第五十八話 正面突破
ロゼッタ達は、ゴーレムの肩へと登った。
ロゼッタは遥か下に見える地面を見て、脚がすくむ。
このゴーレム、思った以上に大きい。
ファングはゴーレムの左肩に乗り、世界樹の方向を眺めていた。
城を取り囲む城壁の外に城下街があり、更にその城下街を巨大な城壁が囲ってる。
世界樹に辿り着くためには、この二重の城壁を突破しなければならない。
ロゼッタは、ゴーレムの右肩に乗った。
その隣には、カミーリャが寄り添う。
カミーリャは、ロゼッタの目を見て告げた。
「ロゼッタさん、行きましょう!」
ロゼッタは頷く。
そして魔力の糸を伸ばして、ゴーレムに接続する。
すると糸を通じて、ロゼッタの頭の中にゴーレムの操作方法が入ってくる。
ロゼッタは、それを瞬時に解析した。
そして彼女は、叫んだ!
「行け! ゴーレム!」
彼女が叫ぶと突然、ゴーレムが揺れ出した!
三人は、驚く。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ
これは恐らく、起動音だ!
ゴーレムの中で、何かが動いている。
すると、次の瞬間!
ドンッ!
ゴーレムが、ゆっくりと片足を踏み出した!
「おお!」
三人は、再び驚いた。
城を取り囲む城壁の上では、兵士達が慌ただしく駆け回っていた。
一人の兵士が、王城の方を指差して叫ぶ!
「なんだ、あれはっ!!」
彼らの目の前には、フラフラと揺れながら歩く巨大なゴーレムが迫っていた。
ゴーレムは、右に左に揺れている。
そんなゴーレムの左肩から、ファングが叫んだ!
「おい! 下手クソかよ! 真っ直ぐ歩け!」
「うるさい! 意外と操作が難しいのだ!」
ロゼッタが叫ぶと、カミーリャが声を掛けてきた。
「ロゼッタさん! ボクの体にも糸を繋いでください! サポートします!」
ロゼッタは、突然の提案に驚いた。
しかし、言われるがままにカミーリャに糸を繋ぐ。
すると突然、カミーリャから莫大な情報が体に流れ込んで来た!
ロゼッタは一瞬驚く。
彼女の体を経由して、カミーリャがゴーレムに指令を出しているのが分かった。
なんだか、凄く不思議な感覚だ。
何となく、くすぐったさと少しの恥ずかしさを感る。
するとカミーリャのサポートのお陰か、急にゴーレムの動きが安定し出した。
ゴーレムは、真っ直ぐと城門へ向かって歩き始める。
ドンッ ドンッ ドンッ!
ゴーレムが歩くたびに、大地が揺れた。
城門の上では、兵士達が陣形を組み始める。
複数の兵士が、ゴーレムに向けて杖を向けている!
それを見て、ファングが叫んだ!
「やっべぇぞ!! どうすんだ!!」
カミーリャは、真剣な表情で城門を見つめた。
そして、ロゼッタに声をかける。
「ロゼッタさん!」
「分かった!」
彼女達は、糸を通じて意思疎通をしていた。
その為、会話は最小限で済む。
彼女達が言葉を交わすと、突然ゴーレムが顔の前で腕をクロスさせた。
そして、腕に膨大な魔力が集まる!
その様子を見て、城壁の上から号令が掛かった!
「撃てっ!!」
号令と同時に、兵士たちが魔法を一斉発射!
ゴーレムの正面で、複数の魔法が炸裂した!
ドドドドドドドッ!
物凄い弾幕だ!
しかし……。
「な、なんと!」
兵士達がどよめいた。
ゴーレムは体の正面に魔法障壁を張り、無傷のまま前進して来ている!
すると突然、ロゼッタが叫んだ!
「いっけええええええええ!!」
彼女の叫び声と共に、ゴーレムが駆け出す!
巨大なゴーレムが、スピードを上げた!
城壁の上の兵士達は、慌てて横へ回避行動を取る。
すると、次の瞬間!
ドーーーーン!
ゴーレムが、正面の城壁を破壊して突破した!
周囲には轟音が響き、城壁の岩が飛び散る。
しかし、ゴーレムは無傷だ。
突然、ファングが笑った。
「ハッ! 最高じゃねぇか! このまま、街の外まで行くぞ!」
目の前には、大通りが見えた。
大通りでは、ゴーレムに気づいた人々が悲鳴をあげている。
人々はパニックになり、慌てふためいていた。
ファングは勢いで突破しようとしている様子だが、ロゼッタは街の人々を傷つけないように慎重にゴーレムを操作した。
ドンッ ドンッ ドンッ!
ゴーレムは、大通りをゆっくりと進む。
すると、ファングが急かした。
「おい! チンタラしてると、追手が来るぞ!」
「少し静かにしていろ! 安全第一だ!」
彼女達がそんな会話をしていると、後方から赤い光が発せられた。
三人は驚いて、後方を確認する。
すると王城の正面で、騎士団が連携魔法の準備をしていた。
これは、マズい!
背後から、撃たれたら一溜まりもない!
その様子を見てファングが、叫ぶ!
「だから言ったろ!! 今すぐ走れ!!」
しかし、もう間に合わない!
騎士団は、ロゼッタ達に照準を合わせていた。
連携魔法は、既に発動寸前だ!
すると、その時!
街の至る所から、青い光が発せられた。
同時に、ロゼッタ達の後方で霧が発生。
急に、騎士団の周囲が濃い霧に包まれた。
彼らは霧に視界を阻まれて、動揺する。
連携魔法を撃つことができない!
ファングは一瞬驚いたが、すぐにニヤリと笑った。
「助かったぜ! アルバート爺さん!」
この霧は、街に潜伏していたアルバート率いるヤマネコのメンバー達が発生させたものだ。
お陰で、ロゼッタ達は安全に逃げられる。
しかし……。
今度は、街を囲む城門で動きがあった。
普段開けっぱなしの城門が、ゆっくりと閉まっていく。
巨大な金属製の扉が、彼女達の行く手を阻んだ。
ロゼッタとファングは、動揺する。
ファングが、慌てて叫んだ!
「おいおい! あんなん、突破できんのかよ!」
「少なくとも、体当たりでは無理だ!」
ロゼッタは、無理だと判断した。
彼女は、どうして良いかが分からない。
すると、カミーリャが冷静に声を掛けて来た。
「ロゼッタさん、落ち着いて! ゴーレムのリミッターを、解除してください!」
「リミッター?」
ロゼッタは、魔力の糸でゴーレムの中を探る。
すると、能力に制限がかかっている箇所を見つけた。
どうやら安全装置が、ゴーレムの一部能力を封じているらしい。
ロゼッタは、言われるがままにその安全装置を解除した。
すると……。
「な、何だこれ!」
ロゼッタは、ゴーレムの隠された能力に驚く。
カミーリャは、動揺するロゼッタに対して冷静に告げた。
「街に被害が出ないように、威力を絞って発動させましょう!」
ロゼッタと、カミーリャは一度ゴーレムの足を止めた。
ファングが、不安そうな顔をする。
「おいおい、何するつもりだ?」
彼が言うと、突然ゴーレムの口がガクッと開いた!
ゴーレムは、姿勢を低くする。
そして、口元に膨大なエネルギーを溜め始めた!
それを、ファングが、驚きの表情で見つめる。
「おい、これって!」
「撃てっ!!」
ロゼッタが、叫んだ!
すると、ゴーレムが口から巨大な魔法弾を発射!
魔法弾は城門へ真っ直ぐと飛び、衝突し爆発した!
ドーーーン!
金属製の扉が、剥がれて街の外へと倒される!
威力を絞った魔法弾で、これだけの破壊力があるのだ。
フルパワーを出したら、連携魔法よりも強いかもしれない。
門の破壊を確認すると、ゴーレムは一目散に街の外へと駆け出した。
正面突破は成功だ!
世界樹は、すぐ目の前に迫っている。
大通りでは先ほど霧を発生させていたヤマネコのメンバー達が、走り去るゴーレムの背中を見送っていた。
彼らは無事に逃げ去るロゼッタ達の姿を見て安堵し、霧魔法を解除した。
そして、お互いに目を見合わせる。
「よし、任務完了だ。退却するぞ!」
「おう!」
彼らが、言った瞬間!
どこからともなく、男の声がした。
「やあやあ! 随分、楽しそうだね!」
ヤマネコのメンバーは、その声に驚いて声の主を振り返る。
すると、そこにはハウンドがいた。
彼はニヤリと笑って、ヤマネコのメンバーに声を掛けた。
「是非、私も混ぜてくれないかな?」




