第四章 単なる技術の問題だ 12 寒色系の北極大陸
洋上風力発電機がイカのように群れを成して空を飛ぶ光景は、芸術的ですらあった。
咄嗟に乱射した迎撃網をすり抜けやがった一本が――嗚呼、そういうことか――、
無目敵ドームへ突き刺さった。
空を一瞬で埋め尽くしたカラス型。
海面にはうじゃうじゃと亀が犇く。
(こあくちゃんは、大丈夫かなあ)
ふわふわと浮かび上がってきて、乳白色のそれをライムグリーンに光らせる。特徴的な紅い瞳に、海外勢に媚びてみならった電化兵士ユニット、《忍者侍先輩》が映り込む。
「もうこれは、私がやろっか?」
「今度はやりすぎないでくださいよ?」
「大丈夫、大丈夫♪ 練習はしてないけど」
「されたら全人類が籠ります!」
「どの道あんたたちの攻撃じゃ、火の雨を降らせることしかできないだろうしね~?」
「よろしくお願い致します!」
深々と頭を下げた弟の前で、満足気な顔になった彼女が、左側頭部の稲妻バレッタを外す。
「ついにこいつを使うときが来たようね?」
ちょっと待って俺、騎馬戦なんかやったことねぇーよ!?
「えー、それでは皆さま。大変危険ですので、今から三十秒以内に屋内へ避難して下さい!」
東京まで聞こえそうな程の大音声でそう言って、構えた様で実はポーズを決めているだけ。
「はーい、それじゃあみんな、電気よろしくー」
『はあああああああああああああああ―――――――――――っ!!!』
「はあ~ん、いいわぁ、もっとよぉ♪」
新緑色へ変わったばかりの長髪が更に、
新橋色へと昇華した。
「もっともっとぉ♪ もっと上♪」
いま頑張って行ってるよ!
「最後にお送りする曲は! ご存じ有目的戦隊ゼロデストロイヤーズ主題歌!」
ミントブルーの結晶から成る球体に閉じ込められて、うう、閉所。
うねり騒ぐ群れへ突入。
「ゼロデスファイアで――、」
敵を捕捉した最後の瞳が真っ赤に充血。
「《北極冷光全方位射撃》!」
初めて目を覚ました夜に、あやうく地球を丸ごと氷漬けにしかけた、あの冷凍光線が炸裂。
「――ふうっ、成功☆」
寒色系オンリーの花火が、役目を終えた六芒星が、春の地上へ、冬の海上へ、0・5倍速で降り注ぐ。《北極大陸》ちゃん……、確かにお前が主役だよ。俺は架空の硝煙を吹き消された髪留めを見上げて、大きく息を吸い込んだ。
「いや、それ、使わねぇーのかよ!」
「あはははは!」
解説は必要ないかとも思うが、一応。
ファイアは冷光繋がりで、蛍の英名から。