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第二十二話 獣人化

 橋の中腹には、銀髪の男が立っていた。

 腕組みをして、何やら不敵な笑みを浮かべている。


 ロックウォール侯配下の兵士達が、前進して隊列を組んだ。

 そして、男に向かって一斉に杖を向ける。


 ロックウォール侯は、竜に跨ったまま男に叫びかけた。


「何者だ! この俺をアンドレ・ロックウォールと知っての狼藉か!」


 銀髪の男は、その黄色く輝く瞳でロックウォール侯を睨んだ。


「もちろん、知っての事だ。テメェが得意とするのは土魔法。橋の上ではテメェが不利だ」

「何っ!?」


 ロックウォール侯は、声を荒げた。


「者ども、攻撃せよ!」


 兵士たちが、杖に魔力を集中させた!

 その時。

 銀髪の男がニヤリと笑った。


 突然、ロックウォール侯と兵士たちの周りが赤い光に包まれる!

 どこから現れたのか、足元で巨大な文字が光っていた。


 ドオオオオオオオオン!


 橋の中腹で大きな爆発があった!

 ロゼッタ達は、何事かと警戒する。

 周りでは、冒険者や商人が慌てふためいていた。

 状況が分からない。

 いったい何が起こっているのだ!


 ロックウォール侯の乗っていた竜は倒れ、乗っていた本人も石畳の上に投げ出された。

 彼は周囲を確認する。

 爆煙で視界が悪い。

 兵士たちが負傷して、動けなくなっている。

 川に落下した者もいる様子だ。


 彼は杖を抜き、立ち上がった。


 その瞬間、煙の奥から黄色く輝く光が接近するのが見えた!

 光は、彼の背後へと抜けていく。


 次の瞬間!

 彼の右腕から、血飛沫が上がった!


「うおおおおおおお!」


 彼は、驚きの余り声を上げた。

 出血した、右腕を確認する。


 なんと、腕が無い!

 一瞬のうちに、何者かに切り取られたのだ!


 彼は咄嗟に、足元で倒れている兵士の手中から魔法の杖を拾い、左手で構えた。


 煙の中から、若い男の声が聞こえる。


「流石は天下のロックウォール侯。腕を落とされて尚、戦意を失わないとは大したもんだ」


 煙の中から、先ほどの銀髪の男が現れた。

 ロックウォール侯は、男を怒鳴りつける。


「貴様、何者だっ!」


 すると、銀髪の男は名乗った。


「俺の名はファング。覚えておけ、お前を殺す者の名だ」


 ファングはそう言うと、姿勢を低くし攻撃態勢をとった。

 しかし、どうした事だろう。

 彼は、魔法の杖を構えていない。

 いったい、どうやって攻撃するつもりだ!


 ロックウォール侯は、杖先に魔力を集中させた。

 そして、すかさず光り輝く光の球をファングに向けて発射する!


 彼は一瞬にして、岩石を作り出して高速で発射したのだ!

 岩石は、まるで拳のようだった。

 高速で飛ぶ岩石が当たれば、人間の体は消し飛んでしまうだろう。


 しかし、ファングは岩石をギリギリで回避!

 ロックウォール侯は次々に、岩石を発射する。

 岩石は雨あられと降り注ぐが、ファングはその隙間を縫って回避する。

 まるで、獣のような身のこなしだ!


 ファングは隙を見て、一気にロックウォール侯に詰め寄った!


 ロックウォール侯が一瞬怯む!

 しかし、彼は豪傑の意地を見せた。

 間近に迫ったファングの顔に、杖先を向けたのだ!

 標的を捉えた!

 この距離ならば、回避は不可能だ!


 彼は勝利を確信し、笑みを浮かべた。

 その時!


 突然、ファングの動きが加速した!

 これは、人間の動きではない。


 ロックウォール侯は一瞬の判断で攻撃を取りやめ、防御魔法に切り替えた。

 ファングの蹴りが、彼の左手に命中する!

 蹴られた左手には、激痛が走った。

 握っていた杖は弾かれて、橋の下へと落ちていった。


 彼は、悶絶していた。

 左手が激痛で、思うように動かせない。

 狼狽える彼の元に、ファングがゆっくりと近づい行く。


「終わりだ!」


 彼が、そう言った瞬間。

 煙の中から何者かの影が迫った!


「我が拳は鋼となる!」


 煙の中から、クリフが飛び出して来た!

 クリフの輝く拳が、ファング目掛けて襲い掛かる!

 ファングは一瞬、驚いた。

 しかし、すぐに攻撃に反応して回避。


 クリフは、ロックウォール侯に声を掛ける。


「ご無事ですか?」

「んお……」


 どうやら、彼は狼狽えている様子だ。


 駆けつけたクリフに対して、ファングが声を掛けてきた。


「テメェも格闘技を使うのか?」

「格闘技? 何のことだ!」

「テメェは冒険者だな。俺らの邪魔すると命はねぇぞ!」


 ファングはそう言うと、クリフに向かって突っ込んできた。

 速い!

 しかも、魔法の詠唱もしていない様子だ。

 魔法無しで、この身体能力なのか!


 クリフは、ファングの攻撃を腕で受けた!

 重い!

 何と重い一撃だ!

 魔法で腕を硬化していなかったら、そのまま切断されていたかも知れない。


 ファングは、猛攻を仕掛けてきた。

 パンチ! 次は、回し蹴り!

 クリフは、ギリギリで避ける!


「我が脚は疾風となる!」


 クリフは脚力を上げて、ファングの攻撃を回避する。

 しかし、ファングは追いかけて次々に攻撃を仕掛けてくる。


 パンチ、いやキック、動きが俊敏すぎて全く読めない。

 彼の攻撃はまるで、踊りでも踊っているかのように途切れずに続いた。


「ほら、ほら、どうした? 回避するだけか?」


 クリフは反撃に転じることが出来ない。


 そして、彼は油断した。

 足元に倒れていた兵士を踏んで、バランスを崩したのだ。

 ファングは、その隙を見逃さなかった。


「もらった!」

「!」


 ファングは、クリフの胴体に凄まじい蹴りを入れた!


「ゴホッ」


 クリフは後方へ吹き飛ばされる!


 ファングは息一つ乱さず、倒れたクリフを見た。

 クリフが立ち上がれないのを見届け、彼は再びロックウォール侯の方を振り向こうとした。


 その瞬間!

 彼を目掛けて、何かが高速で飛んで行く!

 飛翔体はファングの顔を目掛けて、一直線に突き進んだ!


 しかし彼はすぐにそれを察知して振り返り、飛翔体を素手で捕まえた。

 彼は、捕まえた飛翔体に目をやる。


「あん? 木の実?」


 彼がそう言った瞬間、木の実が突然ツタとなって彼に絡みついた!

 ファングは突然、ツタに縛られてしまい動揺した。


「なんだ!?」


 少し離れたところで、ロゼッタとカトレアがハイタッチをしていた。

 カトレアが、スリングショットで木の実を発射したのだ。

 二人の計画は大成功だった。


 二人は、クリフの元に駆け寄る。

 クリフは腹を摩りながら、ゆっくりと立ち上がった。

 ロゼッタが確認する。


「大丈夫なのか?」

「ああ、何とかな……」

「アイツは、いったいなんなのだ?」


 ロゼッタが、ファングを見た。

 すると、ファングは何やら力を溜めている様子だった。

 ファングを縛るツタが膨張して、はち切れそうになっている!

 ロゼッタが二人に警告する。


「なんか、ヤバいぞ!」


 ウォオオオオオオオオオオン!


 ファングが叫んだ!

 次の瞬間!

 

 ロゼッタは、信じられない光景に目を疑った。

 なんと、ツタを引き裂いて銀色のオオカミが現れたのだ!

 いや、あれはオオカミでは無い!

 狼人間だ!


 どういう魔法を使ったのだろう。

 銀髪の男が突然、獣人化してしまったのだ。


 三人は戦闘態勢を取った。

 狼人間からは、物凄い覇気を感じる。

 ロゼッタは、テディに手を伸ばしかけていた。

 すると……。


「ファング! いつまで遊んでいる!」


 突然、どこからか女の声がした。

 三人は声の主を探してみる。

 どうやら声は、ロックウォール侯のいる方向からだった。


 よく見ると、ロックウォール侯が先ほどから全く動いていない。

 三人が彼を凝視してみると、なんと恐ろしいことが起こっていた。

 彼の胸から、赤く輝く刃の先端が飛び出していたのだ。

 刃は、背中から貫通していた。


 何者かが彼の体に、剣を突き刺したのだ!

 剣は素早く引き抜かれ、ロックウォール侯は倒れた。

 彼の背後にいたのは、フードを深く被った女だった。

 手には、赤く発光する剣を携えている。

 女は言った。


「任務は完了した。帰るぞ!」


 獣人化したファングは、それを聞くと女の方へと後退していった。


 クリフが叫ぶ。


「おい! 待て!」


 女と狼人間はそのまま橋の縁から飛び降りて、姿を消してしまった。

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