第五十九話 騎竜隊
ゴーレムは、王都と世界樹の間の草原を駆けていた。
もう目の前に、世界樹の入口が見える。
ゴーレムの肩に乗った三人は、安堵した。
すると突然……。
ピューーーーーー!
三人は、音に気づいて振り返る!
すると、背後に小さな火の玉が迫っていた!
それを見て、咄嗟にロゼッタが叫ぶ!
「テディ!!」
彼女が叫ぶと同時に、火の玉がゴーレムの首に直撃!
そして爆発した!
ドーーーーン!
しかし!
ゴーレムは無傷だ。
ゴーレムの首の手前で、テディが岩のシールドを展開していたのだ。
テディの目の前に、小さな岩が密集して攻撃を防いだ。
ファングが、後方を確認する。
すると後方に、竜に跨った騎士団が接近しているのが見えた。
彼らの先頭を、厳つい男が走っている。
王立魔法騎士団の、騎士団長だ。
それを見て、ファングが声を上げた。
「やべぇぞ! 騎竜隊だ!」
騎竜隊は、騎士団の主力部隊だ。
全員が竜に騎乗することを許された、エリート達。
そんな、強力な部隊がロゼッタ達の後方に迫っていた。
騎竜隊は走りながら、一斉に杖を構える!
そして、騎士団長が号令を出した!
「撃てっ!!」
号令と同時に、無数の火の玉が飛び立った!
火の玉は、ゴーレムに向かって降り注ぐ!
ピューーーーー! ドン! ドン! ドン!
着弾と同時に、爆発が発生!
ゴーレムは、火の玉が雨の如く降り注ぐ中を駆け抜けた!
ロゼッタは、ゴーレムを操作しながら後方にテディ、レイニー、サニー、ツイスターの四体を展開する!
そして、各々のシールドを張って攻撃を防いだ。
すると、カミーリャが冷静に告げる。
「正面の入口から入っている余裕はないですね……」
彼女は言うと、顔を上げた。
かなり上の方に、世界樹の大穴が見える。
それを見て、彼女はロゼッタと交信した。
「ロゼッタさん!」
「え!? 嘘だろ?」
カミーリャは、真剣な表情をしている。
ロゼッタは、彼女を信じて頷いた。
そして、ファングに声をかける。
「ファング! 直接、風神のテラスへ行くぞ!」
「はぁ!?」
ファングは驚きの表情で、一度世界樹の大穴を見た。
穴は、かなり高い所に見える。
あんな高い所に、どうやって行こうというのだ。
「おい赤毛! 今度は何するつもりだ! オッ」
ファングが言うと、突然ゴーレムが加速した!
ゴーレムは、全力疾走を始める!
すると、ロゼッタが叫んだ!
「掴まっておれ!!」
「うわあああああああ!!」
ファングは、振り落とされないようにゴーレムにしがみ付いた。
やがてゴーレムの速度が、最高潮に達する!
次の瞬間!
ゴーレムが、前方に大きくジャンプした!
高い!
巨大な岩の塊が、空高く飛び上がったのだ!
信じられない光景だ。
後方の騎竜隊も、一瞬どよめく!
そして……。
ドーーーーン!
ゴーレムは、世界樹の表面に張り付いた!
ファングと、地上の騎士達は唖然とする。
しかしゴーレムは、まだまだ止まらない。
今度は、世界樹の表面を登り始めた!
どんどんどんどん、大穴を目指して登っていく!
時々手が滑って落ちそうになるが、ゴーレムは体をミシミシと鳴らしながら踏ん張る。
恐らく、かなり無理をさせているのだろう。
ファングは、興奮気味に叫んだ!
「最高かよ! てめぇら頭がぶっ飛んでるぜ!」
ファングが喜んでいると、地表で騎士団が陣形を組み始めた。
そして、一斉に杖を構える!
ロゼッタは、一瞬下を見た。
「これは、マズい!」
この位置で魔法を撃たれたら、防ぎようがない!
急いで上へ登ろうにも、これでは間に合わない。
絶体絶命だ! どうする!
彼女が考えていると、カミーリャが突然立ち上がった。
そして、ロゼッタを見る。
「ロゼッタさん! 飛びましょう!」
「え?」
突然、ゴーレムの動きが止まった。
ファングが、それに驚く。
「あん? なんで止まった!」
「ファング! 大穴まで飛ぶぞ!」
「あ!? 飛ぶだぁ?」
ロゼッタは、カミーリャの背中に背負われていた。
カミーリャは、ファングの顔を見る。
「貴方も、ボクに掴まってください!」
「……」
ファングは、大穴を見上げた。
そして再びカミーリャを見て、ニヤリと笑う。
「舐めんなよ、女ぁ!」
彼はそう言うと、胸の前で拳を合わせた。
そして、叫ぶ!
「この程度の高さ! 自力で充分だぜ!!」
彼が叫ぶと、周囲に衝撃波が走った。
ファングの体毛が、一斉に伸びる!
そして……。
ウオオオオオオオオオオオオオン!
彼は銀色の狼男となって、世界樹の表皮を鋭い爪を使って駆け出した。
すると、遥か下の方から騎士団長の声が響く。
「撃てっ!!」
その号令と共に、一斉に火の玉が発射された!
カミーリャは、ロゼッタを見る。
「行きますよ!」
「頼む!」
突然カミーリャは、姿勢を低くしながら両手のひらを開いて下へ向けた。
すると彼女は、手のひらに魔力を集中させる。
次の瞬間!
驚くべき事が起こった!
カミーリャの手のひらから、勢いよく炎が噴射されたのだ!
炎の推進力で、カミーリャとロゼッタの体が浮き上がる!
そして、二人は一気に飛び立った!
下からは、無数の火の玉がゴーレムを襲う!
ドドドドドドドドドドーン!
ゴーレムは炎に包まれて、爆発!
その爆風を背中に受けながら、カミーリャは上昇する!
そしてなんと、大穴へと到着した。
ロゼッタとカミーリャは、勢い余って風神のテラスに投げ出される。
ロゼッタは、ゴロゴロと転がった。
そして、よろめきながら立ち上がった。
周囲には、王都で何かあったのを察した人々がテラスに集まっていた。
人々は、ロゼッタに注目する。
ロゼッタは、焦った。
早く、隠れなくては……。
彼女は、周囲を確認する。
すると、すぐ近くでカミーリャが倒れているのを発見した。
彼女は、倒れたままピクリとも動かない。
ロゼッタはそれを見て、駆け寄った。
「カミーリャ!」
ロゼッタは、カミーリャを揺さぶる。
しかし、彼女は目を覚さない。
そこへ、ファングが駆け寄った。
彼は、動かなくなったカミーリャを担ぎ上げる。
「おい赤毛! ひとまず、どっかに隠れるぞ!」
ロゼッタは頷いた。
そして、二人は駆け出した。




