第五十三話 戦争
500数十年前、人類は地上の少ない資源を巡って争っていた。
水、食料、魔法資源。
人類はそれらの限られた資源を奪い合い、血を流していたのだ。
最初は、土地を巡る小さないざこざから始まった。
しかしそれが、やがて部族同士の大規模な戦争へと発展していった。
戦争は長引き、各々の部族は魔法による独自の戦闘能力を磨いた。
それによって、戦争の悲惨さは徐々に増していく事となった。
やがてこの戦争の中で、圧倒的な力を持った二つの集団が現れた。
一つは、ウィザードと呼ばれる集団。
彼らは、魔法の杖を使用した戦いを得意とした。
彼らの遠距離攻撃魔法に対して、旧来の近接戦闘武器、投石機や弓などの遠距離攻撃武器は無力だった。
ウィザードは同族で連携し、次々に他の部族を征服していった。
彼らはその圧倒的な人口と、同族同士の繋がりを武器として一大勢力を築いたのだ。
その為、世界の全てをウィザードが支配するのは時間の問題だった。
しかし……。
突如、彼らの力に対抗する集団が現れたのだ。
それが、パペッティアだった。
パペッティアは強力な魔具を操り、ウィザードの進行に抵抗した。
彼らの機動力、そして破壊力は凄まじかった。
それまで連戦連勝だったウィザードはパペッティアの抵抗により、遂に足止めを食らうこととなった。
数では圧倒的に劣っていたパペッティアだが、彼らは知恵を使って果敢に戦ったのだ。
そんなパペッティアの姿を見て、辺境に追いやられていた他の部族も再び立ち上がった。
獣人族や魔剣士などの部族が、パペッティアの元に集結した。
そして彼らは、同盟を結んだ。
彼ら少数民族はパペッティアを盟主とした同盟軍を作り上げ、ウィザードの勢力と拮抗する。
これによって世界は、二つの集団に二分された。
ウィザードと、それに抵抗する同盟軍だ。
同盟軍はウィザードに支配された地域を次々と奪還し、ウィザードを大陸中央の平野まで追い返した。
そして、両者はこの平野で睨み合いとなった。
ウィザードも、これ以上後方へは引くことができない。
両陣営は、お互いに全ての戦力をこの平野に集めた。
この地で、最終決戦を行おうとしたのだ。
広大な平野の両端に、ウィザードと同盟軍の拠点が築かれた。
両陣営は何万もの兵士を展開し、お互いに睨み合う。
お互いの陣営からは、荒くれ者達の雄叫びが響いていた。
すると突然、パペッティアの部隊から声が上がった。
「ドール強襲部隊! 我々が、突破口を開くぞ! 突撃せよ!!」
「うおおおおおおおお!!」
平野に、叫び声が響いた!
同時に、同盟軍の陣営から角笛が鳴る。
ブオオオオオオオオオオ!
すると、パペッティアの部隊が動き出した。
無数の軍勢が、ウィザード軍に向けて走り出す!
その大多数が、人型のドールだった。
硬い素材で造られた、戦闘特化型の等身大の人形たちが平野を駆け抜ける!
それを、ウィザード軍が迎え撃った!
「撃てっ!!」
命令と同時に、魔法の曲射攻撃が行われた!
上空を無数の火の玉が、弧を描いて飛んでいく。
ピューーーーーーー! ドンッ!
火の玉は、平野を駆けるドール部隊に降り注いだ!
そして、爆発!
周囲には爆煙と共に、粉々に破壊されたドールの残骸が飛び散った!
しかし……。
「うおおおおおおおおおおお!」
爆煙の中から、次々にドールが飛び出して来る!
ウィザード軍に一瞬、動揺が走った。
その様子を見て、同盟軍側から声が上がる。
「我々も、パペッティアに続け!!」
「おおおおおおおおおおおお!!」
魔剣を携えた部隊が、一斉に前進を始めた。
すると更に、同盟軍の他の部隊も勢いに乗って動き出す。
ウィザード軍は隊列を組み、杖を水平に構えた。
すると、指揮官が叫び声を上げる。
「撃てっ!! 蛮族どもを消し炭にせよ!!」
「おおおおおおおおおおお!!」
ウィザード軍は、迫り来るドール部隊に対して魔法を一斉掃射!
ドドドドドドドドッ!
戦場には、魔法の爆発音が響いた!
弾幕の中を、ドール部隊が駆け抜ける!
ドール達は、腕や脚を失いながらも猪突猛進した!
一方、ウィザード軍の後方では連携魔法の準備が行われていた。
ウィザード軍後方で、次々に赤い光が輝き出す。
三つの部隊から同時に、連携魔法が発射されようとしていた。
そこへ!
ピイイイイイイイイイイッ!
ウィザード軍の兵士が、空を指差した。
「獣人だあああああ!!」
どこからともなく、鳥型の獣人部隊が飛来した!
連携魔法の準備をしていた二つの部隊は、魔法の詠唱を中断して獣人の迎撃を行う。
空中にも次々と、弾幕が張られた。
戦場の至る所で、魔法の爆発音が響き渡る!
その間に、ドール部隊はウィザード軍と接触!
激しい、白兵戦が行われていた。
戦闘は、泥沼化する。
その時、ウィザード軍後方の一部隊が連携魔法を発射!
巨大な火の玉が、轟音をとどろかせながら平野の中央へと飛んで行った。
平野の中央には、ドール部隊に続いていた他の部族の部隊がいた。
彼らは、接近してくる巨大な火の玉を見てどよめく。
すると突然、彼らの後方から大地を揺らすような大きな音が鳴り響いた。
ドン! ドン! ドン!
彼らが振り返ると、巨大な人型の石像が数体、彼らの元へと走って来るのが見えた。
石像は、見上げるほどに大きかった。
石像の肩には、パペッティアが乗っている。
平野の中央にいた部隊は、走る石像に道を開けた。
石像達は、平野中央で立ち止まる。
正面からは、巨大な火の玉が接近していた。
突然、肩に乗っていたパペッティアの一人が叫んだ。
「ゴーレム部隊!! シールド展開!!」
その叫び声と同時に、石像達は両手を前へ掲げた。
石像の手に、凄まじい魔力が集まる。
すると突然、石像の前方に巨大な魔法障壁が張られた。
複数の魔法障壁が、火の玉を正面から受け止める!
ドーーーーーーーーーーン!
火の玉は魔法障壁に衝突!
そして、大爆発を起こした!
両陣営に、衝撃波が届く。
平野の中央には、爆煙が漂っていた。
その爆煙の中には、複数の石像が無傷で立っている。
その光景を見て、同盟軍から歓声が上がった!
「うおおおおおおおおおおお!!」
同盟軍の士気は高まり、全軍一斉に前進を始めた!




