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第十一話 魔王教団

 ロゼッタは、ジージとの別れの挨拶を済ませ、療養所を出た。


 みんなと合流するまでに、まだ少し時間がありそうだ。

 そう思ったロゼッタは、神殿を訪れることにした。


 ジージは神殿の祭司が、パペッティアの魔具を持っていると言っていた。

 魔具とは、いったいなんなのだろうか?


 神殿は、町の中でも少し小高い丘の上に建てられていた。

 そのため、町のどこからでも良く目立って見える。

 その建物は、人々が世界樹の神々にお祈りするための場所だ。

 週末になると、祭司が世界樹にまつわるお話を聞かせてくれるので、人々は神殿に集まってそれをありがたく拝聴していた。


 しかし、それはロゼッタにとっては退屈以外の何物でもなかった。

 だから、彼女は今まで滅多なことでは神殿を訪れなかったのだ。


 今回、ロゼッタは久しぶりに神殿を訪れた。

 大きな石造りの建物は、外から見るだけでも神聖な感じがする。

 彼女は神殿正面の大きな木の扉を少しだけ開けて、顔を覗かせ、建物内に声をかけてみた。


「こんにちは……」


 中は、とても静かだ。

 どうやら今日は、誰もいないらしい。


 神殿の中には、中央の通路を挟んで両側に長椅子がずらりと並べてある。

 人々が、祭司のお話を聞く時に座るものだ。


 正面の壁には床から天井まで、びっしりと細密に描かれた巨大な世界樹の絵があった。

 ロゼッタは、この絵が好きだ。

 アカデミーの課外授業で連れてこられた時は、祭司の話をそっちのけで、この絵を眺めていたものだった。


 ロゼッタは、改めて世界樹の絵を近くで眺めてみる。

 この絵を見ていると、何だか心がワクワクする。

 自分達はこれから、この頂上を目指すのだ。

 彼女が絵に見入っていると、突然、入口の方から男の声がした。


「よう! 最弱!!」


「!?」


 ロゼッタは振り返る。

 すると閉じた扉の前に、顔を隠したローブ姿の人物が三人立っているのが見えた。

 ロゼッタは、警戒して問いかける。


「誰だ!」

「誰だと思う?」


 一人の男が、フードを脱いだ。


「久しぶりだな!」


 ロゼッタは、男が晒した冴えない顔を凝視してみる。

 そして、言った。


「……誰だ?」

「ふざけんな!! 同級生の顔を忘れたのかよ!」


 同級生。どうやらアカデミーの同級生らしいが、ロゼッタはピンとこなかった。

 彼女は更に問う。


「同級生とやらが、わたしに何の用だ!」


 すると男は、急に魔法の杖を抜いた。

 そして、その杖の先で自分の首元を指し示す。

 男の首元には、何やら刻印のようなものが刻まれていた。

 男はニヤリと笑いながら、言い放った。


「魔王教団だ!」


 ロゼッタは、男の刻印を凝視した。

 そして、言った。


「……魔王教団ってなんだ?」

「てめぇ!! 世間知らずにも程があるぞ!」


 刻印の男は説明を開始した。魔王教団は、魔王を崇拝する宗教だ。

 教義は単純明快。「強者だけが生き残る。弱者は死ね!」

 魔王が何故、魔物を生み出すのか。何故、疫病を流行らせるのか。

 それは、我々人類の進化の為ではないだろうか。

 魔王は、我々人類の進化を促しているのだ。

 よって、より強い者だけが生き残れば良い!

 弱者は、生贄となって死ねば良いのだ!


 ロゼッタは男の長々とした話を、つまらなそうに聞いていた。


「それで、魔王教団とわたしに何の関係があるのだ?」

「おい!! 察しの悪い奴だな!」


 男は突然、杖の先をロゼッタに向けた。


「てめぇは、アカデミーで最弱だ。てめぇみたいなのが、のうのうと生きてるのを見るとムカつくんだよ!」


 男は言いながら、杖先に闇の魔法を集中させていた。

 禍々しいエネルギーが、杖の先に集まっている。

 男は、そのエネルギーをロゼッタに向けて放とうとした。

 その瞬間!


「おやめなさい!」


 どこからか、突然、図太い男の声がした。

 声のする方を見ると、そこには祭司がいた。


「ここは、神々がおわす神聖な場所ですよ! 今すぐに杖を仕舞いなさい!」

「うるせぇ!」


 刻印の男は、溜めていた魔力を祭司に向かって一気に放った!

 放たれた魔力は、高速で祭司に直撃!

 祭司は、血飛沫と共に床に倒れた。


「祭司のおじさん!!」


 ロゼッタが急いで駆け寄るが、祭司はすでに絶命していた。


「アッハハハハハハハハハハハハッ!」


 神殿の中に、邪悪な三人の笑い声が響いた。


「魔王様!! この、デブ祭司の血を貴方様に捧げます!」


 ロゼッタは立ち上がり、鋭い表情で三人を睨みつける。


「許せない! 魔法をこんなことに使うなんて!」


 ロゼッタは意を決して、ポーチからテディを取り出して正面に構えた!

 すると……。


「アッハハハハハハッ! アハッ、アハッ、アッハハハハハッ!」


 魔王教団の三人は、ロゼッタを指差して笑い転げた。

 腹を抱えて笑う者。膝を叩いて笑う者。床を転げ回る者。

 とにかく笑いまくった。


「バッカじゃねぇの! お人形さん遊びでちゅかー?」


 三人は笑いが止まらない。

 

「笑いすぎて腹いてぇ!」


 そうやって笑っていると突然、ローブを被った魔王教団の一人が物凄い勢いで後方へと吹き飛ばされた!


 ドーーーーーン!


 後方で、壁にぶつかる衝撃音がした。

 残された二人は、その音を聞いて冷静になる。

 彼らは音のした方向を振り向いた。

 すると……。


 仲間の一人が壁の中腹にへばり付いて、ぐったりとしているのが見えた。

 気を失った仲間は、やがて自らの重さでズリズリと床へ落ちて来る。


 刻印の男はそれを見て、急にロゼッタに向き直り、彼女を睨み付けた!


「てめぇ! 何をしやがった!」


 すると!

 男は、まさかの光景に驚いた!


 なんと、キラキラと輝くクマのぬいぐるみが、ロゼッタの周りを飛んでいたのだ。

 ロゼッタは男に向かって、真っ直ぐと手のひらを向ける。

 そして、言った!


「お前達、絶対に許さないぞ!!」


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― 新着の感想 ―
[良い点] わかり易い同級生の人の下衆っぷりが素晴らしいですね。木っ端役としては最高で良いと思います。テディにコテンパンにされれば、さぞや溜飲が下がることでしょう。 [一言] ロゼッタを昔と同じと見て…
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