騎兵隊隊長の悪い癖 中編
壁ドン消化回
―――ナメール将軍へ
此度のオンナスキーの蛮行は目に余る物が御座います。いくら優秀な将でも兵の手本とならなければ隊が腐敗し、いずれは我が国の敗走へ繋がる事でしょう。早急にオンナスキーを罰して置くべきです。その為に……
―――コンコン
「失礼」
私の寝室へノックと共に現れたヒゲの男。エドガー騎兵隊隊長のエドガーだ。私は咄嗟に認めていた手紙を机の引き出しにしまい込み、冷静を装った。
「これはこれはエドガー隊長。他の隊長の奥方には近付かぬ決まりをお忘れですか?」
私の牽制に一瞬眉を潜めたが、エドガーはそんな事で怯む男ではない。それは私もよく知っている。
「なに、すぐに済む話ですよ。良い報せと悪い報せがありましてな」
エドガーはニヤリと下品な笑いを浮かべると、ソファに座り私を見た。その顔はどこか勝算があるかの様な目つきに浅い欲望が見え隠れしていた。
「オンナスキー隊長……つまり貴女の旦那様がまた女を別荘に連れ込んでいるそうですよ? それもザガード夫人と来たものだ……」
「それは良い報せですか? それとも?」
私は夫が他の女に現を抜かすのは日常茶飯事であるので特に気には留めておらず、他の女との間に子どもが出来ようが知った事では無い。
「当然悪い報せだ! 奴の悪行には我々も困っていたのですよ? そろそろ処罰が降りる事でしょう! ……おっと失礼。貴女の旦那の事でしたね……」
エドガーはソファから立ち上がり、私に近付いてくる。
―――カッ
「処罰が降りれば当然貴女にも何かしらの音沙汰がある事でしょう!」
―――カッ
「私としては実に残念なことだ!」
―――カカカッ!
「……そこでだ…………」
一気に私へ詰め寄るエドガーは壁に手を着きながら、私の身体を嘗め回すように見た。その気持ち悪い目つきと下心に私は心底吐き気がした。
「魚心あれば水心とやら……ですよ奥様♪」
―――ビリッ!!
お気に入りのドレスの胸元を両手で引き裂き、私の胸が露わになった!
私は毅然とした態度でエドガーを見つめ、片手で胸を隠した。
「流石オンナスキー隊長が選んだだけの事はある。大層立派な物をお持ちだ。一体今まで何人の男をその自慢の躰で誑かしてきたんです?」
「……貴方もその内の一人と言う訳ね?」
エドガーは大きく指をパチンと鳴らし、乾いた音が部屋に響く。
「それで、ご返答は頂けるのかな?」
エドガーの勝ち誇った顔は益々悦を増していく。どうやら彼の根回しは既に済んでいるようだ。となれば夫の処罰は相当な物になるだろう…………。
―――ビビッ! ビリ ビリ!
私はドレスを全て破り捨て、エドガーの眼前に全てを曝け出した。
「……お好きになさい」
「はは! そう言う売女的なところも実にオンナスキーの女らしい!!」
エドガーは腰に据えたレイピアを神速で抜き払い、遅れて蝋燭の火が消えた―――。