第四章 単なる技術の問題だ 13 無印編、おわり。
さて、一昨日の大騒動の首謀者についてだが。ここで触れなければならないとわかっていただけで、おおよその見当しかついていない。目下捜索中とのこと。全容はまるで明らかになっていない。
おライトノベル様的に考えれば、伏線の回収が不充分な未完の創作として選外。
週刊少年漫画的に考えれば、別個体の人間嫌いや、天然の人型無目敵や、人工の電化無目敵から成る新勢力が、どうしてかティーンの語り部に都合よく最近発足されたばかりで、殺されたり殺したり生き返ったりしたあとで、実は大昔から存在していた更に強い外敵と、第二部以降で小出しに小出しに、焦らされ焦らされ、何十年も引き伸ばされて――最終的には共闘する。
しかしここは現代の最新の魔術でこじ開けられた異世界へのゲートである“なろう”なので、受かるというゴールにも、売れるというゴールにも、語りたいように語るというゴールにも、端から繋がってはいないのだ。
ではこの道を地道にコツコツ進むと、俺たちは一体どこへ辿り着くのか?
そんなことは一瞬たりとも想像してはいけない。
我々の渇望する最終目的地は、金でもなく、名誉でもなく、自由でもないのだから。
最後に俺の予想を述べると、リーダーはおそらく、白昼堂々と空中に居たけれど、あの冷酷無慈悲なポーラービーム・インファイナイトの餌食になって、人知れず海の底に沈んでる。
(無目敵だから無目的に襲ってきましたでも説明は充分だったのか)
隣のドームで働いていた知らない人の安否は知らない。こあくちゃんは無事だった。暴走の巨大ヤマトシロアリが、暦の上では記憶に新しいはずの、近所のスーパーでもバイトしてた。たしか学習塾は燃えなかったんじゃなかったか?
(成程、途中で喧嘩しないように、初めに勝負させておくんだな)
牛乳系を穿るアルアリータと氷系を齧るアンデスコニカを、いい感じに振り向かせてひとつのフレームにおさめる。かねてからの念願が叶った俺も、みんなからの『いいね!』が欲しかった。
4000万円の一軒家がプレハブに見える、あくまで仮設テントへ、ドリンクバーをおかわりしに行くついでに、朱筒カンデナイデス様をチラ見する。遠慮させていただいた飲みかけの紙コップへ、それならと口をつけたA子さんが、ウッとにっこりやせ我慢。みるみるうちに髪の先まで朱くなる。滝の汗。神知ヒノアタルサが、泥だらけのユニフォーム姿で駆け戻ってくる。コンプライアンスを考慮して単なる水を渡したのに、気管へ詰まらせて大きくむせた。
(男子がもう少し多くてもいいよね)
前言撤回。
超がつくほどの寧鑼姉ちゃんが、無駄に左右対称な、果肉井華二夫に押し倒された。
そして熱い掌返し!
「大丈夫かあっ、華二夫~~~っ!」
ぐんぐんと舞い上がってゆき、皓白の旧東京都紋章に吸い込まれて、ついに見えなくなる。
「バフ変個体! だからあのとき捕捉し損ねたんだわ!?」
「侵略レベル、掟破りの99! しかもあいつ、四つ足だったぞ!」
「ということはつまり――、よくわかんねえけど――、この間の残党ってことだな!?」
「デスベッドメイク~?」
「! ばんでっじ~♪」
急降下してきたバフ変カラスが、乱射された菫色の包帯を、エース級パイロットにしか乗りこなせないという触れ込みのありふれたロボ的な動きでかわして――、
ふたつの鋏とふたつの刃、十の針と無限の星に、決死の王手を阻まれた。
チャンスをとらえた帝が跳び乗り、自らの手で手綱を引いて、また下心が悶絶する。
「お眄様」
「わかってる。お前が不特定多数の人間と一緒に大型浮遊機に乗り込むなんて、太陽系が生まれる前から不可能だって決まってる。ちょうどよかったな、そいつに乗って行っていいよ!」
「コニカものる! コニカも!」
「そうね。マレンゴ・ラ・ビジル・グリフ号に決めたわ?」
太陽系が生まれる前に。




