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第二十七話 荒廃した街

 魔王教団による王都襲撃により、街は甚大な被害を受けた。

 多くの市民や騎士団の隊員が、犠牲となったのだ。

 魔王教団の目的は、魔王討伐を計画する王国に対する天誅であった。

 今まで教団の力を甘く見ていた王国は、事件を受けて魔王教団の取り締まりを一層強化する方針をとった。




 ––魔王教団の王都襲撃から数日後。


 国王は、人々の前で緊急の演説を行った。


「先日の悍ましい事件により、多くの市民が犠牲となった! 魔王教団は、我々の大遠征を阻止しようと計画していたが、我々は邪悪な者どもなどには屈したりはしない!」


「国王陛下万歳! 大魔道士様万歳!」


 群衆は口々に、国王と大魔道士を称えた。

 この中には、教団に家族を殺された者も多数いるのだ。

 彼らは教団を憎悪していた。

 そして一日でも早く、教団の信仰対象である魔王が討伐されることを望んでいた。

 大魔道士の大遠征は、彼らの希望だったのだ。


 群衆の中には、ロゼッタ達三人もいた。

 彼らは群衆を見渡した。

 涙を流す者、魔王教団への怒りを露わにして叫ぶ者、その場には様々な感情が渦巻いていた。


 三人は、その光景を目に焼き付けた。

 そして再び心に誓ったのだ。

 必ず魔王を倒すと。

 三人はその場を後にして、カミーリャ達の家へ戻った。




 皆、旅の準備はできていた。

 あとは出発するだけだ。

 そんな時、ロゼッタが声を上げた!


「え!? 一緒に行かないのか!」


 ロゼッタは、カミーリャを見ていた。

 カミーリャは笑顔で返す。


「はい。ボクはこの家を守らなければいけません。ハウスキーパーですので!」


 ロゼッタは残念そうにしていた。

 カミーリャは、そんなロゼッタに優しく声を掛ける。


「ボクはここで、皆さんの帰りをお待ちしていますよ。必ず帰ってきてくださいね」


 ロゼッタは、カミーリャを見てしっかりと頷いた。


「分かった。必ず帰って来るからな!」


 ワンが、ロゼッタの肩に飛び乗る。


「よっしゃ! それじゃあ、世界樹の頂上に向けて出発進行だぜ!」


 三人と一匹はカミーリャに手を振って、お別れをした。

 三人の背中が小さくなっていく。

 カミーリャは彼らの背中が見えなくなるまで、見送った。




 三人は大通りに出る。

 大通り周辺は、酷い有様だった。


 何やら男達が、若い男を囲んでいるのが見えた。


「俺は、こいつが魔王教団に手を貸しているのを見たぞ!」

「ち、違う! 俺は荷物を届けただけだ!」

「しらばっくれやがって!」

「やっちまえ!」


 男達は、囲んでいた若い男を殴り始めた。

 三人は状況が分からないので、手出しができない。

 可哀想だが、三人には何もできなかった。


 人々の心は荒廃していた。

 人を信じられなくなっていた。

 怒りと悲しみの矛先を探していた。

 そして、それが新たな闇を生んでいた。


 三人は荒廃した街を後にし、王都の城門を潜った。

 目の前には遂に、世界樹の入り口が見える。

 三人と一匹は今、様々な思いを抱え世界樹の入り口へと真っ直ぐと歩んでいた。


 背後には、そんな彼らの背中を見守る者がいた。

 白髪の老人が城門の下で、彼らを見つめて立っていた。


「パペッティア……」


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