表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/94

第四十二話 闇の刻印


「ハーハッハッハッハ!」


 砂塵の中で、不気味な笑い声が響いていた。

 襲撃者の男は警戒する。

 男は杖を握りしめ、辺りを見回していた。

 先ほどから、前に後ろに気配を感じるのだが、気配の主は姿を現さない。


 突然、男は後方に殺気を感じた。

 振り返って杖を向ける。

 すると目の前から、ヤギの頭蓋骨が急接近して来た!


 男は魔法を放ったが、ヤギの頭蓋骨は横にフワリと回転して、攻撃を回避。

 ヤギの頭蓋骨と赤い衣が、男の横を通り抜けて行った。


 男はそれを追って振り返り、杖を構える。

 次の瞬間!


 男は突然、違和感を覚えた。

 杖が無い……いや、自分の手首から先がない。


「うわあああああああ!」


 男は、後退すると急に転んだ。

 自分の足首から先が、切断されていた!


 男は恐怖のあまり、声が出せなくなった。

 すると周囲の砂塵の中から、五人の赤い衣を着た人物が姿を現した。

 彼らは、怯える男をグルリと取り囲む。


 そして、ヤギの頭蓋骨を被った男が進み出てきた。

 ヘル・ハウンドだ。


「やあ、最後に言い残すことはあるかい?」


 彼は笑顔で質問した。


 男は怯えながら叫ぶ。


「クソッタレえええええ!!」


 ハウンドは、笑みを浮かべながら返した。


「さらばだ!」


 彼が、男に杖を向けた瞬間!


「ん?」


 ハウンドは、急に殺気を感じた。

 突然、砂塵の中に横一直線の赤い光が走る!

 そしてハウンドの部下の一人が、パタリと倒れた。

 彼の胴体は、真っ二つに切り裂かれている。


 ハウンドと残された彼の部下達は、少し後退して様子を伺った。

 すると、そこには一人のフードを被った女の姿があった。

 手には赤く発光する剣を携えており、袖口からは褐色の肌が覗く。

 彼女の赤い瞳が、ハウンドを睨みつけていた。


 ハウンドは、ニコリと笑う。


「おぉ! 魔剣じゃないか!」


 女は無言で、剣を振る!

 すると、剣から斬撃が飛び出した。

 速い!

 斬撃は空中を高速で飛び、ハウンドへと向かう!


 ハウンドは動じず、笑みを浮かべていた。

 突然、彼の目の前に部下が飛び出し、身代わりとなって斬撃を受けた。

 部下は攻撃を正面から喰らい、その場で倒れる。


 ハウンドは笑っていた。


「これは面白くなりそうだ!」


 ハウンドと残された二人の部下は、攻撃態勢をとった。

 そして、全員が手を上空へ掲げる。

 ハウンドが、女に告げた。


「我々も、魔剣で応じて差し上げよう!」


 彼が言うと、彼の手の中に突然、黒い魔剣が現れた。

 部下達の手にも、魔剣が現れる。

 女は身構えた。


 ハウンドは、ニコリと笑った。

 そして、女に向けて襲い掛かる!

 彼は風のように、女に突撃した。


 カキンッ!


 女の剣と、ハウンドの剣が撃ち合う!

 今度はその横から、ハウンドの部下が撃ち込む!


 女は一度後退して、攻撃を回避した。

 しかし、すかさず今度は別の部下が撃ち込む!

 ハウンド部隊の猛攻撃が、女を襲った。


 彼らは高速で移動し、女に一撃ずつ攻撃を浴びせて通り抜ける。

 女は、剣で攻撃をいなしながら回避した。


 ハウンド達は砂塵の中を移動して、姿を隠しながら戦う。


「ハーハッハッハッハッハ!」


 辺りには、ハウンドの不気味な笑い声が響いた。

 女は、身構えて周囲を警戒した。

 突然、背後からハウンドの部下が斬りかかる。


 女は、攻撃をいなした。

 そして彼女は、上を見上げる。


 今度は頭上から、ハウンドの別の部下が斬りかかる!

 彼女は、後退して回避した。


 彼女が睨みつけると、ハウンドの部下達は砂塵の中へと消えていった。

 彼女は、再び周囲を警戒する。

 そして突然、目を閉じて感覚を研ぎ澄ませた。

 周囲の細かい音を、聞き分けようとしたのだ。


 しかし、辺りは魔法の炸裂する音が響いていて、細かい音が中々聞き取れない。

 それでも、彼女は耳を澄ませた。

 そして、彼女は背後から何者かが迫る気配を感じ取った!


 気配は、急接近してくる!

 しかし彼女は落ち着いて、剣を握りしめた。

 そして、一気に振り返った。

 振り返りざまに斬り上げる!


 彼女は、接近して来たハウンドの部下の胴体を真っ二つにした。

 前方から、もう一人の部下が追い打ちをかけてくる!

 彼女は、流れるように剣を振るった。

 突撃して来る人物に、斬撃を飛ばす!

 そうして、追い打ちを掛けてきたもう一人も、真っ二つになった!


 突然、彼女は剣を胸元に水平に構えて、後ろを振り返った。

 目の前に、ハウンドが迫っていた。

 彼女は、全身の力を使ってハウンドの胸に剣を突き刺す!


 その瞬間、時が止まったような気がした。

 彼女の剣先に、ハウンドが刺さっている。

 ハウンドは、力なく項垂れた。

 

 しかし……。

 突然、彼はムクリと顔を上げて笑った。


「楽しかったぞ!」


 女は剣を引き抜き、ハウンドの胴体を斬りつける!

 ハウンドは、よろめきながら後退した。

 そして、声を上げて笑った。


「ハーハッハッハッハ! やっぱり戦いは最高だ!」


 彼の周りに、何か黒いものが浮いて集まってくる。

 どうやらそれは、周囲の死体から噴き出している様子だ。

 ハウンドは突然、女に対して手の甲を向けた。

 彼の手の甲には、黒い刻印が刻まれている。


「ご存知かな? これは私が開発した魔法だ!」


 突然、周囲の死体から大量の血が噴き出した!

 吹き出した血は、ハウンドの手の甲に集まって行く。


 女は周囲を警戒した。

 先ほど真っ二つにしたハウンドの部下達が、突然動き出したのだ。

 彼らは分断された胴体をくっつけて、起き上がった。

 こいつら不死身だ。


 ハウンドは、ニヤリと笑った。


「これが、闇の刻印の力だ!」


 彼が叫んだ途端、急に突風が吹いた。

 そして、それによって砂塵が晴れた。

 大魔道士が、魔法で砂塵を払ったのだ。


 砂塵で隠されていた戦場の様子が、あらわになる。

 崖の上からの、火の玉による攻撃も止まっている様子だ。


 大魔導士は、周囲を確認した。

 そして、杖を掲げる。

 すると、彼女の頭上に黒雲が現れた。

 黒雲の中では、紫の稲妻が輝いている。


 その禍々しい黒雲を見て、襲撃者達は怯えた。

 彼らは一目散に、戦場から逃げ出す。


 しかし、そんな彼らの背中を紫の稲妻が襲った!


 ドンッ! ドンッ! ドンッ! ドンッ!

 

 逃げ惑う人々に、次々と稲妻が命中!

 稲妻に撃たれた人々は、消し炭になっていく。

 彼らは完全に焼かれてしまって、姿形も残らない。

 周囲には、人々の悲鳴が響き渡った。


 すると、大魔道士のはるか後方から歓声が上がった。

 勝利を確信した冒険者達が、土砂を超えて乗り込んできたのだ。

 彼らは、雄叫びを上げて駆けつける。


「残党狩りじゃあああああ!」

「うおおおおおおおおおお!」


 冒険者の群勢が、逃げ惑う襲撃者達に魔法攻撃を放った。

 至る所で爆発が起こり、周囲には再び砂塵が舞う。

 冒険者達は構わず、砂塵に突き進んでいった。


 大魔導士は、無表情で掲げていた杖を下ろした。

 すると、その瞬間!


 砂塵の中から、黄色い光が大魔道士に急接近した!

 砂塵から、銀色の狼男が飛び出す!

 ファングだ。


「大魔道士! 討ち取った!!」


 彼は、そう言いながら鋭い爪で大魔道士に襲い掛かった!

 もう、魔法で防げる距離ではない。


 ファングが勝利を確信した、その瞬間!

 大魔道士の冷たい視線が、彼を睨みつけた。


「ウッ!」


 ファングは突然、全身が凍結してしまった。

 そして、地面へ転がった。


 大魔道士は、凍結した彼を見下ろし、杖を少し上げる。

 そして、杖の先で地面に突こうとした。

 その時。


「お待ちください!」


 砂塵の中から、ハウンドが戻ってきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ