、大丈夫だ! 君達も直ぐに、彼らの元へ送ってあげよう!」


 ハウンドは言うと、部下に対して合図を出した。

 すると、彼の部下が一斉に動き出す!

 一人一人が高速で移動し、ロゼッタ達に向かってきた!

 魔術師の集団が、三人に接近する!

 次の瞬間!


 ドーーーーン!


 三人の目の前で、トラップ魔法が炸裂した!

 爆発に巻き込まれた魔術師達は、手足がバラバラになって飛び散る!

 爆発を回避した魔術師達は、爆炎の手前で立ち止まった。

 しかし……。


 バタッ! バタッ!


 彼らは、胴体が真っ二つになって倒れた!

 どこからともなく斬撃が飛んできて、彼らの胴体を斬り裂いたのだ!

 ハウンドは口角を下げて、その様子を見守っていた。


 すると爆煙が晴れ、一人の女が現れた。

 ブレイズだ。

 彼女は赤い瞳で、ハウンドを睨みつけた。

 

 その後ろでは、ロゼッタ達が攻撃態勢を取っている。

 その様子を見て、ハウンドは再び笑顔になった。


「やはり戦いは、こうでなくては!」


 ハウンドが叫ぶと、バラバラになった魔術師達の体が再び繋ぎ合わさった。

 そしてまた、ロゼッタ達に向き直る。


 すると、ブレイズが叫んだ!


「お前ら! ターゲットは、ハウンドだ!」


 ロゼッタ達は頷き、全員で一斉に駆け出した!

 彼女達を、ハウンドの部下が迎え撃つ!


 一人の魔術師が、先頭を走るブレイズに魔法を発射!

 しかし、ブレイズはそれを魔剣で薙ぎ払う!

 そして、攻撃してきた魔術師を真っ二つにした!


 すると彼女の後ろから、ファングが負けじと駆け出した!

 彼は、敵の魔術師を次から次へと鋭い爪で引き裂いていく!

 そんな彼の周辺を、ロゼッタの四体の魔具が飛行して援護した。


 そしてファングは、ハウンドの目前まで迫る!

 彼は、ハウンドに向かって鋭い爪を振りかぶった!

 しかし!


 彼の攻撃は外れた!

 突然ハウンドが、ファングの視界から消えたのだ。

 ファングは、驚きながら周囲を見渡す。

 しかし、ハウンドの姿はどこにもない。

 彼が困惑していると、後方からカミーリャが声を上げた!


「ファングさん!! 上です!!」


 それを聞いてファングが顔を上げる。

 すると、空から不気味な笑顔を浮かべたハウンドが急降下して来るのが見えた。

 ファングは、咄嗟に回避しようとするが間に合わない!


 ドーーーーーン!


 ファングは、後方へと弾き飛ばされた。

 すると、更に追撃があった!


 ドンッ! ドンッ! ドンッ! ドンッ!


 空中から、複数の魔法攻撃が地上へと降り注いだのだ!

 魔法は、ロゼッタ達を狙っている!

 するとロゼッタの目の前で、カミーリャが盾になった!

 カミーリャは腕を顔の前でクロスさせて、魔法障壁を発生させている!

 周囲には、魔法による爆発で砂埃が舞った!


 ロゼッタは、砂埃の中で空中に目を凝らした。

 やがて砂埃が晴れて、敵の姿が見えてくる。


 すると、少し離れたところで六人の人物が空中に浮いているのが見えた。

 一人はハウンドだが、後の五人は……。


 ロゼッタが考えていると、カミーリャが驚きの声を上げた!


「あれは!?」


 すると突然、ハウンドが言い放った。


「彼らは、私のお気に入りのメンバーだよ! 500年来、私に支えてくれている忠実な犬どもだ!」


 ロゼッタは、空中に浮く一人の男の顔を見た。

 彼女は、その男の顔をどこかで見た事があったのだ。

 確かこの顔は……。

 彼女が考えていると突然、脳裏に王都を脱出した時に乗ったゴーレムの姿がよぎった。

 そして彼女は驚きの表情で、呟いた。


「初代ウィザードの王……」


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