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第四十七話 最後の食事

 これは、非常にマズい状況だ!

 よりにもよって、大魔道士にワンの姿を見られてしまった。

 ロゼッタがパペッティアである事が、彼女にバレてしまったのだ。

 このままでは、消し炭にされてしまう!


 二人が動揺していると、突然……。


 ギュウウウウウウ〜。


 どこからともなく、音がした。

 恐らく、大魔道士からだ。

 大魔道士は、急に視線を逸らした。

 何やら、恥ずかしがっている様子だ。


 ワンが、唖然として呟く。


「え? 姉ちゃん……腹減ってんの?」


 大魔道士は、無言のまま立ち尽くしている。

 ロゼッタとワンは、目を見合わせた。

 大魔道士から敵意を感じない。

 どうやら彼女は、ロゼッタの素性になど興味がない様子だ。


 ワンはそうとわかると、急に調子に乗り出した。


「よお、ロゼッタ! この姉ちゃんに、食い物を分けてやろうぜ!」

「……わたし、食料を持ってないぞ」

「なぬ!?」


 大魔道士が、無言で二人を見つめる。

 ワンは、考えた。


「そういえばさっき、魔物の気配がした通路があったよな。あそこに行ってみようぜ!」

「魔物を食べるのか?」

「食えそうなヤツが、いてくれれば良いがな!」


 ロゼッタは、大魔道士に声をかけた。


「あの! あちらに食料が歩いているかもしれません! 行きましょう!」

「おうおう、陰気な姉ちゃんも付いて来てくれよな!」


 大魔道士は無表情のまま、二人を見つめている。

 ちゃんと、言葉が通じているのだろうか?

 二人は不安になった。

 しかし、ここはとりあえず行動するしかない。


 二人は、魔物の気配がした通路へと歩き出した。

 そして、二人は振り返る。

 すると彼女達の後ろに、大魔道士が付いて来ていた。

 どうやら、一緒に行動してくれるらしい。


 ロゼッタとワンは、安心した。

 しかし、同時に変な緊張感もあった。

 彼女達は、かなりの大物を引き連れて歩いていたのだ。

 なんだか、とても不思議な感覚がした。




 二人と一匹は、魔物の気配がする通路へと到着した。

 奥の暗闇から、唸り声がする。


 ガウウウウウウウウウ


 闇の中から、緑色の腕が出てきた。

 そして、魔物が姿を現す。

 どうやら正体は、巨大なトカゲらしい。


 人より、二回りくらい大きいサイズだ。

 しかし、魔物にしては大して大きくもない。


 ワンが腕組みをして、魔物の前に立った。

 彼は脳内で考えた。


(美人な姉ちゃんに、かっこいいとこ見せなきゃ!)


(聞こえてるぞ……)


 ロゼッタが、冷ややかな視線でワンを見た。

 ワンは、気にせず魔物と対峙する。


「狭い通路では、小回りの効く俺様の方が有利だぜ!」


 ワンが言った瞬間!

 トカゲが、突撃してきた!


「嘘っ!? 動き速っ!」


 トカゲは、予想以上の速さでワンを襲った!

 トカゲが、ワンに噛み付く!

 しかし突然……ワンが消えた。

 トカゲは、何もいない空間を噛む。


「ビビったぜ! しかし、スピードなら俺様の方が何倍も速いわ!!」


 困惑するトカゲの周囲を、ワンが高速で飛び回る!

 右に左に、縦横無尽に飛び回り、トカゲの全身に攻撃を打ち込んだ!


 トカゲは、その場から動けない。

 ロゼッタは一応、ワンに声を掛けた。


「手伝うか?」

「こんなヤツ、俺様一人で十分でぃ!」


 ロゼッタの後ろでは、大魔道士が様子を見ていた。

 彼女は、相変わらず無表情だ。

 ワンが、トカゲを一方的にボコボコにする。

 しかし、トカゲの鱗が硬いのか、中々トカゲは倒れない。


 ロゼッタが見かねて、テディを取り出した。


「えい!」


 彼女は、トカゲに向かってテディを投げつける!

 するとテディが、トカゲの脳天に直撃した!

 トカゲは、そのまま即死してしまった。




 ロゼッタは、燃えるサニーの上にフライパンをかざし、トカゲの肉を焼いた。

 ワンは、少し不機嫌そうだ。


「俺様一人でも、倒せたのに……」

「悪かった……機嫌を直してくれ」


 ロゼッタは、丁寧に捌いたトカゲの肉をカリカリに焼き上げた。


「トカゲの肉っておいしいのか?」

「鶏肉の味がするって、精霊が言ってたぜ!」

「え!? 精霊って肉を食べるのか?」

「分からん……」


 二人の隣で、大魔道士が静かに座っている。

 彼女は、肉が焼き上がるのを待っていたのだ。


 ロゼッタは自分の食器に肉を乗せて、大魔道士に差し出した。


「熱いから気をつけて食べてください……」

「……」


 大魔道士は静かに食器を受け取り、肉をかじった。

 彼女は無言で、肉をかじり続ける。

 すると突然……。


「おいしい……」


 大魔道士が言葉を発した!

 ロゼッタとワンは、驚いた。

 そして、二人は笑顔で顔を見合わる。

 ロゼッタが、大魔道士に声を掛けた。


「大魔道士様の口に合って、よかった!」

「……私は……」

「?」


 大魔道士が、何か言おうとしている。

 ロゼッタは、静かに耳を傾けた。


「……私の名前はフレイヤ。……食事の提供に感謝します」

「!」


 ロゼッタは突然の自己紹介に、驚いた。

 しかし、ハッとして返事をする。


「わたしは、ロゼッタと言います。こっちはワンです」

「ロゼッタ……ワン……」


 フレイヤは、再び食事を続けた。

 ロゼッタも嬉しくなって、肉にかぶりつく。

 するとまた、フレイヤが口を開いた。


「きっと、これが最後の食事になるでしょう」

「え……?」


 ロゼッタが困惑した表情で、フレイヤを見る。

 フレイヤは無表情で、肉をかじっていた。

 ロゼッタは、恐る恐るフレイヤに尋ねる。


「あの……それってどう言う……」


 彼女が、言いかけた瞬間!


 ゴオオオオオオオオオ!


 近くで、石の壁が動いた音がした。

 彼女達は、音のした方向に視線をやる。


 すると、すぐ近くに新たな入口が出現していた。

 二人と一匹は荷物をまとめて立ち上がり、入口に近づく。

 どうやら、先には大きな部屋がある様子だ。


 彼女達は、同時に部屋に踏み入った。


 ドンッ!


 今入ってきた入口が、石の壁で塞がれる。

 彼女達は、周囲を確認してみた。

 しかし、特に何もない様子だ。

 ただの、正方形の部屋だ。


 彼女達が一通り部屋を見渡すと、突然!


 部屋の中央に、フードで顔を隠した人物が現れた。

 どこから現れたのだろう。

 急に、何もない空間から出現したように見えた。

 フードの人物の袖口からは、褐色の肌が覗いている。


「一応、最後に説得してみようと思ってね」


 若い女の声だ。

 女は言うと、静かにフードを脱いだ。

 隠されていた金色の短い髪が、あらわになる。

 そして女の赤い瞳が、フレイヤを鋭く睨みつけた。


「私の名は、ブレイズ。かつて、アンタの兄さんと旅をした者だ」


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