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第十二話 レイニー

 刻印の男は杖の先から、連続で闇魔法を放った!

 ロゼッタは横に駆けて、それらを回避する!


 空中には、テディがいる。

 戦場を分析しながら、攻撃の隙をうかがっていた。


 ロゼッタは柱や長椅子に隠れながら、相手の攻撃を回避し続けた。

 刻印の男は、舌打ちをする。


「チッ! すばしっこい奴だな! おい! 召喚の準備できてるか!」


 男は今、召喚と言った。

 いったい、何をするつもりなんだ。


 刻印の男の後ろで、もう一人のローブの人物が天井に向けて杖を掲げていた。

 何やら、魔力を集中させている様子だ。

 これは、何か嫌な予感がする。

 早く、やめさせなくては!


 ロゼッタは魔力を集中させているローブの人物に狙いを定めて、テディを突撃させた!

 光り輝くテディが、ターゲットに向かって高速で突き進んでいく!


 衝突まであと少しかと思われた、その瞬間!

 ターゲットの目の前に突如として、巨大な魔物が現れた!

 頭は牛、体は人間の大男のような姿の魔物だ!


 ムオオオオオオオオオオオオオ!


 しかし、テディは勢いを落とさない!

 そのまま、魔物に突き進む!

 すると……。


 パシッ!


 なんと、テディが魔物に弾かれてしまった!

 硬化したテディを弾くとは、何という硬さだ!


「最高ぉぉおおおおおお!」


 刻印の男が叫んだ。


「ミノタウロス! あの小娘をぶっ潰せ!」

「まずい!」


 魔物が、ロゼッタに向かってくる。

 魔物が人間の指示に従っているというのか!


 巨大な魔物は腕力で、神殿の柱を破壊した!

 ロゼッタは、広い場所に回避する。

 刻印の男は、叫んだ。


「これが魔王教団の力だ! 魔王様万歳!」


 男の後ろでは、ローブの人物が再び魔力を集中させていた。

 まさか、更に魔物を召喚しようというのか!


 ロゼッタは一度撤退して、態勢を整えなければ勝ち目がないと悟った。

 しかし、出口は塞がれている。

 どうする!


 ミノタウロスが、再び突っ込んで来た!

 巨大な腕を振り上げ、地面に叩きつける!

 ロゼッタは回避するが、刻印の男が追い討ちで魔法攻撃を仕掛けて来た!

 ロゼッタが気づいた時には、闇魔法が彼女のすぐ目の前まで迫っていた!


 ドーーーン!


 闇魔法が、ロゼッタを直撃!

 したかのように見えた……。

 しかし、すんでのところでテディがガードしてくれていた!

 ロゼッタは無傷だったが、もう逃げ場がない。


 そうこうしている内に、追加の魔物の召喚が行われていた。

 そして今度は、オオカミのような魔物が現れた。それも複数である。

 オオカミはジリジリと、ロゼッタに近づいてくる。


 絶望的だった。これでは身動きが取れない。

 ロゼッタが追い詰めれた、その時!


「ねぇ、ちょっと失礼」


 入口の方で女性の声がした。

 それと同時に、先ほど魔物を召喚した人物が、無言でバタンと倒れてしまった。


 ロゼッタが入口に目をやると、そこにはクリフとカトレアの姿があった。


「ロゼッタ! 無事か! 助けに来たぞ!」


 クリフが叫ぶ!


「クリフ! 姉さん!」


 ロゼッタが答えた!


 刻印の男は、クリフ達の方を見てオオカミに指示を出す!


「ええい! お前ら! 食い殺せ!」


 それを聞いてカトレアが、何やらポーチから小さな丸いものを取り出した。

 木の実のようだ。


「ほーら、市場のお土産よ!」


 カトレアはそう言って、木の実をいくつかオオカミに放り投げた。

 すると、どうした事だろう!

 木の実は突然、ツタとなってオオカミに絡みついた!

 なんとカトレアは、木の実に魔力を流し込んで急成長させたのだ。


 それを見て、刻印の男は一瞬うろたえた。


「おかしな魔法を使いやがって! ムカつく! ムカつくぜ!」


 男は、ミノタウロスを呼び戻した。


「ミノタウロス! お前がこいつらをやれ、俺は最弱を殺す!」


 ミノタウロスは、クリフ達を目掛けて駆け出した!

 ミノタウロスの突進を、クリフが正面で受け止める!


「我が体は火炎を宿す!」


 クリフが唱えると、彼の体は蒸気を上げた!

 魔法で筋肉を増強したのだろうか、クリフは巨大なミノタウロスと筋力で拮抗している。

 ミノタウロスは、一歩も進めない。


「今だ! 姉さん!」

「任せて!」


 突然カトレアが、クリフの後ろから飛び出してミノタウロスに接触しようとした!

 しかし、ミノタウロスは危険を察知したらしく、後方に退いてしまう。

 クリフは早速、息が上がった。


「はあ……はあ……思ったよりも賢いやつだ……」


 そう言った直後、先ほどまでツタに絡まっていたオオカミ達が、風魔法を発動してツタを切り裂き脱出してしまった。

 カトレアは、冷静に状況を分析した。


「これ結構ヤバイかもね」


 一方、刻印の男はロゼッタを探していた。

 先ほど、ミノタウロスとバトンタッチした辺りから、ロゼッタの姿を見失ったのだ。

 男は、警戒しながら瓦礫や長椅子の裏を確認していた。

 しかし、ロゼッタの姿はどこにも見当たらない。


 当のロゼッタは、先ほど祭司が出てきた部屋にいた。

 この部屋に、何やらテディと共鳴する力を感じたのだ。

 きっとそれが、パペッティアの魔具に違いない。

 ロゼッタは、テディに念じた。その魔具を探し出してと。


 刻印の男は、先ほど祭司が出てきた部屋に目をつけた。

 もし隠れるとしたら、この部屋しかないだろう。


 男は警戒しながら、そっと部屋に入った。

 杖先をしっかり前へと向けて、いつでも魔法を撃てる態勢は整っている。

 部屋はとてもシンプルで、両脇の壁が本棚になっており正面に仕事用のデスクが置いてあるだけだ。

 隠れるとしたら、デスクの裏か。


 男はそっと、デスクに近づいていく。

 男がデスクまで、あと少しの位置まで近づいた時、気になるものが目に止まった。

 デスクの上に、妙なオブジェが置いてある。


「何だ? カエル?」


 男が、そう言った瞬間!

 突然、男は部屋の外へと吹き飛ばされた!

 男は、急に神殿の床に打ちつけられて動揺する。


「ゴホッゴホッ……何だこれ、びちょびちょじゃねぇか!」


 男の体は水で、ずぶ濡れだ。


「よお! ずぶ濡れ男!」


 ロゼッタが部屋から、ゆっくりと歩いて出てきた。

 そして言葉を続けた。


「わたしの、新しい相棒を紹介してやる!」


 空中に、先ほどデスクの上に置いてあったカエルのぬいぐるみが浮いていた。

 カエルのぬいぐるみは、キラキラと輝いている。


「レイニー!!」


 刻印の男は、すかさずロゼッタに杖を向ける!

 しかし、その杖は弾き飛ばされてしまった!

 レイニーと言う名のカエルが発射した、高水圧の水が男の杖を弾いたのだ。


「お、俺の杖!!」


 男は這いつくばって杖を拾いに行くが、空中からテディが急降下してきて杖をメチャメチャに砕いてしまった。


「あぁ!! 俺の杖がぁ!」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 下衆が執着している物品を砕かれる様は痛快ですね。とても面白かったです。戦闘も、動きにスピード感がある描写で楽しく読めました。 [一言] お人形に囲まれる、ツヨカワ少女のロゼッタちゃんは最高…
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