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第四十六話 石の通路


「一人ずつ、ゆっくりと前へ進むように!」


 洞窟の中に、男の声が響く。

 騎士の男が、岩の上から人々に声を掛けていた。

 遠征団の行列は、その声に合わせてゆっくりと前進して行く。


 ロゼッタ達は、行列の後方を歩いていた。

 少し前方に、ポータルが見える。

 既に、行列の半分以上がポータルに入っていった。


 やがて、彼女達はポータルの目の前に到着する。

 騎士の男が岩から降りて、彼女達に近付いて来た。


「さあ、君たちが最後だ。進みなさい」


 ロゼッタ達は、男に促されてポータルに触れる。

 すると、世界が歪んだ。

 毎度の如く、何処かへ連れて行かれる感覚。

 そして、視界が開けた。


 突然、湿った空気が肌に触れた。

 辺りは薄暗い。

 彼女達は、周囲を見渡した。


 右も左も、石の壁だ。

 ここは、洞窟なのだろうか?


 いや、よく見ると洞窟ではない。

 壁が、あまりにも平坦だ。

 まるで、人間によって加工されたように……。

 恐らくこれは、人工的に作られた空間だ。


 彼女達の到着した場所は、広い正方形の部屋だった。

 奥の壁には、四角い入口が空いているのが見える。

 どうやら、奥に通路が続いているらしい。

 しかし先ほどから、他に人の姿が見えない。

 他の遠征団の参加者は、どこへ行ってしまったのだろうか。


 ロゼッタ達が困惑していると、後方のポータルから騎士の男が一人現れた。

 男は、周囲を確認する。


「参ったな……早速、はぐれたか……」


 ロゼッタ達は振り返り、男に声を掛けた。


「あの……」

「君たち! 私に付いて来たまえ!」


 なんと、強引な男だ。

 男は言うと、奥の壁にある通路の入り口へと歩いて行った。

 男は、全く話を聞くつもりがない様子だ。


 ロゼッタ達はお互いに目を合わせて、仕方ないと言った感じで男の後に続いた。

 男が、通路に足を踏み入れる。

 ロゼッタ達も、通路に入ろうとした。

 その瞬間!


 ドンッ!


 突然、通路の天井から石の壁が降りてきた!

 入口が壁で塞がれて、ロゼッタ達と男は分断される。

 その直後。


「うわああああああああああ!」


 壁の向こうから、男の叫び声がした。

 男の身に、何かが起きたらしい。


 ロゼッタは、動揺した。


「いったい、何が起こったのだ!」


 クリフは、入口を塞いだ壁に触れてみる。

 そして、拳でコンコンと叩いてみた。

 随分、厚くて堅そうな壁である。

 クリフは、壁を確認し終わると二人の方を向いた。


「他にも、同じような仕掛けがあるかも知れない。みんな、なるべく固まって行動しよう!」


 彼が、言った瞬間。


 彼らの後方で、音が鳴った。


 ゴオオオオオオオオオオ!


 三人が振り返ると、先ほどまで壁だった場所に通路が現れていた。

 カトレアが、心配そうに呟く。


「何だか怖いわね……」

「うむ」


 ロゼッタも、少し怖がっている。

 すると彼女の荷物の中から、ワンが顔を覗かせた。


「おい、ここでじっとしていても仕方ないだろ。ゴーゴーゴー!」


 この先には、罠が仕掛けてあるかも知れない。

 しかし、ワンの言う通り、この場にいてもどうしようもない。

 彼女達は、意を決して後方に開いた通路へと向かった。


 三人は、固まって行動する。

 そして、全員同時に通路へと足を踏み入れた。

 少し、歩いてみる。

 すると……。


 ドンッ!


 先ほどと同じように、壁が落ちてきて入口が塞がれた。

 三人は入口を塞いだ壁を確認してから、通路の先を見てみる。

 薄暗い石の通路が、どこまでも続いている様子だ。


 クリフは荷物から、木の棒を取り出した。

 松明だ。

 それを、カトレアに差し出した。


「姉さん。これに火を付けてくれないか」

「了解よ」


 カトレアは松明を握り、先端に火を灯した。

 周囲は、うっすらと明るくなる。


 ロゼッタは、落ちてきた壁を調べていた。

 どういう仕組みで動いているのだろう。

 それが分かれば、攻略のヒントを得られるかも知れない。


 彼女は、入念に壁を調べる。

 その時!


 ズッ!


 突然ロゼッタは、体が宙に浮いたような感覚に襲われた。


「え?」


 彼女は気づいた!

 足元の床が消えている!

 彼女の真下には、真っ暗な空間が広がっていた。


「うわああああああああああああ!」


 彼女の叫び声で、クリフとカトレアが気づく。


「ロゼッタ!」

「ロゼッタちゃん!」


 ズッ!


 ロゼッタは穴へと落ちていき、直後その穴は閉じてしまった。


「うわあああああああああああああ!」


 彼女は、細長い石の通路を滑り落ちて行く。

 そして突然、空間が開けた。


 ドスンッ!


「いててててて……ハッ!」


 彼女は、尻餅をついた。

 ロゼッタは自分が落ちてきた天井を見上げる。

 しかし、既に穴は塞がっていた。

 彼女は、周囲を見渡す。

 どうやら、ここは先ほどの通路と似ているが、前後左右が全て壁で塞がれている。

 完全な密室だ。


 荷物から、ワンが飛び出してきた。


「マジかよ! 二人と、はぐれちまったぜ!」

「どうしよう……」


 ロゼッタは、途方に暮れた。

 落ち込む彼女に、ワンが声を掛ける。


「任せとけ! 俺様が付いてるんだからな。心配ご無用よ! それに……」


 ワンは、ロゼッタを指差した。


「まさか忘れたのか? お前は、パペッティアの力を持っているんだぜ!」




 ワンが、周囲の壁を注意深く調べながら歩く。


 突然、ワンがロゼッタに声をかけた。


「次は、ここだ!」


 ワンが言うと、ロゼッタは彼が指し示した壁の前へと進む。

 そして壁の前にそっと、サニーを設置した。


 彼女は、サニーに魔力の糸を繋ぎ、少し距離を取る。


「いくぞ!」


 ドーーーーーーン!


 彼女が言った瞬間、サニーの周辺で爆発が起こった。

 サニーの、火炎魔法によるものだ。


 爆煙が晴れると、先ほどまで壁だった場所に穴が開いていた。


「よし!」

「やりぃ!」


 ロゼッタとワンは、ハイタッチをした。

 穴の先には、新たな通路が続いている。

 彼女達は、先ほどから脆そうな壁を探して吹き飛ばしていたのだ。


「いいぞ、ロゼッタ! 次行くぞ、次!」

「了解だ!」


 ワンを先頭に、二人は通路を進む。

 突然、ワンが立ち止まった。


「おい、ロゼッタ! 次はここだ!」


 ワンが、壁を指差す。

 すると、次の瞬間!


 ゴオオオオオオオオオオ!


 彼が指差した壁が、天井へ持ち上がった。

 壁の向こうから、通路が現れる。


「あっ!」


 ロゼッタとワンの間に突然、緊張が走った。

 新たに開いた通路には、人が立っていたのだ。


 その人物は、凍えるような冷たい瞳でワンを見つめていた。

 二人は、大魔道士と遭遇してしまったのだ。

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