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最弱魔術師のパペッティア  作者: がじゅまる
サブストーリー2
19/94

カトレアの囮捜査3

 どうやら、近くの村で魔物が出現したらしい。

 その対応に騎士団が出動したため、町の警備が手薄になっていると言うことだ。


 だから、ラーク達も緊急事態で混乱しているのかもしれない。

 彼らは朝まで持ち堪えろと言っていたが、出荷は今夜らしい。

 悠長に待っている時間はないのだ。


 カトレアは部屋の中を見渡した。

 ここは、地下室のようだった。

 天井が割と高い。

 部屋の中には、檻がいくつか置いてある。

 本来は恐らく、動物を入れるためのものだろう。

 しかし、今はそこに人間を閉じ込めていると言うわけだ。


 突然、階段の上から声がした。


「お前、先に行って明かりつけて来い!」

「う〜す!」


 誰かが、階段を降りて来る音がする。

 カトレアは咄嗟に、即席で考えた作戦を実行することにした。


 階段から細身の男が降りてきた。


「今回の商品は〜! デュルルルルッ!」


 男は、打楽器を叩く真似をしている。


「上玉の姉ちゃんです! いやぁ〜金がある奴は羨ましいねぇ〜」


 男は鼻歌を歌いながら魔法の杖を抜き、杖先に白い明かりを灯した。

 男は呑気に、カトレアが入っていた檻の前まで来る。

 そこで突然、違和感を感じた。

 人が入っていたはずの檻の中に、誰もいないのだ。


「あれぇ!?」


 男が声を出した瞬間!

 背後の闇の中から、手が伸びてきた。

 そして、女の声がささやく。


「ちょっと、叫んでちょうだいね!」

「え?」


 次の瞬間、男の体に電流が走った!


「うわあああああああああああ!!」


 男の叫び声が、邸宅に響き渡る!

 上の階で、人が走り回っている音がする。

 何か問題が起こったと察した者達が、続々と地下室に降りて来た。


 二人、いや三人か……。

 柄の悪い二人組の男を先頭に、先ほど裏口で会った小綺麗な男が降りてきた。


「何があった!」


 三人は杖を抜き、辺りを照らしてみる。

 彼らは部屋の中央で、細身の男が気を失って倒れているのを見つけた。

 三人は駆け寄って確認した。

 細身の男は泡を吹いて倒れている様子だ。


 すると突然彼らの足元に、ポトッ、ポトッと木の実のようなものが落ちてきた。

 男達は辺りを見渡したが、怪しいものは何もない。

 そこで、彼らは天井の方を照らしてみた。

 すると、そこには驚くべき光景があった。


「ハァーイ!」


 なんと! 天井に逆さまにぶら下がった女が、こちらに向かって手を振っていた!

 カトレアが天井に、魔法で張り付いていたのだ。


「うわぁあああ!」


 男達は腰を抜かした。

 次の瞬間!

 先ほどの木の実からツタが伸びて、男たちを絡め取ってしまった。


「なんだ!?」


 カトレアは軽やかに着地。

 そして、男達が落とした魔法の杖を奪った。


「これは没収です…………ついでに、これも没収です!」


 カトレアは、どこから拾ったのか小さな袋を持っていた。

 すると、ツタに絡まった柄の悪い男二人が叫ぶ!


「それは! 俺らの金! 返せ!」


 男達は脱出を試みるが、ツタは強く絡まるばかりだ。

 小綺麗な男は叫んだ。


「役立たず! 高い金を払ったのに!」


 カトレアは、そのまま階段を登っていった。

 上の階では、下働きの者達が杖を構えて待ち構えていた。

 その背後では、丸々と太った男が心配そうに様子を見ている。


 彼らが警戒する中、突然地下室の入り口から部屋の中に何か小さな物が投げ込まれた。

 皆は何事かと思って、凝視する。

 投げ込まれたものは、透き通った黄色い石だった。


 皆が首を傾げた、次の瞬間!

 石がピカッと発光した。

 物凄い光量だ!

 眩しい! 誰も目を開けていられない!


 丸々と太った男は、目がチカチカして、目の前が真っ白だった。

 何度も瞬きをしたり、目を擦ったりして回復を促す。


 そうしている内に、段々と目の前がハッキリと見えてきた。

 床には、男達が倒れ伏しているのが見える。

 そして、目の前には女が立っていた。

 カトレアだ。


 彼女は、男の脂肪でたるんだ顎にそっと手を添えた。

 そして、一言。


「悪い子は、眠る時間よ」


 太った男は、白目を剥いてパタリと倒れた。


 すると突然、近くのドアが開いて騎士団が乗り込んできた。

 騎士団は悲鳴を聞き、更に物凄い発光現象を目撃したため、止むに止まれず乗り込んできたのだ。

 カトレアは、呆れた様子で彼らを見た。


「あんた達、来れないって言ってたじゃない!」


 彼女が言うと、奥の方からラークが現れた。


「申し訳ございません。緊急事態が発生しまして、現場が混乱しておりました。お詫び申し上げます」

「まあ、いいわ。そうだ、もう一人の女の子を助けなくちゃ!」


 カトレアが再び地下に降りていくと、なんとツタに絡まった柄の悪い男二人がいなかった。

 小綺麗な男だけが取り残されていたのだ。

 金で雇った人間など薄情なものだ。


 カトレアは、檻の中の女の子を見た。

 衰弱しきっていて弱々しい。

 カトレアはすぐに檻を破壊し、彼女を出してあげた。


「もう、大丈夫よ!」

「ありがとう……」


 女の子は安心したのか、そのまま眠ってしまった。

 そして彼女は、駆けつけた騎士団によって搬送されていった。




 邸宅の始末をした後、カトレアとラークは騎士団の支部へと戻った。

 ラークは、カトレアに頭を下げる。


「カトレア様、今回の件は本当に何とお礼を申し上げて良いか」

「一時は、どうなるかと思ったわ! まあ無事に終わって何よりね」


 カトレアは、何やら考え事をしているようだった。


「搬送された子は大丈夫なの?」

「ええ、町の療養所に運びましたが、特に体に異常はないようです」

「あの……さ……」

「はい」

「私がもらう予定だった報酬、あるでしょ」

「はい……」


 ラークが不思議そうに見つめる中、カトレアは言い放った!


「あれ全部、あの子に寄付して!」


 なんと、カトレアは全額寄付を申し出た。

 あんな、怪しい求人を頼るような子なのだ。

 きっと生活に困っていたのだろう。


 ラークはそれを聞いて、爽やかな笑顔でカトレアの申し出を受け入れた。


「しかし、カトレア様はよろしいのですか? 何か別のお礼を……」

「いいの、いいの。こっちはこっちで、収穫があったから」

「?」


 カトレアはそう言うと、笑顔で部屋を後にした。

 そして、彼女はクリフと落ち合う約束をした酒場へと向かう。


「お腹減った〜、さぁ、宴だ、宴だ!」


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